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【特集】接近「プレミアムフライデー」、期待と不安と“有望株” <株探トップ特集>

エボラブルA <日足> 「株探」多機能チャートより

―消費喚起と働き方改革に向け担う重責、盛り上がりへ期待感―

 今月24日の金曜日からプレミアムフライデーがスタートする。経済産業省、経団連などが音頭をとって、月末の金曜日は午後3時をメドに速やかに仕事を終了し、その後の空いた時間を個人消費の喚起につなげようとするものだ。実効性に対する懸念も聞こえてくるが、さまざまな業種に恩恵をもたらす可能性もあり期待する声も少なくない。プレミアムフライデー関連銘柄の動向と今後の行方を探った。

●消費を喚起せよ!

 プレミアムフライデー実施の背景には、世界経済の減速や国内経済の停滞がある。政府は2020年ごろまでに名目国内総生産(GDP)600兆円の達成を目指すものの、ここにきて個人消費が停滞してきており、その実現は厳しい状況になってきている。そのためプレミアムフライデーにより消費を喚起するという狙いがある。

 経産省ではプレミアムフライデーについて、「個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光など)や、そのための時間の創出を促すこと」とし、(1)充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる、(2)地域等のコミュニティー機能強化や一体感の醸成につながる、(3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる、といった効果につなげる取り組みとしている。

 では、実際にプレミアムフライデーでは、消費者はどのようなものに、その時間を有効に使うのだろうか。それを分析することで、投資のヒントが見えてきそうだ。

●トップが「旅行」、さて2位は……

 博報堂行動デザイン研究所は、プレミアムフライデーの過ごし方調査を行い、昨年12月13日に結果を公表した。それによると、プレミアムフライデーの過ごし方では、単一回答でトップが「旅行」の31.5%となった。旅行の形態としては「1泊1.5日の国内旅行(金曜夕方出発、土曜夜帰宅)」が全世代で高い評価を得ている。その理由として、同研究所では「日曜をまるまる休めることが好感された可能性が考えられる」と分析。20~30 代(男女)では「2泊2.5日の海外弾丸旅行(金曜夕方出発、日曜夕方帰宅)」の人気が高かったという。また、「食事」(8.8%)、「買い物」(7.4%)、「近場の行楽スポットに出かける」(7.0%)、「音楽鑑賞・映画やDVD鑑賞」(5.3%)、「スポーツ、ヨガやフィットネス」(4.3%)などの支持が高い。ちなみに「自宅でのんびり過ごす」という回答が30.3%で旅行に続き2位となっている。

●HISにオンライン旅行予約サイトも

 この調査から浮かび上がってくるのが、旅行関連銘柄ということになる。プレミアムフライデー推進協議会事務局でも「ちょっと長めの休日で普段は行けない『2.5日旅』へ。休みが半日長くなるだけで、行ける場所が広がる」と提言している。

 では、実際に旅行業界の取り組みはどうなっているのだろうか。エイチ・アイ・エス <9603> では「プレミアムフライデーというキーワードで『週末なにかできないかな』と考えていただく機会でもある。“プレミアムフライデーで金曜日に行こう”というメッセージのもと、ホームページで週末旅行特集を展開している」(広報)。同社では、「祝・プレミアムフライデー」として「海外プチ旅行」を提案、さらなる週末旅行の需要喚起を行う。

 その他の旅行関連では、KNT-CTホールディングス <9726> に加え、オンライン旅行予約サイトのエボラブルアジア <6191> [東証M]、オープンドア <3926> にも活躍期待が高まりそうだ。また首都圏から比較的近い箱根で箱根小涌園などを展開する藤田観光 <9722> にも目を配っておきたい。

 消費喚起が目的のプレミアムフライデー、当然のことながら百貨店業界もこの商機を逃さない。日本百貨店協会では「百貨店でプレミアムな週末を」をテーマに、百貨店レストランフロアの各店を、いくつもまわって食べ歩き飲み歩くグルメイベント「週末めぐらナイト」をはじめ、さまざまなイベントで顧客を呼び込む構えだ。もちろんJ.フロント リテイリング <3086> 、三越伊勢丹ホールディングス <3099> 、高島屋 <8233> 、松屋 <8237> など各百貨店も独自企画で攻勢をかける。

●少々早めの一杯で串カツ田中、「磯丸水産」のSFPダイニング

 プレミアムフライデーの中核と目されるのが居酒屋関連銘柄だ。身近で手ごろな消費活動であり、ストレスの発散にも繋がる。24時間営業の「磯丸水産」を展開するSFPダイニング <3198> [東証2]は、もともと営業時間内ということもあり恩恵を受けそうだ。そのほか、きちり <3082> 、チムニー <3178> 、テンアライド <8207> 、大庄 <9979> などをはじめ多くの居酒屋関連銘柄にも期待がかかる。

 数多い関連銘柄のなかで、1月27日にプレミアムフライデーに先行して「フライングフライデー」というサービスを行ったのが串カツ田中 <3547> [東証M]だ。同社では「フライングフライデーは好評だった」(広報)とし、2月24日のみ全店(一部店舗を除く)で午後3時オープン、当日に限りプレミアム串カツを販売。20~24日まで串カツが全品100円(ただし午後6時まで来店の顧客に対して)にする予定。また「詳細は変わってくると思うが3月以降も継続する方針だ。プレミアムフライデーという日には、なんらかの取り組みを行っていく。今までとは違う客層の広がりにも期待したい」(同)と言う。

 また、「アフターファイブ」ならぬ「アフタースリー」となることから、エンターテインメント産業にも好影響を与えることになりそうで、映画や演劇で東宝 <9602> 、ボウリング場など複合レジャー産業大手のラウンドワン <4680> なども脚光を浴びる可能性がある。

●期待と不安が交錯する初の“特別な金曜日”

 さまざまな業種に恩恵を与えそうなプレミアムフライデーだが、当然の如く懸念を抱く事業者も少なくない。「期待はしているけれど当面は手探り状態、定着すればそれはそれで良いかなというくらいが本音」(旅行関係)や「実際のところ、周辺の企業でプレミアムフライデーを導入していますか? してないでしょ。大手企業の一部が参加しているだけ、それじゃなかなか『はい、新しいサービスやりましょ』ってことにはならない。ヒトもカネもかかる、ただじゃない」(飲食関係)と、なかなか手厳しい意見もある。

 期待と不安が交錯するなかでスタートするプレミアムフライデー、消費喚起に加え、長時間労働の是正につながることから「働き方改革」としても想像以上に重要な役割を担うことになる。とにもかくにも、初の“特別な金曜日”接近で関連銘柄からは目が離せない。

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