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2018年06月14日19時30分

【特集】医療ビッグデータ、提供ついに――本格稼働で浮かぶ銘柄は <株探トップ特集>

5月11日の次世代医療基盤法施行により、医療ビッグデータ利活用への道が開かれた。恩恵を受ける銘柄を探った。

―次世代医療基盤法施行で広がる医療情報利活用、商機を活かす銘柄は―

 「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」、いわゆる次世代医療基盤法が5月11日に施行された。これは国が認定した事業者が、医療機関からカルテや検査データなどの医療情報を集約し、匿名化して「医療ビッグデータ」として企業や大学などに提供、活用できるように枠組みや規制などを定めたもの。先端的な研究開発や新産業創出などが期待されるなか、医療ビッグデータを扱う企業にとってビジネス機会の拡大につながりそうだ。

●患者の医療情報を匿名化して研究開発などに活用

 政府は17年6月に閣議決定した「未来投資戦略」などに沿って、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年までに、ビッグデータ 人工知能(AI)などの技術革新を最大限活用し、最適な健康管理と診療、自立支援に軸足を置いた介護など、「新しい健康・医療・介護システム」を確立することで、健康寿命をさらに延ばし、世界に先駆けて生涯現役社会を実現させることを目指している。そのため、オールジャパンでのデータ利活用基盤を、20年度からの本格稼働に向けて整備するとしており、5月に施行された次世代医療基盤法はこの取り組みの一環となる。

 次世代医療基盤法は、医療機関などが取り扱うデータを特定の個人が識別できないよう匿名加工し、個人の権利利益の保護に配慮しつつ、円滑に利活用できる仕組みを整備するもの。医療機関などは、患者本人が提供を拒否しない限り同意したとみなし、医療情報を提供することができる。同法は認定事業者が複数の医療機関から情報を集約して匿名化できるようにしたことが大きな特徴のひとつ。これまでは医療機関ごとに匿名化が必要で、複数の医療機関を受診する患者の情報を統合することができなかったが、今後は同一人物の情報が統合できるようになり、医療情報をビッグデータとして分析しやすくなる。これにより、大量の実診療データを生かした治療選択肢の評価などに関する大規模な研究の実施が可能になる。例えば糖尿病と歯周病のように別々の病気の関連性を明らかにしたり、AIを活用して画像データを分析し、医師の診断から治療までを包括的に支援したりすることができるようになり、幅広い分野で医療ビッグデータの需要が高まる可能性がある。

●MDVの大規模診療データ2300万人超

 認定事業者の基準には、事業開始時に100万人以上の情報を収集する能力があることや、情報の匿名加工技術などが求められ、今後選定が行われる見通しだが、そこで注目したいのがメディカル・データ・ビジョン <3902> だ。同社のビジネスは、システムを提供し診療情報を集積する「データネットワークサービス」と、集めた診療情報を分析して提供する「データ利活用サービス」の2つの柱で構成。「データネットワークサービス」では、DPC(1日あたりの入院費用を定めた計算方式)分析ベンチマークシステム「EVE」の導入数が18年12月期第1四半期(1-3月)時点で795病院、病院向け経営支援システム「Medical Code」の導入数は同261病院を誇り、「データ利活用サービス」における大規模診療データベースの実患者数は5月末時点で2354万人に達している。その他にも各種サービスを展開しており、データの質・量を向上させる取り組みを進めている企業のひとつといえる。

●日シス技術は東大と共同研究を推進

 独立系システム開発会社の日本システム技術 <4323> は、医療ビッグデータ事業(医療情報データの点検、分析および関連サービス)を手掛けている。医療機関が保険者に月単位で請求する医療費の明細書である「診療報酬明細書」と「調剤報酬明細書」を高速かつ自動的に点検・分析するシステム「JMICS」を10年8月に開始し、その後も健診データなど外部データの取り込みや各種分析・通知サービスなどのソリューションを拡充する。17年5月から東京大学と、同社が蓄積している100万人に上る医療ビッグデータを活用した共同研究を開始していることも注目点だ。

●ケアネットは医師と製薬会社双方のニーズに応える

 ケアネット <2150> [東証M]は、医薬営業支援サービスが主力事業。医師・医療従事者向け医療専門サイト「ケアネット・ドットコム」は、17年12月末時点で14万人弱の医師を含む27万人超の医療従事者が利用している。同社は医師会員から情報提供の許諾を得て、医師会員にインターネットを介して医薬情報を提供し、視聴後の反応を製薬会社に提供できる双方向性を持っていることが強みのひとつとなっている。

●メドピアの「MedPeer」登録数は10万人超

 メドピア <6095> [東証M]は、医師や医療現場を支援する「ドクタープラットフォーム事業」と、健康増進・予防などに関連した「ヘルスケアソリューション事業」を展開。医師専用コミュニティサイト「MedPeer」には10万人超が登録し、患者や医療スタッフが一切参加しないことから先入観のない、臨床現場で得た情報が医療ビッグデータとして蓄積される仕組みとなっている。また、今年3月にはスギホールディングス <7649> と資本・業務提携し、今秋にもAIを活用したデータ解析など、蓄積したデータを活用した複数の予防医療サービスを展開する予定だ。

●ファインデックス、UbicomHDなどにも注目

 このほか、医療関連情報サービスの開発・提供を行うデータホライゾン <3628> [東証M]、医療用データマネジメントシステム「Claio(クライオ)」などを運営するファインデックス <3649> 、医療情報専用データセンターを持つソフトウェア・サービス <3733> [JQ]、医療情報クラウド「NOBORI(ノボリ)」を提供するテクマトリックス <3762> 、医療ビッグデータおよび医療ITソリューションに注力するUbicomホールディングス <3937> 、医療向けデータウエアハウスを販売するジャストシステム <4686> などにも商機。

 また、第一生命ホールディングス <8750> と日立製作所 <6501> は共同で、医療ビッグデータを生命保険事業に活用するための研究に取り組んでいるほか、日本生命(大阪市)は野村総合研究所 <4307> やリクルートホールディングス <6098> と共同で、健診・医療ビッグデータを活用した保険事業の高度化を進めている。

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