市場ニュース

戻る
 

【特集】エニグモ Research Memo(4):2019年1月期上期業績は増収増益、総取扱高、営業利益は過去最高を更新(2)


■決算概要

3.エニグモ<3665>の活動実績
2019年1月期上期の業績が好調に推移したのは、前述のとおり、新規会員獲得やリピート率の向上に伴い「アクティブ会員数」が伸びたこと、「1人当たりの平均購入件数」(前年同期比101%)や「1件当たりの購入単価」(同105%)の伸びによりARPU(1人当たりの購入金額)が増加(同106%)したことによる。そして、それらの改善は、以下に掲げる各施策(1~8)の複合的な効果として捉えることができる。また、今後の事業拡大に向けても、新サービスの開始や新規事業の立ち上げ、海外事業の進捗などにおいて一定の成果を残すことができた。

(1)新マーケティングミックスの継続実施
前期(2018年1月期)の下期に実施したTVCMによる認知度向上、流入増を生かし、刈取り広告の展開(アクティブ率向上)、取扱件数向上施策の実施(1人当たりの平均購入件数向上)へとつなげていく新マーケティングミックスを継続的に実施。その結果、新規会員獲得は前年同期比13.7%増の51.6万人に増加したほか、既存購入者のリピート率も向上し、アクティブ会員数の拡大に結び付けることができた。また、平均購入回数についても増加トレンドへと転換している。

※ほしいもの登録機能リニューアルによる購入導線増加や出品監視強化等による購入者取引満足度向上等により年間平均購入回数が増加トレンドに転換


(2)機能向上施策の成果
前期(2018年1月期)より開始した4つの新規決済手段※1が広く認知され、利用拡大につながったことが、結果として新規会員獲得や「1人当たりの平均購入件数」を伸ばす要因になった※2。

※1 「楽天ペイ」(2017年3月リリース)、「dケータイ払いプラス」(2017年3月リリース)、「auかんたん決済」(2017年5月リリース)、「paidy(ペイディー)」(2017 年7月リリース)。
※2 新規決済手段における初回購入者の利用比率は既存決済手段よりも3ポイント高い結果となっている。また、新規決済手段の構成比は前年同期(2018年1月期上期)の6%から18%にまで拡大しており、その間の新規会員獲得に大きく貢献してきたものと評価できる。


また、出品機能向上(出品作業の効率化等)による海外出品数増加やアプリリニューアルによるアクション率の向上にも取り組んだ。特に、アプリのDL数は前年同期比147%と順調に拡大しており、それに伴ってアプリ経由の総取扱高も同136%と伸びている。特筆すべきは、新規登録キャンペーンや他サービスとのログイン連携等の導入により、30代後半から50代の会員のアプリ利用が拡大し、アプリシェアは前年同期の38%から43%まで拡大したことである。コンバージョン率の高いアプリシェアの拡大は、注力している「1人当たりの平均購入件数」の伸びに貢献するとともに、高年齢層のアプリ利用の浸透により「1件当たりの購入単価」の拡大にもつながっており、その結果、ARPU向上に大きく影響していると考えられる。

(3)MDの強化
市場に対して優位性の高いアイテムの拡充によりメンズカテゴリの規模が拡大し、カテゴリ別構成比ではメンズ総取扱高が29.6%(上場時の2013年1月期は10.6%)にまで増加してきた。MDの強化(ラインアップの拡充)とともに、これまでのF1層※中心から会員属性が大きく変化(メンズや高年齢者層の利用拡大)してきたところは、今後の成長性を評価するうえでも特筆すべきポイントと言える。

※20~30歳代女性


(4)オウンドメディアによる集客強化
独自のWebメディアを活用した集客にも注力している。特に、登録ブランド数9,800ブランドの豊富な品ぞろえを武器として、オウンドメディア(「POST」及び「STYLE HAUS」)の運用を強化。インポートファション好きなメインストリームユーザーの獲得を目指し、新規会員数、オウンドメディア経由の総取扱高ともに順調に伸びている。

(5)リセール事業の進捗
「ALL-IN(オールイン)」で展開しているリセール事業についても、まだ本格的な業績貢献には達していないものの、申し込み件数は着実な拡大傾向をたどっている。それに伴って、ポイント※を使用した「BUYMA」での購入件数も右肩上がりに増加しており、同社の狙いとする「BUYMA」とのシナジー効果が実現していると言える。また、後述する新サービス「ソク割り」の開始により、足元では申し込み件数が大きく伸びているもようであり、次世代の収益ドライバーの1つとして、その動向が注目される。

※「ALL-IN」の買取りサービスを申し込むと、「BUYMA」での商品購入時に使用できるポイントが付与される。同社では、ポイント使用による「BUYMA」とのシナジー効果に最大の狙いがある。


(6)「GLOBAL BUYMA」の進捗
2016年7月から本格的なアーケティングを開始した「GLOBAL BUYMA」についても、香港、米国を中心にエリア別マーケティング施策を展開し、会員登録数は順調に拡大している。特に、これまで好調であった香港の流入数がほぼ横ばいで推移する一方、米国の流入数が足元で急激に伸びてきた。引き続き、アジア圏でのブレイクスルーを目指すとともに、マーケティング施策が軌道に乗ってきた米国へ軸足を移すことにより、事業拡大(今期中の単月黒字化)を狙う構えである。

(7)新サービス「ソク割り」の開始
2018年7月25日には、下取り即時割引サービス「ソク割り」の提供を開始した※。本サービスは、ユーザーが「BUYMA」にて過去に購入した商品データをもとに、当該商品の下取り額を自動で算出し、その下取り額分を商品購入時に即時に割引することができるものである。本サービスの導入により、「BUYMA」において新たな商品購入を促進する効果が期待できるとともに、「ALL-IN」への申し込み件数の拡大(ひいては「BUYMA」ポイントの使用拡大)にもつながるものと考えられる。

※「ALL-IN」と同様、(株)アクティブソナーが運営するハイブランドリセールプラットフォーム「RECLO(リクロ)」との共同サービスとなっている


(8)新規事業の立ち上げ
2018年7月31日には、「BUYMA TRAVEL」をリリースし、新たにCtoC型の旅行事業へも参入した。本サービスは、「海外旅行者」と「世界145ヶ国に在住している11.5万人のパーソナルショッパー」をつなぐ、「現地でしかできない体験」を提供するサービスである。パーソナルショッパーは、自身の好みや知識を生かして「予約サービス」や「現地ガイドサービス」、「観光プラン作成」を出品することができる一方、ユーザーにとっても、旅行先でガイドブックには掲載されていないお店やオプションツアーでは体験できないサービスを、パーソナルショッパーによる日本語でのサポートを受けながら体験することができる。「モノ」から「体験」へと市場トレンドが変化するなかで、「ファッション」と「旅行」の相性の良さも、参入に当たってプラスの判断に働いたものと考えられる。弊社でも旅行業界は競争が厳しいものの、「BUYMA」ならではの価値提供や事業モデル(プラットフォーム)を生かすことで、2本目の柱に育つポテンシャルは十分に秘めているものと評価している。既に魅力的な出品が集まっているもようであるが、今期はビジネス環境の整備に注力し、2020年1月期からの本格展開を目指す計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均