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【特集】東芝、6ヵ月ぶり高値の意味 交錯する希望と不安の向こう側 <株探トップ特集>

東芝 <日足> 「株探」多機能チャートより

―よみがえるシャープ乱高下の記憶、市場でささやかれるシナリオは―

 東芝 <6502> が連日の人気に沸いている。株価は足もとで急伸したが、この背景には半導体子会社の売却が大詰めを迎えており、売却金額は2兆円を超えるとの期待がある。また、信用の新規売りが停止され売り注文が減ったことが株高を呼んだ要因ともみられている。ただ依然、東証2部指定替えや上場廃止への懸念はあり先行きへの警戒感を示す声は少なくない。果たして、夏相場に向けて東芝の上昇劇は続くのか。

●株高呼ぶ「半導体売却」と「株式需給」要因

 東芝株が高値圏で強調相場を続けている。4月中旬に200円割れに低迷していた株価は13日には344円に上昇し、昨年12月末以来、約6ヵ月ぶり高値に買われた。不適切会計に続く米原発子会社の破綻で巨額損失を計上し、経営危機に陥った東芝の株高を主導しているのは、「個人投資家やヘッジファンドなど短期筋が中心」との見方がもっぱらだ。東芝株の上昇の背景にあるのは、「ひとつには半導体事業の高値売却への期待。もうひとつは株式需給の要因」(アナリスト)だという。特に、半導体子会社「東芝メモリ」の売却が大詰めを迎えるなか「最低ラインの2兆円は超えそうだ」(市場関係者)との期待が株価を押し上げている。

●「東芝メモリ」売却決定間近か、2兆円超に期待

 東芝メモリの買収には、官民ファンドの産業革新機構と米ファンドなどの日米連合、米半導体大手のブロードコム、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などの陣営が名乗りを上げているが、前3月期末で5400億円に達したとみられる債務超過金額を解消し、経営活動に十分な資金を残すためにも2兆円以上の売却益は必達ラインとみられている。東芝は売却先を6月後半までに決定し、28日開催予定の株主総会までに正式契約を締結する方向だ。具体的な日程には依然として不透明感が残るものの、一部には「15日にも優先交渉先を選定」とも報道されるなか、市場には売却金額の引き上げ観測も流れ、東芝の財務改善への期待感が高まる展開となっている。

●信用売り停止で需給好転、踏み上げ相場の様相も

 また、株価上昇の背景にある需給要因も見逃せない。日証金は貸株の急増を受け、前月17日から東芝株の制度信用の新規売りを停止した。こうしたなか、信用売りが難しくなる一方、株価上昇で売り方が買い戻しを入れる「踏み上げ相場」の様相を呈したことも上昇ピッチを速める要因となったようだ。この売り方の買い戻しもあり、「株価は需給要因で目先一段の上昇に動いてもおかしくはない」(大手ネット証券)との見方も出ている。

 株価には一段高期待も高まるが、その一方で「東芝株の売買には、やはり注意が必要だ」(ベテラン証券マン)と警告する声は少なくない。東芝の17年3月期決算は確定していないが、今年度も債務超過状態が続いたり、「特設注意市場銘柄」の審査で同銘柄からの解除が見送られたりした場合、同社株は東証から上場廃止となる。また、上場廃止の前段階として「東証2部」指定替えに伴うリスクが指摘されている。東芝株に関しては「機関投資家の処分は相当進んだだろう」(市場関係者)というが、東証1部で日経平均株価採用銘柄である東芝は、インデックス売買に絡む保有株式が保持されたままの状態とみられる。

●東証2部ならインデックス売りの懸念、シャープが参考に

 市場関係者が参考にしているのが、昨年8月1日に東証1部から2部へ指定替えとなったシャープ <6753> [東証2]の株価動向だ。債務超過に陥ったシャープは昨年6月23日に東証2部指定が発表され、7月12日に日経平均株価採用銘柄からの除外が公表された。この間、6月23日に終値133円だったシャープの株価は8月1日には87円まで3割強下落している。

 東芝の場合、有価証券報告書の提出は遅れるとみられるため、債務超過が確定されるまで東証2部への変更は先延ばしされるのでは、との思惑もある模様だが、「東証が何も行動を起こさなければ相場上昇は続く可能性もあるが、基本的には2部への指定替えはあるとみておくべきだろう」(前出のベテラン証券マン)という。

 もっとも東証2部市場に移り2ケタ台まで下落したシャープ株は債務超過解消を受け、今年4月に504円まで急騰した。足もとの東芝株の急伸もこの連想が働いた感はあるが、東芝が再生したシャープと同様の評価を受けられるかどうかは、これから試されることになる。

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