【特集】社名変更それぞれの理由 <株探トップ特集>
7月以降に社名変更を予定している企業は30社近く。そこには新規事業の開拓や海外市場進出、ブランド名と社名の統一など様々な背景がある。
―飛躍期待と重なる商号変更企業を追う―
7月に入り18年の後半相場がスタートした。7月1日を機に社名(商号)変更に踏み切ったケースも多い。また、18年度下期のスタートとなる10月からも含めて、7月以降年内に30社近くの上場企業が社名変更を予定している。持ち株会社制度を採用して社名に「ホールディングス」を加えるケースが目立つなか、新規事業の開拓、海外市場への進出、ブランド名と社名の統一などを掲げ、同時に積極的な中期経営計画を打ち出して一段の飛躍を目指す企業も多い。飛躍への期待が高まる社名変更銘柄に注目した。
●AGC、20年12月期に営業利益1600億円目指す
AGC <5201> は、7月1日から社名を従来の「旭硝子」から変更した。同社では「2002からグローバルグループ一体経営をスタートし、創立100周年にあたる2007年にはグループブランドを“AGC”に統一し、国内外の連結子会社の商号を原則“AGC”を冠したものに変更した。そして、創立110周年を迎えるに当たり、グローバルグループ一体経営をさらに進化させるために、グループ中核企業の旭硝子の商号を“AGC”に変更した」(経営企画部・IR室)としている。同社は、中期経営計画のなかで今後のAGCグループの主要課題として(1)市況変動に強い高付加価値事業を伸ばす、(2)戦略事業の成長戦略を推進する、(3)成長地域・勝てる地域へ経営資源を集中する、(4)戦略的なM&Aにより持続的成長を図る――をあげ、17年12月期に1196億円だった連結営業利益を、20年12月期に1600億円、25年12月期には2292億円(10年12月期に達成した過去最高益)の更新を目指している。
●日産化学、ものづくりに止まらずサービスやソリューションで事業拡大
日産化学 <4021> は7月1日から、従来社名の末尾にあった“工業”の文字を取り去った。同社は「1887年に日本初の化学肥料製造会社としてスタートした。創業以来、新たな事業への挑戦を続けるなかで、現在では情報通信、ライフサイエンス、環境エネルギー、基盤(基礎化学品、ファインケミカル)の4つの事業領域で、グローバルに商品やサービスを提供している。とくに、今後はものづくりに止まらず、サービスやソリューションを提供する事業の拡大による成長が見込まれる」(CSR・広報室)としている。同社は22年3月期を最終年度とする中期経営計画で(1)情報通信およびライフサイエンス事業が成長を牽引し、化学品と関係会社が安定的な収益を確保している、(2)環境エネルギー事業の礎を築き、常に前進する将来性と存在感のある化学メーカーとしての地位を確立している――をあるべき姿として示している。22年3月期の数値目標は、売上高2500億円(18年3月期実績1934億円)、営業利益400億円(同350億円)としている。
●北越コーポ、紙パルプ産業全体をグローバルに俯瞰し企業価値の向上図る
北越コーポレーション <3865> は、7月1日から社名を従来の「北越紀州製紙」から変更した。同社では「川中に集中している製紙事業から、植林・パルプ事業などの川上や、紙加工事業、代理店販売事業などの川下にいたるまで、紙パルプ産業全体をグローバルに俯瞰したバリューチェーン(価値連鎖)を主体的構築することにより企業価値の向上を図ってきた。さらに、国内および海外でのM&Aや、海外生産拠点構築のなどにより事業領域を進化・拡大するため、“製紙”の文字を取った」(広報室)としている。同社は20年3月期を最終年度とする中期経営計画「Vision 2020」で(1)海外事業拡大、(2)工場競争力再強化、(3)連結経営体制基盤強化――の基本方針を打ち出している。最終年度の数値目標は、売上高3000億円(18年3月期実績は2691億円)、営業利益150億円(同114億円)を目指す。
●日本バルカー、21年3月期の営業利益は70億円を目指す
日本バルカー工業 <7995> は、10月1日に社名を「バルカー」に変更する。同社グループは、従来の「工業製品の製造・販売を通じた価値創造」から「モノ・コト・ヒトを通じた価値創造」、すなわち「“H&S企業”への脱皮」を図っていることに沿って社名を変更する。“H&S企業”とは、「質の高いH(ハード=商品)の開発・製造・販売を行うことに加え、顧客視点に立った真のS(シールエンジニアリング・サービス)を通じて顧客に感動を提供し、ともに顧客価値の最大化を図る企業」を指す。さらに、同社グループでは、21年3月期を最終年度とする中期経営計画「NV・S8」を策定している。最終年度の数値目標は売上高550億円(18年3月期実績475億9200万円)、営業利益70億円(同53億7400万円)を目指している。
