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【特集】医療費が安くなる? セルフメディケーション税制「恩恵株」は <株探トップ特集>

「セルフメディケーション税制」で市販薬需要に拡大期待、ドラッグストアなど業績に追い風も
―年間1万2000円超で控除、医薬品・ドラッグストア関連銘柄に関心―

 先週16日から2016年分の所得税の確定申告がスタートした。医療費が年間10万円を超えた場合、その超過分に対して確定申告すれば医療費控除を受けることができる。さらに、今年1月から新たな医療費控除の特例制度として「セルフメディケーション税制」がスタートし、来年の確定申告に向けて消費者の関心も高まっている。新税制導入が市販薬の需要拡大につながるとの見方もあり、医薬品メーカーやドラッグストアに株式市場関係者の関心が集まっている。


●1万2000円超えた部分が控除対象に

 新しくスタートしたこの制度を一言でいうと「医薬品の購入費に限定した医療費控除」ということになる。企業の健康診断や自治体のメタボ検診などを受けていて、薬局やドラッグストアで対象となる市販薬を購入した金額が年間合計1万2000円を超えた場合、超えた部分の金額が、その年の総所得金額から控除され税金が軽減される。

 従来の医療費控除には、年間医療費の合計が「10万円」、または「所得の5%」(所得が200万円未満の場合)という足切りラインがあり、その額を超えないと対象とならなかった。たとえば所得が100万円なら、医療費が5万円を超えないと医療費控除は適用されなかった。

●国民医療費抑制の切り札に

 セルフメディケーション税制の導入は、高齢化社会到来に伴う国民医療費増大の抑制という使命も担っている。厚生労働省の発表によると15年度国民医療費は、41.5兆円(前年度比3.8%増)と、11年度の37.8兆円からの4年間でも大幅な拡大をみせており、このままだと同省の推計で25年度には54兆円まで膨らむ見通しだ。なかでも、国民医療費の約2割弱を占める調剤医療費の伸びは、15年度で前年度比9.4%増と診療種類別で突出した高い伸びを示している。これに伴い、症状が軽い場合は、医療機関に出向かずに自ら医薬品を購入することで、国民医療費の抑制につなげようというものだ。

 セルフメディケーション税制は、健康維持や病気予防のための制度で、病院の薬の成分を市販薬に転用した「スイッチOTC医薬品」の購入費用に対して所得控除を受けることができる。控除を受けるためには特定商品の購入を証明する書類が必要になるため、販売店は特定商品かを判別できる記載をレシートに印字する必要がある。

●大正薬HDなど医薬品メーカーが啓発活動を積極化

 具体的な関連銘柄としては、市販薬最大手の大正製薬ホールディングス <4581> をはじめ、一般用医薬品比率の高いロート製薬 <4527> 、ゼリア新薬工業 <4559> 、日水製薬 <4550> などがある。また、国内トップの医薬品卸大手で、一般用医薬品卸を企業買収で拡充しているアルフレッサ ホールディングス <2784> にも注目したい。

 大正薬HDでは「日本一般用医薬品連合会や、日本OTC医薬品協会などの業界団体の取り組みに積極的に関わるとともに、ドラッグストアや企業各社と連携し、税制の浸透を盛り上げていきたい。単年というよりも中期的視点で考え、税制が定着することで、セルフメディケーション市場が拡大することに期待している。そうなることが生活者の方々にとっても、国にとっても、業界にとっても、プラスであると考えている。まずは新税制の浸透に向け、さまざまな啓発活動を進めていく」(コーポレートコミュニケーション部)としている。

●マツキヨHDは店舗での認知促進を図る

 一方、都市型ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス <3088> では「ドラッグストア業界では、20年ほど前から“自分の健康は自分で守る”という考え方を推進し、お客様の相談にも乗ってきた。セルフメディケーション税制は、国民医療費の抑制に重要な役割を果たすことになると思う。当社では、早い時期から店舗スタッフへの教育を実施し、万全の対応で臨んでいる。店頭でのポスター掲示による告知や、対象商品へのステッカー貼り付け、レシートでの星印記載などで認知促進を図っている」(広報室)としている。

 このほか、ドラッグストアチェーン最大手のウエルシアホールディングス <3141> 、東京西部地盤の大手サンドラッグ <9989> 、北海道から南下して勢力を東日本に拡大しているツルハホールディングス <3391> 、東海地方が地盤のスギホールディングス <7649> なども見逃せない。

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