【特集】平昌から東京へ、五輪カウントダウンで「都市鉱山関連」が注目の理由 <株探トップ特集>
2年後の東京五輪に向けスタートした「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」。株式市場での“都市鉱山関連株”への注目につながるか?
―都市から産まれるオリンピックメダル、認知度アップで期待の銘柄―
韓国・平昌で開催されていた冬季オリンピックが25日に閉会し、17日間の熱戦に幕を下ろした。日本選手団は金4、銀5、銅4と冬季五輪としては史上最多となる13個のメダルを獲得。五輪のバトンは2020年の東京夏季五輪、22年の北京冬季五輪に引き継がれることになる。
その東京五輪は、2月28日に大会マスコットが「未来ロボット型」のア案に決定し、今後さらに盛り上がりをみせると期待されているが、東京五輪に関して、株式市場で今後注目が高まりそうなのが「都市鉱山 」だ。
●世界の16%が日本の電子機器のなかに埋蔵
都市鉱山とは、地上に蓄積された工業製品を資源とみなしたものをいう。スマートフォンやタブレット端末、パソコン、ゲーム機、デジタルカメラなどには、金や銀、レアメタルやレアアースなどが使われているが、スマホやパソコンが使われなくなった際、これらの希少資源を取り出し再利用するというリサイクルの概念だ。
先進国にとどまらず、新興国でも情報機器が普及した現在、これら廃家電に含まれる希少資源のリサイクルは大きな課題となっている。特に、家電や情報機器が普及している日本には、蓄積され再利用可能な都市鉱山の量が世界有数の規模であると推測されている。国立研究開発法人である物質・材料研究機構によると、世界の埋蔵量比で、金は約16%、銀は約22%、インジウム約16%、錫は約11%に上るほか、電池材料のリチウムも多く蓄積されているという。日本の都市鉱山だけで、世界の2~3年相当の消費量がまかなえるともいわれている。
●メダルに活用で日本をアピール
この都市鉱山と五輪に何の関係があるのかといえば、メダルに他ならない。
オリンピック・パラリンピックの象徴ともいえる金・銀・銅のメダルだが、その製造コストは決して安くはないようだ。国際オリンピック委員会(IOC)の規定によると、各メダルは直径6~12センチメートル、厚さ3~10ミリメートル以上なければならない。金メダルと銀メダルは実はどちらも銀製で、純度1000分の925以上の銀を使用する必要があり、さらに金メダルに関しては6グラム以上の純金で金張り(またはメッキ)が施されていなければならないという。
メダル製作にかかる費用は、各大会によって異なるが、最低限必要な原材料は大会全体で1億円を超えるとの試算もある。資源の少ない日本ならではの取り組みとして、また環境に配慮し、日本のテクノロジー技術をアピールするためにも、都市鉱山を利用する。
●オリンピック組織委員会が後押し
これを後押しするのが、東京2020組織委員会が主催する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」だ。全国から小型家電を収集し、これらから取り出したリサイクル金属を原料に、東京オリンピック・パラリンピックで必要な約5000個のメダルを製作するというもので、リサイクル率100%を目指した五輪初の取り組みでもある。
例えば金を例にあげると、必要な量は9.6キログラムとされており、携帯電話のみならば数十万台、パソコンのみならば数万台に相当するという。経済産業省の調べでは、一般家庭には約2億台の携帯電話や約3000万台のパソコンが眠っているとされているが、実現に向けては回収率の低さが指摘されており、プロジェクトのさらなる認知度のアップなどが求められている。これにより今後、都市鉱山がクローズアップされることも増えそうだ。
●三菱マは処理能力世界一へ
同プロジェクトには、NTTドコモ <9437> が使用済みの携帯電話やスマートフォンの回収にあたっているほか、リネットジャパングループ <3556> [東証M]も国指定の宅配回収事業者として小型家電の回収を行っている。
また、三菱マテリアル <5711> は、中期経営計画の一環として都市鉱山用回収設備の処理能力向上に取り組んでおり、従来から4割引き上げ年間20万トンとし、世界最大規模とする計画を持つ。電気自動車に搭載されるリチウムイオン2次電池の回収事業にも参入し、ニッケルやコバルトなどのレアメタルの回収事業も行う。
さらに、電子機器からの都市鉱山の回収はもちろん、白金などの貴金属を含む排ガス触媒の回収を強化するDOWAホールディングス <5714> や、銅やニッケルなどを含む車載用電池を回収し正極材料を調達する住友金属鉱山 <5713> 、歯科医院や歯科技工所から出る廃棄物を回収して、金や銀、プラチナ、パラジウムなどを取り出すアサヒホールディングス <5857> などの動向にも注目だ。
●松田産、アサカ理研なども注目
このほかにも、都市鉱山型企業として日本国内はもちろん東南アジアや中華圏への海外展開を積極的に進める松田産業 <7456> や、イリジウムやルテニウムなど回収の難しい金属を取り出す技術に強みのあるフルヤ金属 <7826> [JQ]、リチウムイオン電池からコバルトを低コストで回収できる技術を持つアサカ理研 <5724> [JQ]なども関連銘柄として挙げられる。
昨年6月には「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」の改正法が成立し、今年10月の施行が予定されている。これにより都市鉱山の輸入がしやすくなることも、関連銘柄にはプラスに働きそうだ。
株探ニュース