●マースエンジニアリング、事業の多角化を推し進め企業価値を高める
マースエンジニアリング <6419> は、10月1日に社名を「マースグループホールディングス」に変更する。同社は、アミューズメント関連事業で培ってきた技術やノウハウを生かして自動認識システム関連事業を第2の事業として成長させ、FA市場、流通市場、健診市場などでの拡販を進めている。また、ホテル関連事業ではホテルやレストランの運営を通して、業容の拡大を図っている。同社グループは、変化する市場環境に柔軟に対応するため、事業の多角化を推し進めてきた。今後、同社グループが更なる企業価値を高めていくために、意思決定の迅速化や機動的な事業運営を強力に推し進めていくグループ体制の再構築が必要不可欠であることから、持ち株会社体制へ移行することを決定した。
●ラクーン、主要3事業の成長加速へ新規事業の創出やM&A積極化
ラクーン <3031> は、11月1日に社名を「ラクーンホールディングス」に変更する。同社は「企業活動を効率化し便利にする」を経営理念に掲げ、各企業間取引のインフラサービス事業として、スーパーデリバリーを主力とするEC事業(アパレルおよび雑貨を取り扱う企業間取引“BtoB”サイト“スーパーデリバリー”が主力の事業)、Paid事業(企業間取引で発生する“請求書発行”から“代金回収”まですべてを代行する事業)、保証事業(企業間取引で発生した売掛金が未回収になった際に取引先に代わって売掛金を支払う事業)の3事業を展開している。これまで3事業とも順調に成長を続けているが、現状よりも成長スピードを加速させ、さらなる売上高、利益の拡大を実現し、企業価値の向上を図っていくことが必要であるとしている。今後、積極的に新規事業の創出や、M&Aを実施するため、持ち株会社体制に移行する。
◆18年後半の主な社名変更銘柄◆
銘柄 コード 変更月 新社名 経常増益率 株価 PER
ダイナック <2675> [東証2] 7月 ダイナックホールディングス 18.4 1715 36.6
オイシックス <3182> [東証M] 7月 オイシックス・ラ・大地 非開示 2133 39.3
すかいらーく <3197> 7月 すかいらーくホールディングス 1.9 1626 18.6
HUG <3676> 7月 デジタルハーツホールディングス 24.8 1542 21.9
ユビキタ <3858> [JQ] 7月 ユビキタスAIコーポレーション ▼54.8 961 ―
北越紀州紙 <3865> 7月 北越コーポレーション ▼6.5 567 12.6
日産化 <4021> 7月 日産化学 4.9 5040 26.3
旭硝子 <5201> 7月 AGC 3.1 4225 12.4
アスラポート <3069> [JQ] 8月 JFLAホールディングス 24.0 567 17.5
パスポート <7577> [JQ] 8月 HAPiNS 4.2倍 482 18.7
トーシン <9444> [JQ] 8月 トーシンホールディングス 非開示 624 ―
ファステプ <2338> [東証2] 9月 ビットワングループ 黒転 680 21.8
三井松島 <1518> 10月 三井松島ホールディングス 38.1 1657 12.7
クオール <3034> 10月 クオールホールディングス ▼14.3 2016 17.2
スタートトゥ <3092> 10月 ZOZO 22.2 3925 42.8
セブンシーズ <3750> [東証2] 10月 FRACTALE 3.1倍 468 7.9
インフォテリ <3853> 10月 アステリア ▼43.7 1016 2.1倍
アークン <3927> [東証M] 10月 フーバーブレイン 非開示 1405 ―
マース <6419> 10月 マースグループホールディングス 33.0 2498 12.5
イマジカロボ <6879> 10月 IMAGICA GROUP 1.1 903 24.8
NEWART <7638> [JQ] 10月 NEW ART HOLDINGS 66.9 27 12.9
Aエステール <7872> 10月 エステールホールディングス 3.4 773 12.6
バルカー <7995> 10月 バルカー 4.3 3095 13.6
松屋フーズ <9887> 10月 松屋フーズホールディングス 0.6 3695 29.3
サガミ <9900> 10月 サガミホールディングス ▼22.9 1390 83.7
マルコ <9980> [東証2] 10月 MRKホールディングス 55.6 263 33.3
ラクーン <3031> 11月 ラクーンホールディングス 17.9 554 29.9
※株価は2日終値、単位:%、円、倍
※変更日は各月とも1日
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