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【特集】絶好調「焼き肉」業界の“食べ頃”銘柄フルコース <株探トップ特集>

1月売り上げが8.3%増と高い伸びを見せた焼き肉業態。しかも14ヵ月連続の増加で、関連銘柄の業績にも期待が高まっている。

―既存店12ヵ月連続増「物語コーポ」、無煙ロースター「SHINPO」など好調企業のイチオシは?―

 焼き肉業界が元気だ。ファミリーレストラン業態のなかで、焼き肉部門の売上高が異彩ともいえる好調をキープしている。日本経済復活と国家の命題だったデフレ脱却への糸口も見え始めたことも“プチ贅沢”の代名詞ともいえる焼き肉業界にとっては追い風にほかならない。さらに、米トランプ政権の保護主義に対する警戒感から輸出株が手掛けにくいなか、内需の好業績株物色の流れに乗って、積極的にチェーン展開を押し進める焼き肉関連株にも注目が集まりそうな気配だ。関連株の現状と行方を探った。

●外食産業のリード役

 日本フードサービス協会が2月26日に発表した「外食産業市場動向調査・1月度の集計結果」によると、外食市場全体の売り上げは3.1%増と17ヵ月連続して前年を上回った。ファミリーレストラン業態では、「洋風」部門が0.2%減、「和風」が2.2%減、「中華」が2.5%増となるなか、「焼き肉」の売り上げは8.3%増で断トツ。また14ヵ月連続して前年を上回るなど、まさに外食産業のリード役といえる存在だ。

 焼き肉が好調な理由について、同協会では「多くの業界関係者に聞き取りはしているが、明確な答えはないというのが正直なところだ。ただ、足もと景気も良く、高単価メニューに入る焼き肉がその好影響を受けているのではないか」と答える。少なくとも、ここ数年続く好調な経済が、焼き肉店に顧客の足を運ばせている要因のひとつであることは間違いなさそうだ。

●物語コーポ、12ヵ月連続で前年実績上回る

 株式市場において、焼き肉チェーンを展開している上場企業は意外に多い。主力事業として展開しているものだけではなく、外食事業におけるひとつの「部門」として運営している企業なども多く、そのすそ野は広い。好調を続ける焼肉市場を目の当たりに、新規参入組も続々と参戦してきており、競争も激しさを増している。

 群雄割拠の焼き肉業界だが、ここ数年急成長し株式市場でも注目を集めているのが物語コーポレーション <3097> だ。同社は、中部地方を地盤として「焼肉きんぐ」を中核に「丸源ラーメン」など外食事業を展開するが、消費者のニーズを捉えて業績は好調に推移している。14日の取引終了後に発表した2月度の月次売上高(速報値)では、既存店売上高が前年同月比4.3%増と12ヵ月連続で前年実績を上回り好調継続。客数の増加で主力の焼き肉部門が同5.0%増となったことに加えて、ラーメン部門が同3.0%増、ゆず庵部門が同5.7%増と伸長している。

 株価は、昨年12月14日に1万1790円の高値をつけたあとは地合い悪とも相まって2月6日には9000円割れ寸前まで調整したが、そこを底値に反転攻勢に出ている。現在は1万円を超えたあたりで推移し昨年来高値奪回をにらむ。

●アスラポートは急速人気化

 また、急速人気化しているのがアスラポート・ダイニング <3069> [JQ]だ。同社は「牛角」をはじめとする外食フランチャイズを展開しており、M&A戦略を前面に押し出し業容拡大路線をまい進、13年3月期以降、大幅営業増益を続ける外食産業の勝ち組銘柄として注目度が高い。

 2月19日には、高級ステーキハウス「37 Steakhouse & Bar」などを展開するスティルフーズ(東京都品川区)との資本・業務提携を発表しており、企業価値向上に向けた戦略が投資資金を呼び込み翌日にはストップ高に買われた。450円近辺だった株価が、2月26日には騰勢加速し697円まで買われ一気に昨年来高値を更新。きょうは軟調地合いも相まって600円を割れて引けている。さらに、直近では株主優待の提供回数を年1回から年2回に変更しており、内容も大幅に充実させるなど株主還元に手厚い点も投資家が熱いまなざしを向ける背景だ。

●目を配りたいアトムに木曽路

 名古屋圏を地盤とするアトム <7412> [東証2]にも目を配りたい。同社はコロワイド <7616> 傘下で居酒屋をはじめステーキ店などレストランを展開するが、「焼肉家 味のがんこ炎」「カルビ大将」といった焼き肉チェーンにも注力している。株価は、不安定な全体相場をもろともせずに、前週末16日には1000円大台乗せを果たし高値圏を走る。株価の新ステージ入りで投資家の注目が集まっている。

 変わったところでは、しゃぶしゃぶ・日本料理の木曽路 <8160> も面白い存在だ。最近では、居酒屋業態にも注力するが、焼き肉チェーンでは中部地区を中心に「焼肉じゃんじゃん亭」を運営している。「手切り、熟成肉、黒毛和牛」にこだわり、食べ放題メニューの拡販、スピード提供などに取り組むと同時に、イベントなどに合わせたメルマガの配信や学生応援企画などで予約獲得活動を強化したことで、同事業の売上高は前年同期比13.3%増と好調。今後の事業展開に期待感がかかる。

 新興勢力が勃興するなか、あみやき亭 <2753> 、安楽亭 <7562> [東証2]、「焼肉屋さかい」のジー・テイスト <2694> [JQ]など、株式市場において、もはや“古参”ともいえる焼き肉チェーンの底力にも目を配っておきたいところだ。

●SHINPOはホテル向けにも注力

 焼き肉業界の隆盛を背景に活躍の舞台が広がっているのが、無煙ロースターの製造、販売及びその附帯工事を行っているSHINPO <5903> [JQ]だ。肉を焼くために欠かせない、まさに縁の下の、いや“肉の下”の力持ちで業績も好調だ。同社は、2月2日に18年6月期の連結業績予想の上方修正を発表した。売上高を52億4000万円から54億円(前期比10.0%増)へ、営業利益を6億5000万円から7億円(同15.0%増)へ、最終利益を4億3000万円から4億7500万円(同11.0%増)へそれぞれ増額した。売上粗利益率の高い製品などの販売増により、予定の売上総利益を確保した結果、営業利益、経常利益、並びに最終利益とも前回予想を上回ることとなった。

 同社では「焼き肉業界の好調が、業績に反映していることは言うまでもない。今後はホテル向けにも注力していく」(営業管理課)と新しい収益の柱を構築する構えだ。2020年の東京五輪に向けてホテルの新設が急速に進むが、つれて宴会施設も増加することになる。「宴会場では、無煙脱臭機能の付いたワゴンタイプのステーキなどを焼く機械にニーズがある。2月に開催された国際ホテル・レストラン・ショーにおいても非常に問い合わせが多く、のびしろは大きいと考えている」(同)。

 世界経済は米トランプ大統領の気まぐれに振り回され、国内は「森友学園問題」に絡む政局不安が株価の買い手控え要因となっている。しかし、朝の来ない夜はない、寒い冬を乗り越えて、満開の春へ。焼き肉業界に憂いなし。フレッシュマンが集うシーズン、テーブルを囲む機会も増えてくる。

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