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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆中国懸念が再燃◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇中国半導体企業への輸出制限、追加関税の動き〇
昨日のNYダウは前日比300ドル超上昇し、2万5040ドルまで上げたが、そこから900ドル超急落し2万4122ドルを付けた後、前日比245ドル安の2万4442ドルに少し戻して終わった。急落要因の第一は、米商務省が中国半導体大手の福建省普華集成電路(JHICC)に対する米企業の輸出を制限したと発表したこと。同社製新型メモリチップによって、米軍システム向けに製品を提供する米企業が脅かされる「重大なリスク」があると指摘した。米製品、ソフト、技術の輸出が制限される「エンティティ?リスト」に加えられた。

JHICCは中国ハイテク政策「中国製造2025」の中核的企業で、制裁で危機に陥った「第二のZTE(中興通訊)」との受け止め方。米マイクロン・テクノロジーが昨年末、JHICCと台湾のUMCが半導体設計図を盗んだとして加州裁判所に提訴、現在も裁判が続行中。ロス商務長官は「海外企業が米国の国家安全保障上の利益に反する場合、強力な対応を取る」と述べた。

第二はブルームバーグが「11月の米中首脳会談が不調ならば、米政府は12月初旬までに中国製品に対し追加関税を発動する用意を整えている」と報じたこと。
対象は残りの2570億ドル相当分で、関税率には言及していない(先般の2000億ドル分の10%関税を25%に引き上げるとの見方もある)。11月G20でのトランプ-習会談は短時間との報道もあったので、多少違和感のある報道だが、中間選挙後に米国が強硬姿勢を取るとの見方を裏付ける。

これらを受けて、NY外為市場で人民元が一時1ドル=6.9757元まで下落。7元攻防が視野に入って来た。メルケル独首相が地方選で連敗し、党首再選を目指さないと伝わったことでユーロ安。全般的なドル高地合いも影響したと思われる。

また、英財務省が秋季財政報告書(予算修正計画)を発表し、EU離脱交渉が合意するなら、財政緊縮策を終了させる方針を表明。同時に、グーグル、アマゾンなど米大手ハイテク企業売上に対する「デジタルサービス課税」(20年から年4億ポンド=5.1億ドルの税収を見込む)を発表した。英国の課税額自体は大したことないが、世界に広がる可能性があり、主力ハイテク株売りにつながったと考えられる。なお、「緊縮財政からの離脱」は世界的潮流になる公算がある。

さらに、米政府がサウジへの対応策を複数案検討、近々発表するとの報道、最近の米民主党系要人への爆発物送付事件やユダヤ教会襲撃事件が米中間選挙で共和党不利に働くとの見方で選挙戦が一段と混沌としていることなども、ネガティブに捉えられている可能性がある。株価乱高下は売り方の演出か、リバウンド狙いの買い方が慌てて投げたのか分からないが、不安定な地合いが続くものと考えられる。


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/10/30号)

《CS》

 提供:フィスコ

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