【特集】「変なホテル」が採用の新素材CLTって? 日本CLT協会・中島洋業務推進部長に聞く!<直撃Q&A>
中島洋氏(日本CLT協会 業務推進部部長)
Q1 CLTとはどのような木材ですか?
中島 鋸などで挽いて切った木の板のことをひき板と言いますが、このひき板を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料のことをCLTと言います。合板と違って大きく、厚みがあるのが特徴で、そのまま壁や床などの構造材に使われるほか、家具などにも使用されています。合板は今のような製造方法になって100年以上の歴史を持つ材料ですが、CLTは1990年代の半ばに欧州で誕生したまだ新しい材料で、その後、北米や豪州にも広がりました。日本では木造というと戸建て住宅をイメージしがちですが、欧米では中・大規模のマンションや商業施設に利用され急速に普及が進んでいます。現在、CLTを利用した最も高い建築物はノルウェーにある14階建てのビルで、さらにカナダでは18階建てのビルも建設されています。
Q2 CLTの特徴や利用する上でのメリットは?
中島 厚みがある材料で、面で支えるので耐震性があるため、木質系材料ですが高層建築物の構造材に利用できることが特徴です。しかもコンクリートに比べて5分の1程度の軽さなので基礎を簡素化できたり、運搬上でのメリットもあります。また、コンクリートは現場で養生しなければならないので時間がかかりますが、CLTは工場内で材料を加工してから現場に搬入するので、施工期間の短縮や人手不足の解消なども図ることができます。このほか、国では国産木材の利用を促していますが、日本の森林資源の有効活用という点でも貢献しています。
Q3 日本でのCLT利用の現状は?
中島 日本では2013年12月にJAS(日本農林規格)が制定され、昨年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されたことにより、CLTの一般利用がスタートしています。そのため、まだ認知はされていませんが、林野庁や国土交通省による補助事業に加えて、環境省でも支援のための予算を来年度からつける予定です。これからCLTに取り組む企業がどんどん増えるものと期待しています。日本におけるCLTの生産量は15年、16年が年約5000立方メートルでしたが、当協会のヒアリングによると17年は2万立方メートル以上に一気に拡大する見込みです。今後、CLTを利用した建物が増えてくるのではないでしょうか。
Q4 CLTを使った実例は?
中島 国内で有名なのは、ハウステンボスの「変なホテル」2期棟ではないでしょうか。壁や床などに100%九州産のCLTが使われています。また、高知県はCLTの利用に積極的で、自治会館や森連会館、漁協の事務所などでCLTを利用しています。さらに、福島県では東日本大震災からの林業再生の柱とすべくCLTの普及を進めていて、復興住宅にCLTを活用するのを皮切りに、他の県の施設にも広める方針だと聞いています。このほか、当協会の会長である中島浩一郎が社長を務める銘建工業の本社がある岡山県真庭市では、ホテルが建てられ、小学校への利用も決まっています。学校の校舎などは地域のランドマークでもあるので、利用が増えるといいですね。
Q5 普及に向けた協会の取り組みは?
中島 まず、設計者へもっとCLTを知ってもらいたいということで、設計者向けの講演会やテキストの作成に力を入れています。また、実際に利用して、そこから生じた技術的な課題をクリアするための仕組みづくりなども行っています。その一つとして、建築基準法で求められている「2時間耐火」の認定を協会で取得しようと取り組んでいます。この認定を取ることで、5階建てから14階建ての建築物まで対応できるようになりますので、CLTの利用が広がるのではないかと期待しています。
(聞き手・浅野尚仁)
<プロフィール>(なかしま・よう)
1981年岡山県真庭市生まれ。出版社勤務を経て、2006年銘建工業入社。製造管理部門に2年、営業に3年、商品開発に2年従事した後、1年間の建築研究所交流研究員を経て、14年より日本CLT協会に出向。CLTの普及に取り組む。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)