市場ニュース

戻る
 

【市況】【フィスコ・コラム】:円:北朝鮮リスク、円はどちらに動くのか?


ミサイル発射など挑発行為を繰り返す北朝鮮に対し、アメリカのトランプ政権は圧力を強めようとしています。今後の状況によって米朝間で戦火を交える事態になれば、日本の本土がミサイル攻撃を受ける可能性はゼロではありません。その際、円はどのような値動きになるのでしょうか。


内政の行き詰りを外交や通商で挽回しようとするのは、古今東西、どの為政者も同じようです。破天荒なトランプ米大統領ですが、医療保険制度改革(オバマケア)の廃止に失敗し、今後は経済面で不均衡貿易の是正に注力するとみられます。安全保障でも、独裁者のもと武力誇示する国を力でねじ伏せることに成功すればで、国内向けに「強いアメリカ」をアピールできます。


金正恩・朝鮮労働党委員長の体制下の北朝鮮への攻撃は、アメリカ人の勧善懲悪主義にうってつけの「素材」ではないでしょうか。実際、トランプ大統領は最近のメディアとのインタビューで、北朝鮮の核開発などの問題について「中国が解決しなければわれわれがやる」と単独行動を示唆。ティラーソン国務長官も軍事力行使を含めた「あらゆる選択肢」に言及しており、朝鮮半島の有事はもはや非現実的なシナリオではなくなりつつあります。


米朝が戦争状態になれば、当然のことながら周辺国にも被害が及びます。どのような展開になるかは読み切れませんが、「決着」までそれほど時間はかからないでしょう。その際、追い詰められた北朝鮮は憎悪する韓国や日本に対し、破れかぶれで攻撃してくるかもしれません。これまでも日本を射程に収める弾道ミサイルを何度か発射しています。2003年に核兵器不拡散条約(NPT)から脱退後、2005年には公式に核兵器保有を宣言し、2006年から数次にわたり核実験も繰り返しています。


北朝鮮のミサイル発射や核実験が行われると、金融市場では「リスク回避」として円を買う動きになります。これは、円が「安全」通貨とされるためです。しかし、仮に北朝鮮からの攻撃で東京が焦土と化した場合はどうなるでしょうか。直近のモデルケースとして2011年3月の東日本大震災を思い起こしてみると、この時は未曽有(みぞう)の円高となりましたが、東京が首都機能をマヒさせるほどのダメージを受けたわけではありませんでした。


そこで日本株に主眼が置かれ、株安を受けて円高に振れたと考えられます。加えて、生損保が巨額の保険金の支払いに備えるために海外の資産を大量に売って資金を日本へ引き揚げるリパトリエーション(本国回帰)による急激な円転(円買い)が想定され、超円高につながりました。


北朝鮮からの攻撃で日本が首都機能を失っても、一時的であれ円が買われるかどうかといえば、基本的にはまず株安となるため円高に振れるとの見方が成り立つでしょう。ただ、取引不能の状態に陥った日本の通貨は、やはり売られるとみる方が常識的のように思えます。もっとも、外為ディーラーに「その時」はどのような展開を想定しているか尋ねると「ディールを中止して避難するので、売りも買いもない」と話していましたが。

(吉池 威)

《MT》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均