【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─ 金融マーケット“春の乱”の正体は?
株式評論家 杉村富生
「金融マーケット“春の乱”の正体は?」
●債券バブル崩壊orイエレン・ショック?
いや~、ビックリである。世界の株式市場の時価総額は5兆ドル(540兆円)がふっ飛んだ。多くの投資家が「何が起こったのだ?」と身構えたことだろう。日経平均株価は1月23日の2万4129円(ザラバ)を高値に、2月14日には2万0950円(同)の安値まで売り込まれた。下落幅は3179円、下落率は13.2%となる。
感覚的にはガラ(崩落)に近い。なぜ、こんなに下げる必要があったのだろうか。金融マーケット“春の乱”はNY市場発だ。長期金利の上昇→債券バブル崩壊とか、イエレン・ショックなどといわれているが、基本は投機筋(ヘッジファンド)の売り仕掛けだろう。
これにポートフォリオ・インシュアランス、リスク・パリティなどのヘッジ売りが共鳴、売りが売りを呼ぶ展開となった。彼らはプログラム売買&アルゴリズム取引を駆使し、機械的に売る。ブラック・マンデー(1987年10月19~20日)と同じ構図である。
イエレン女史(前FRB議長)は退任3日前の2月1日引け後に、銀行ストレステストの概要を公表した。それにはNYダウ平均の下値メドを何と、「9689ドル」に設定してあった。NYダウの急落が2日から始まったことを考えると、イエレン・ショックはマトを射ている。
●パウエルFRB議長は銀行規制緩和論者!
ただし、パウエルFRB議長はイエレン女史と違って、銀行規制緩和論者だ。こんなバカバカしいストレステストは内容が修正されるだろう。さらに、2月28日には新議長の議会証言がある。コーンNEC(国家経済会議)委員長は「銀行規制緩和法案」を議会に提出する。
日本では黒田日銀総裁の続投方針が固まった。金融マーケットの不安要因は徐々に解消されつつある。もちろん、1ドル=106円台突入の円高進行は気掛かりだ。主力企業の想定為替レートは109円66銭といわれている。しかし、企業の稼ぐ力、円高対応力は一段と強固になっている。
ちなみに、上場企業の最終利益は1996年度(6月26日に日経平均は2万2666円の戻り高値)が5兆円、2015年度(6月24日に同2万0868円の戻り高値)が29兆円だったが、今年度は41兆円に増える。早晩、この収益力を評価する場面があろう。
一方、物色面では「入れ食い状態」だが、企業内容を厳選し、3月末に1対2の株式分割を行う日本M&Aセンター <2127> 、5G関連の原田工業 <6904> [東証2]、電子カルテのソフトウェア・サービス <3733> [JQ]、売られすぎのみらいワークス <6563> [東証M]などを拾いたい。ただし、ていねいに買い下がる戦術が有効である。
2018年2月15日 記
株探ニュース