【特集】「日銀会合は現状維持、隠れたリスク要因とは?」外為どっとコム総研・神田卓也調査部長に聞く!<直撃Q&A>
神田卓也氏(外為どっとコム総合研究所 調査部長)
Q1 日銀は金融政策の現状維持を発表しました。今回の決定をどうみていますか?
神田 予想通りの結果と言える。足もとでは、円安が進行して追加緩和の理由はなくなってきている。トランプ・ラリーが日銀には追い風となった。日米金融政策をみるうえでは、ボールは米国にある。当面、米国の金融政策がマーケットを動かす状況が続くとみている。
Q2 9月の日銀決定会合までみられた「日銀トレード」と呼ばれる投機的な売買は影を潜めました。日銀の金融政策への関心は薄れたのでしょうか?
神田 しばらくは、日銀は金融政策の現状維持を続ける可能性が考えられる。その意味で、日銀決定会合は市場の焦点ではなくなるかもしれない。日銀の政策は2%の物価目標が達成できる状態が継続的になるまでは大きな変更は見込みにくい。18年春までの黒田総裁の任期中は、この状態が続く可能性はある。ただし、世界的に金利は上昇傾向にある。日銀は長期金利をゼロ%前後に抑えることを目指しているが、この政策のために国債を無制限に買い入れるのには限界がある。今後、米国の金利は上昇が予想されるなか、日銀の政策はどこで限界を迎えるのか。その臨界点を確かめなければいけない。
Q3 今後、日銀による金融政策はどうマーケットに影響しそうですか?
神田 日銀の政策をみるうえでの、メーンシナリオは米国の金利上昇が続く一方、日本では長期金利をゼロ%程度へ固定することで、日米金利差が拡大してドル高・円安が進むということだ。一方、リスクシナリオは、2%目標達成の明確なメドが立つ前に日銀が金利上昇容認に転じて、現状の政策を転換させることだと思う。これは、日米金利差縮小につながり円高要因となる。その時点がドル高・円安のいったんの到達点になる可能性がある。日銀の信認が失われることは、アベノミクスへの信頼を損なうことになる。ただ、日銀は物価が多少上がっても国内景気が温まらないのに利上げに動くことはないと思う。もし日銀が金融引き締めに転じることがあるとしても、それは次の総裁の仕事になるのではないか。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(かんだ・たくや)
外為どっとコム総合研究所、取締役、調査部長。1987年福岡大学法学部卒業。第一証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)を経て、1991年メイタン・トラディション入社。インターバンク市場での為替・資金・デリバティブなどの取引業務を担当し、国際金融市場に対する造詣を深める。2009年7月、同研究所入社。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)