市場ニュース

戻る
 

【特集】謎の円高“USDJPY=105.54”、日米金利差拡大も「ドル安円高」のなぜ <株探トップ特集>

2月16日、一時1ドル=105円半ばまで進んだドル安円高。日米金利差が拡大するなか、円が買われた背景には何があったのか。マーケットの見方を追った。

―下手人はリパトリ? 分かれるFOMC後の見方、円高メリット銘柄の妙味は―

 年初からの円高基調が続いている。年明けに1ドル=113円台だったドル円相場 は今月中旬には一時105円台まで急激な円高が進行した。とりわけ、市場関係者が首をひねっているのが、日米金利差が拡大するなか円高が急進行したことだ。市場には、米財政赤字拡大を警戒する声も浮上し、米国発の波乱を再度警戒する見方も根強い。なぜいま円高基調なのか。また、円高環境下での注目銘柄とは何か。

●日米金利差拡大、NYダウ上昇のなか円高続く

 ドル円相場は1ドル=107円前後と昨年末に比べ6円強のドル安・円高水準にある。年初から円は対ドルで5%強上昇した。今月16日につけた105円54銭は米大統領選が行われた16年11月以来、1年3ヵ月ぶりの円高水準だ。市場関係者からは、「新年から2ヵ月足らずで、ここまで急激な円高が進むことは想定外」との声が相次ぐ。

 とりわけ、米国の長期金利が上昇基調を強めるなか、円高が進んだことに対する説明に悩む声は少なくない。従来のドル円相場の見方では、日米金利差の拡大は日本からの対米投資の活発化をもたらしドル高・円安を誘発するはずだからだ。

 さらに、足もとで米長期金利が低下しNYダウ平均が急上昇したが、円高基調に変化はない。23日と26日で米NYダウは合計700ドル強上昇し、米長期債利回りが低下した。しかし為替市場の反応は限定的で依然、107円前後で推移している。

●「米財政赤字」主犯説には疑問の声

 なぜ円高基調が続くのか。一部の市場関係者が警戒しているのは、米トランプ政権の積極的な減税やインフラ投資策が、財政赤字を拡大させ「悪い金利上昇」をもたらすことだ。米国の経常赤字と財政赤字による「双子の赤字」への警戒が浮上。実際、今月初めのNYダウ急落時の米国は、「株安・債券安(金利上昇)、ドル安」によるトリプル安に見舞われた。

 しかし、この米財政赤字の主犯説に対して、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「いまは、米国の財政赤字を懸念する局面ではないだろう」と否定する。「通常時なら日米金利差が拡大する局面では、ドル高・円安が進むが、2月初旬の急激な金利上昇が市場に驚きを与え、リスクオフのセンチメントを投資家に植えつけた。このリスクオフが払拭し切れていないことが、いまの円高をもたらした要因だと思う」と藤代氏はいう。

●リパトリの季節要因見逃せず、下値は104円50銭前後か

 外為どっとコム総研の神田卓也調査部長も「景気拡大などを飛び越えて、ドル安・円高の要因を米財政赤字に結びつけるのには違和感がある」と指摘する。同氏は、今回の円高は複数の要因があり、そこに投機筋の売買が加わったことによるもの、と見ている。その主な要因として「昨年安値(9月の107円31銭)を割り込んだことで、ドル売りに拍車がかかったこと。日本の機関投資家が今月に入り外国債券の売りを膨らませたこと。もう一つは、春先のこの時期は、輸出企業などが決算の関係でドル建ての利益を円に転換するリパトリエーション(本国への資金還流)が活発化する時期であることも関係しているのではないか」と指摘している。

 神田氏は状況さえ落ち着けば「原点回帰で再度、日米金利差が注目されてくるはず」とみるものの、「当面は一段の円高の可能性もある」と予想。ドルの下値のメドを「まずは心理的節目の105円。そこを割り込めば104円50銭前後」とみている。

●パウエル議会証言やFOMCが焦点、米4回利上げ観測なら一段の円高も

 注目できるのは、「いまは為替相場より、(反騰基調を強める)NYダウの方が米国のファンダメンタルズを素直に反映しているのではないか」と神田、藤代両氏が口を揃えて指摘していることだ。

 今後の焦点は、今晩のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言、来月9日の米2月雇用統計、そして20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)といった重要イベントをどうこなすかだ。とりわけ、3月中旬以降は大きな転換点となりそうだ。国内企業によるリパトリが一段落するほか、FOMCの結果が判明する。とは言え、「FOMCで年4回の利上げ観測が強まれば、一段とドル安・円高が進行する可能性もある」(藤代氏)との見方もあるだけに、その結果は今年の金融市場の行方を大きく揺さぶりそうだ。

●当面は円高警戒、ニトリHD、特種東海、MonotaROなど注目

 来月のFOMCを契機に、ドル円相場は反転する可能性は小さくないものの、当面は円高基調が続く可能性もある。また、今期の想定為替レートを1ドル=110円前後としている企業も少なくない。それだけに、円高メリット株には投資妙味が出てきそうだ。

 代表的な円高メリット企業には、商品の多くをアジアから輸入しているニトリホールディングス <9843> や、原料の木材チップや石炭などの燃料をドル建てで輸入している王子ホールディングス <3861> 、特種東海製紙 <3708> など紙パ株が挙げられる。

 緻密な為替管理を行い、電子部品のドル建て調達を拡大しているソニー <6758> も円高メリット株とみられている。また、東京電力ホールディングス <9501> や東京ガス <9531> など電力・ガス株にも円高はプラス要因だ。

 エービーシー・マート <2670> やサイゼリヤ <7581> 、ニチレイ <2871> 、MonotaRO <3064> 、それに医療機器を手掛けるホギメディカル <3593> 、日本エム・ディ・エム <7600> などにも円高メリットが期待できる。服飾中心に海外ブランド品を購入できるショッピングサイトを運営するエニグモ <3665> [東証M]などにも円高は追い風に働く。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均