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【特集】あえて、売らない時代――“音楽産業”関連株が奏でる復活の賛歌 <株探トップ特集>

ライブ、サブスクリプション売上増加で拡大に転じる国内音楽産業。注目の関連銘柄を探る。

―コンサート・ライブ成長で市場拡大、関連銘柄の取り組みは―

 2000年代に入り、「CDが売れない」「斜陽産業に入った」といわれている音楽産業だが、どうやらそれは勘違いのようだ。

 確かに、音楽ソフト(オーディオレコードと音楽ビデオ)と音楽配信売り上げを合わせた市場規模を見ると、2017年は2893億4600万円となり、2年連続で前年実績を下回った。しかし、これにコンサート・ライブ売上高を加えると、13年5439億円、14年5728億円、15年6201億円と順調に拡大。16年は6086億円と足踏みしたが、これは16年に大阪城ホール、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナの3つの大型施設が改修のために一時閉鎖となった、いわゆるライブ会場における「2016年問題」の影響を受けたためであり、17年は再び拡大したとみられている。

●「売れない時代」ではなく「売らない時代」へ

 また、音楽配信売上高についても、13年を底にして着実に増加傾向にある。特に、サブスクリプション(アップルミュージック、AWAなどの音楽ストリーミングサービス)の増加が牽引役となっている。

 海外ではCDの購入は少数派で、音楽の楽しみ方はサブスクリプションが一般的だ。全米レコード協会によると、米国では17年上半期時点でストリーミングが音楽ソフト売り上げの6割以上を占めており、ダウンロード配信(19%)、CDなどパッケージ販売(16%)の割合を大きく上回っている。米グラミー賞を受賞したチャンス・ザ・ラッパーのように、ストリーミングのみで楽曲を発表し、CDはもちろんダウンロード配信も行わないアーティストも登場しており、今やCDは「売れない時代」ではなく「売らない時代」に突入している。

●日本でもサブスクリプションが着実増

 一方、日本でもアップルミュージックやグーグルプレイミュージック、LINEミュージック、AWAなどに加えて、音楽ストリーミングサービス世界最大手の「スポティファイ」が16年9月から日本でサービスを開始しており、着実にユーザー数を増やしている。

 ただ日本では、依然としてCDなどのパッケージメディアの売り上げが約8割を占めている。「売れない」と言われ続けているCDがいまだに市場の主軸を占めていることから、斜陽産業に見えてしまうようだ。

 しかし、昨年には「宇多田ヒカル」や「ドリームズ・カム・トゥルー」などをはじめとして、日本でも大物アーティストがストリーミングに楽曲を解禁し始めた。前述のライブの活況とサブスクリプションが牽引役となり、国内音楽産業も市場拡大が続きそうだ。

●ソニーはストリーミングが急成長

 株式市場では、音楽産業はその市場規模に対して上場企業が少ないが、世界的なサブスクリプションへのシフトをうまく捉えているのがソニー <6758> だ。

 同社は、音楽ソフトだけではなく、アーティスト・マネジメント、ライブハウス経営など重層的な音楽ビジネスを世界展開しており、音楽事業ではユニバーサル・ミュージック・グループと並ぶ世界的な企業。足もとの同事業ではモバイル機器向けゲームアプリ「Fate/GrandOrder」の好調が際立つが、ストリーミング(サブスクリプション)も第3四半期累計売上高が(前年同期比36%増の555億円と好調で、「Fate」と並ぶ成長頭となっている。

 また、同社は「西野カナ」や宇多田ヒカルなどのほか、女性アイドルグループ「乃木坂46」「欅坂46」などを抱えており、これも強みとなっている。

●安室奈美恵効果に期待のエイベックス

 音楽ソフトの売上高だけを見ると、ソニーを上回っているのがエイベックス <7860> だ。今年は人気K-POPグループ「BIGBANG」の兵役入りが予想されているが、一方で「東方神起」が兵役から復帰して、昨年11月から日本でのライブを再開しており、19年3月期はフル活動による業績への貢献が期待されている。また、今年9月に引退する「安室奈美恵」が昨年11月に発売したベストアルバム「Finally」はアルバム売り上げ枚数が200万枚以上のヒットとなっており、引退までにさらなる企画も期待できる。

 一方、アミューズ <4301> は、「福山雅治」や「サザンオールスターズ」などの主力アーティストのライブ回数が減少したことで足もとの業績は苦戦している。ただ、サザンオールスターズが今年6月に結成40周年を迎えるため、記念ツアーなどが期待でき、19年3月期は増益転換へと向かいそうだ。

●TOA、ヒビノなどにも注目

 これらの企業は、CD販売に加えて、ライブによる収入も見込まれ、コンサート・ライブ市場の拡大は好環境といえる。

 一方、所属アーティストの大半からレコード化権のみを得ているのが、JVCケンウッド <6632> 傘下のビクターエンターテインメントで、サザンオールスターズや「家入レオ」などのCDを販売するほか、アニメソングにも力を入れている。

 さらに、コンサートホール、スポーツ施設、商業施設、イベント会場などに音響・拡声システムを納入するTOA <6809> 、コンサート関連の音響・映像サービスなどを手掛けるヒビノ <2469> [JQ]などもコンサート・ライブ市場の活況で恩恵を受けそう。また、アーティストグッズのECサイトサービスを提供するSKIYAKI <3995> [東証M]なども関連銘柄として注目されそうだ。

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