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【市況】米9月FOMCの見どころ【フィスコ・コラム】


アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)による今年3回目となる利上げはほぼ織り込まれ、市場の関心は来年の引き締め方針に移りつつあります。当局者からは慎重な意見も出始め、9月25-26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で今後の方向性が示されるかもしれません。

FRBは今月の会合で、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を現行の1.75-2.00%から2.00-2.25%に引き上げる公算です。7日に発表された雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+20.1万人、平均賃金は前月比+2.9%と予想を上回るなど、堅調な内容でした。広義の失業を示すU6失業率は2001年以来の水準に低下。消費のすそ野を広げ、4-6月期国内総生産(GDP)の前期比年利+4%という高成長を裏づけています。

インフレに関しては、13日に発表された8月消費者物価指数(CPI)が前年比+2.7%と7月の+2.9%を下回ったものの、個人消費支出(PCE)のコア指数はFRB目標の前年比+2.0%付近に達し、前回会合の声明文でも物価関連の表現は上方修正されました。こうした経済指標を踏まえ、7月31日-8月1日の前回会合では政策金利は据え置きとなりましたが、声明文では「さらなる利上げが正当化される」と強気な姿勢が見て取れます。

CMEグループが算出するフェド・ウォッチでは今回の利上げはほぼ確実視され、12月に4回目の利上げも見込まれます。当局者は景気に適した中立的な政策金利の水準を2.5-3.0%と認識しており、FRBがこのまま現在のペースで引き締めを進めた場合、来年半ばにはその水準に到達するとみられます。追加利上げがどのぐらい必要になるか、6月の会合よりもさらに踏み込んだ議論が展開される可能性があります。

当局者の発言も違いが際立ってきました。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が8月のジャクソンホールでの講演で述べたように、「中立的な水準まで利上げ」はほぼ一致しています。ただ、タカ派で知られるジョージ・カンザスシティ連銀総裁は、それまで「あと数回の利上げが必要」としたほか、カプラン・ダラス連銀総裁も今後12カ月で「3-4回の利上げが好ましい」との見解を示しました。

一方で、パウエル議長は同じ講演で過度な利上げを避けたいとの見解を示しており、利上げ打ち止め観測からドルが売られました。それに追随し、ブラード・セントルイス連銀総裁も今月6日の講演で「市場はいくらか引き締め気味と見ている」と限界を示唆。同総裁は、最近の長短金利差の縮小についても「利回り曲線は年後半か2019年に逆転する説が有力」と指摘し、過度な引き締めに警鐘を鳴らしました。

一方、当局者のなかで最もハト派と位置づけられてきたブレイナードFRB理事は、雇用情勢が回復しており経済は堅調を維持するとの見方から「長期見通し(2.875%)以上の水準まで利上げする必要もある」と発言。宗旨替えか以前のような慎重姿勢は影を潜め、ジョージ総裁顔負けのタカ派姿勢です。「ヒラリー大統領」なら財務長官就任とみられた同氏は熱心な民主党支持者としても知られています。

まさか、利上げ批判を強めるトランプ大統領に対抗し、政治的なアプローチで引き締めに前向きなわけではないと思われますが、その点も注目したいと思います。
(吉池 威)

《SK》

 提供:フィスコ

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