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【特集】桂畑誠治氏【日経平均戻り足、年末相場で投資家は報われるか】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―G20や米中首脳会談などを前に錯綜する思惑を追う―

 師走を目前にしていよいよ年末相場が意識される段階に入った。米国株市場では前週末にNYダウが4日続落し、前週1週間で1100ドル以上の大幅調整となった。しかし、週明けの東京株式市場は頑強な値動き。2025年万博の大阪誘致が決定したことや外国為替市場で進むドル高などが、投資家心理をポジティブな方向に向けている。2018年相場も最終コーナーを回り、最後の直線勝負の様相だが、ここからの相場展望と物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者に話を聞いた。

●「上値は日経平均2万2500円どころを意識」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京株式市場は変調な米株市場を横目に、リスク選好の地合いは望みにくいようにも見えるが、下値も限定的であり、年末相場ではボックス上限の日経平均株価2万2500円近辺をうかがう場面もあろう。

 まず、米株市場について警戒感は拭えない。アップル株の下値模索などハイテク株が弱い動きにあるほか、原油市況も当面は上昇転換が見込めず、エネルギー関連株などが足を引っ張る形でNYダウの上値は重そうだ。ただ、前週の感謝祭明けから年末商戦がスタートしており、日本時間あすにも第一報として前週末時点の売り上げ結果が明らかになる。ネット販売が中心で店舗販売主力の小売企業にとっては厳しい面があるとはいえ、全体を総括すれば数字は良好とみられる。この結果が、消費関連を軸に米国株が切り返す足場となる可能性はある。

 また、東京市場は25年万博の大阪誘致に成功したことで、内需関連株の一角に追い風が吹いているほか、外国為替市場ではドル買いの動きが強まっており、円安進行も株式市場に支援材料となる。ドル・円相場は、日米金利差動向よりも足もとは英国のEU離脱が合意に至ったことなどが、リスクオンのドル買いの流れをもたらしている。

 あとは今週末アルゼンチンで開催されるG20への注目度が高い。同じタイミングで米中首脳会談が開催される予定にあるが、直接的な進展は見込みにくいものの、交渉継続の流れが維持されれば、株式市場はポジティブに捉える公算が大きい。

 年末相場ではグローバル景気の不透明感が増すなかで、米国景気が引き続き好調をキープできるかどうかが焦点になる。ここからの米経済指標には神経質とならざるを得ず、差し当たって12月初旬の米ISM統計や12月7日の雇用統計(11月)に注目度が高い。これは、その後に控える12月18~19日に開催のFOMCにも大きな影響を与える。12月利上げはほぼ確実だが、来年の利上げ見通しがどうなるかにマーケットの視線が集まりそうだ。

 東京市場では米国株次第という“他力”の部分はあるものの、当面、下値は10月26日のザラ場安値2万971円、上値は11月8日高値2万2583円をメドとしたボックス相場の色彩が強いとみる。物色対象としては内需を主軸に、建設関連株のほか、年末商戦を意識したゲーム関連株などが優位性を発揮しそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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