【特集】普及元年「eスポーツ」、2018年ニッポン“e獲千金”夢銘柄 <株探トップ特集>
年収数億円プロゲーマーは日本でも誕生する? カプコン、サイバーエージェントの本気は何を変えるか――。
―世界市場6億6000万ドル規模に、後発ニッポンでも見え始めた本気―
2月1日、日本国内のゲーム対戦競技「eスポーツ 」を振興する統一団体「日本eスポーツ連合」(JeSU、東京都中央区)が設立された。これまで国内のeスポーツ団体は、日本eスポーツ協会、s-sports促進機構、日本eスポーツ連盟の3団体があったが、これを一つに統合することで、日本におけるeスポーツの普及と発展を図るのが狙いという。
同団体では大会の出場者にプロのゲーマーとしてのライセンスを発行するほか、eスポーツに関する調査や研究も進める。また、eスポーツにおける国際大会への選手団派遣や国産ゲームタイトルの供給などに向けて、日本オリンピック委員会(JOC)への加盟と、将来的にはオリンピックの公式種目として採用されることを目標に取り組むとしている。
●アジア競技大会では正式種目に採用
eスポーツは、格闘ゲームやシューティングゲームで対戦するイベント。1対1での対戦のほか、複数人同士やチームで対戦するケースもある。対戦の模様は大会が行われている会場や動画配信サービスで観戦することができるようになっている。
日本ではようやく世間に認知され始めた段階だが、既に欧米や韓国、中国では定着している。OCA(アジアオリンピック評議会)が主催する「アジアインドアゲームズ」では、2007年からeスポーツを正式種目として採用。22年に中国の杭州で開催されるアジア競技大会からは正式種目に加わることも決定した。さらに、パリ五輪招致委員会は24年に開催予定のパリ・オリンピックで追加種目となる可能性について言及している。
市場も拡大しており、オランダの調査会社ニューズーによると、17年の世界のeスポーツ市場は前年比34%増の6億6000万ドルになったと試算。20年には約15億ドルに達すると予測している。高額賞金の大会も定期的に開かれ、賞金総額が日本円で20億円を超えるものもあり、年収が数億円のプロゲーマーも多く存在する。韓国や中国では若者の間でプロゲーマーは憧れの職業の一つだ。
●賞金高額化で普及加速に期待
こうした欧米や中国、韓国に対して出遅れが目立つ日本だが、eスポーツで用いられるゲームには日本発のものも多い。日本eスポーツ連合が設立し、プロライセンスが発行されることで、高額賞金の大会が開催しやすくなることから、普及が加速するとの期待が高まっている。
日本ではこれまで、ゲーム開発会社が自社ゲームの大会に高額賞金を用意すると、景品表示法に抵触する恐れがあった。そのため大会の規模は大きくできなかったが、プロライセンス制度を導入し、高額賞金の受け手をプロゲーマーに限定することで、大型大会を開催できるようになる。国内外から有力ゲーマーを招待すれば、来場者やライブ動画の視聴者が増え、スポンサー企業も増えることが期待できるというわけだ。
●食品業界からもスポンサーに参入
これを見据えて、サイバーエージェント <4751> 子会社のCyberZは、12月に開催する「シャドウバース」の世界大会の優勝賞金を、17年の5万ドルから100万ドルに引き上げると発表した。国内で最高額の賞金を設定することで、世界中からレベルの高い参加者を集めやすくするのが狙いという。
また、日清食品ホールディングス <2897> は、1月に開催されたアジア初開催となる格闘ゲーム大会「EVO Japan2018」の冠スポンサーとなった。EVOは、対戦格闘ゲームジャンルにおける世界最大規模のトーナメントで、毎年7月に開催されている北米大会では、世界中からプレイヤーが集まり、その腕を競う。日清食品HDでは、会場で「カップヌードル」を提供するなどして、ゲームの主要ユーザーである若年層の需要を図るなどした。
●東京ゲームショウ2017でも出展ゲームが人気
ゲーム開発会社では、eスポーツの大会を行うことで知名度が上昇するとともに、利用者の増加につながるとの期待もある。
昨年9月に千葉市の幕張メッセで開催されたゲーム見本市「東京ゲームショウ2017」で行われたeスポーツの大会では、ソニー <6758> グループのソニー・インタラクティブエンタテインメントや、セガサミーホールディングス <6460> 傘下のセガゲームス、コナミホールディングス <9766> 傘下のコナミデジタルエンタテインメント、カプコン <9697> 、ガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765> 、ネクソン <3659> などが出展し、いずれも人気を博していた。
●カプコンはいち早く本格参入を発表
なかでも「ストリートファイター」シリーズが人気のカプコンでは2月13日、北米を中心に実施していたeスポーツ事業へ国内でも本格的に参入すると発表した。
まずユーザーコミュニティーの醸成を目的に、コミュニケーションスペース「カプコンeスポーツクラブ」を2月17日にプラサカプコン吉祥寺店に新設。また、14年から米子会社主催で実施しているCAPCOM Pro Tourの高位大会として「CAPCOM Pro Tour ジャパンプレミア大会」を「東京ゲームショウ2018」で開催するとしている。同大会の上位入賞選手にはプロライセンスの発行も予定しており、他社に先行する。
●ゲーム専用パソコンにも商機
また、eスポーツの普及で注目されるのは、ソフトウエアばかりではない。プレイヤーの多くは、高精細の3次元画像がなめらかに動く、高い画像処理能力が特徴のゲーム専用パソコンを使用している。eスポーツの普及が進めば単価の上昇を伴ってパソコン市場の活性化が期待できるほか、自作市場にも波及が期待できる。
MCJ <6670> [東証2]のマウスコンピューターでは、ゲーム向けパソコンとして、「G-Tune」を展開しており、初心者からプロゲーマーまでの幅広いニーズに対応している。また、ヤマダ電機 <9831> グループのTSUKUMO(ツクモ)もゲーム向けに「G-GEAR」シリーズを展開している。
本体だけではなく、専用のマウスやキーボードも人気が高まっており、エレコム <6750> やメルコホールディングス <6676> 、さらにビックカメラ <3048> 傘下のソフマップなどのビジネスチャンスも増えそうだ。
このほか、ジンズ <3046> は昨年6月、ゲーム分野で同社のメガネ型デバイス「ミーム」の活用を探るプロジェクトを立ち上げており注目したい。
株探ニュース