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【特集】開いたフタ――トランプ「米中貿易戦争」ショックで終わるもの <株探トップ特集>

23日、米中貿易戦争の足音におびえるマーケットで日経平均は一時1000円安まで売り込まれた。セリングクライマックスが近づいているのか、それとも――。

―“調整の終わり”か“終わりの始まり”か、危機と好機の実相を追う―

 「米中貿易戦争」への不安が世界の金融市場を直撃している。トランプ米大統領が22日、中国に知的財産権の侵害を理由に関税措置を実施することを発表。これを受け、同日のNYダウが急落。23日の東京市場も日経平均株価が一時1000円を超す大幅安となった。世界の金融市場を震撼させている米トランプ政権の保護主義政策の意味とは何か。そして、投資家はこの下げ相場にどう対処すればいいのか。

●中国へ500~600億ドル相当の制裁措置を発表

 22日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均株価は前日比724ドル安の2万3957ドルと急落。これを受けた、23日の日経平均は一時1000円を超す大幅安となり、結局、前日比974円13銭安の2万617円86銭で取引を終え、昨年10月以来の安値に落ち込んだ。また、中国などアジア株式市場も値を下げ、為替市場では一時1ドル=104円60銭台と米大統領選の16年11月10日以来の円高水準をつけた。

 この世界同時株安と急激な円高を引き起こしたのが、米国が打ち出した中国に対する制裁措置だ。トランプ米大統領は22日、中国による知的財産権の侵害を理由に同国製品に対して500億~600億ドル(5.2兆~6.3兆円)相当の制裁措置を発表した。「通商法301条」を発動し、情報通信機器や機械などに25%の関税を課す。市場では、対中制裁が打ち出される可能性は以前から指摘されていた。しかし実際に発動されると、これを嫌気する売りが殺到した。

●不透明感が金融市場のリスクオフ要因に、チャート上のフシ目を相次ぎ割る

 外為どっとコム総研の神田卓也調査部長は「金融市場はトランプ政権の政策に振り回されている。米国の対中制裁に関する具体的な内容はまだ固まっていないが、先行きへの不透明感が強いことが、金融市場にリスクオフをもたらしている」と言う。

 また、ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏も「中国製品を対象に大規模な関税をかける話は、既に以前からメディアを通じて出ていたことで、ここで改めて売りを浴びせてくるようなものではない。ただ、最近は中国の閣僚が訪米して調整に当たっていたが、トランプ政権側が聞く耳持たずのスタンスで、今回の措置を発表した。このため、米中間の交渉がうまくいかなかった結果としてマーケットはネガティブに受け止めたのだろう」と指摘する。

 懸念すべきは、日経平均やドル円がチャート上の節目を割り込んだことだ。日経平均は3月5日につけた2万937円のザラ場ベースの安値を更新し、2万円ラインを意識する水準となった。為替相場も今月2日の1ドル=105円25銭を更新、16年11月の米大統領選の水準まで円高が進んだ。あるネット証券関係者は「店内の信用評価損益率からみても、株式市場に底が入ったとは思えない。いったん値を戻しても、再度売り直される可能性がある」と軟調相場の継続を予想する。

●大風呂敷はトランプ大統領の常套手段、“陰の極”接近の見方

 もっとも、相場は“陰の極”に近づきつつあるとの見方は少なくない。フィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は、「最初に大風呂敷を広げるのは、トランプ大統領の常套手段。いつものように順当なところへ落としどころを探すのだろう」と予想する。特に、今回の対中制裁は11月の中間選挙を意識した面が小さくないとみている。「これまでトランプ政権が上げた最大の成果は“株高”。中国との貿易戦争で、この成果を台無しにするとは思えない」と庵原氏は指摘する。

 いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員も「トランプ政権による対中制裁政策はブラフ(脅し)に過ぎない。米中の2大経済大国が本当に貿易戦争を行えば、結局は自分達の首を絞める。そんな無益なことはやらないだろう」という。また、「80年代の日米貿易摩擦も米国の301条に基づくものだったが、世界経済に変調をもたらす結果にはならなかった」とも指摘し、今回も世界経済の景気拡大基調の持続を予測する。ブーケ・ド・フルーレットの馬渕氏も「PERなど株価指標面から米国株の割高感は解消されており、目先的にはこの突っ込み場面は買い場だと思う」と言う。

●4月上旬までに相場に転機か、機関投資家は底値買い機会狙う

 こうしたなか、当面の注目ポイントはこの対中制裁に関わる不透明感がいつまで続くかだ。外為どっとコム総研の神田部長は「米国の対中制裁の細かい関税措置が決まるのに2週間程度かかると言われている。その内容が分かってくれば、不透明感はなくなっていく。ドルは103円前後まで円高が進む可能性があるが、今後4月上旬までに相場は底を入れる展開となるのではないか」と予想する。

 いちよしアセットの秋野氏は「世界経済の拡大基調に変化はなく、いまは絶好の買い場といえると思う。ただ、当面、一段の安値はあり得る。それだけに、新年度を意識した投資家は、できる限り安い水準で拾おうとしているのだろう」と言う。「相場は状況次第では為替の1ドル98円、日経平均の1万9000円もあり得るかもしれない」と同氏はみており、2万円割れの下値を狙う姿勢をうかがわせている。

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