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【特集】トーセイ Research Memo(9):2016年11月期の利益予想及び期末配当予想は上方修正された

トーセイ <日足> 「株探」多機能チャートより

■決算動向

(6) トーセイ<8923>の2016年11月期業績予想

既に上期で期初の利益予想を超過しており(営業利益で1.1億円、税引前利益で7.3億円、親会社の所有者に帰属する当期利益で4.3億円)、第2四半期決算発表と同時に通期会社業績予想は修正された。

修正後の連結業績予想は、売上高535億円(前期比24.5%増)、営業利益90.0億円(同30.6%増)、税引前利益80.2億円(同32.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益52.6億円(同27.3%増)。期初予想からは、売上高が16.8億円下方修正された一方、営業利益は14.3億円、税引前利益は15.1億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は9.6億円、それぞれ上方修正された。前期にあったマイナー出資ファンドからの売却配当約7億円のはく落や、南青山案件など大型物件売却に伴う販売経費増加等による販管費の大幅増を跳ね返し、前期比大幅増益となる見込み。

業績予想の修正に伴い期末の1株当たり配当金予想は4円増額修正され22円となった(同社は中間配当を実施していない)。前期からは6円の増配予想となる。

利益予想の上方修正の主因は、1)「T'S BRIGHTIA南青山」の開発利益が想定を5億円程度上振れた(理由は先述のとおり)、2)上期の流動化物件の売却価格が想定以上となった、3)不動産ファンド・コンサルティング事業におけるディスポジションフィー、仲介手数料の想定が保守的過ぎた、4)期初予想にはアーバンホームの新規連結が織り込まれていなかった(アーバンホームの事業規模は、売上高約15億円)など。

売上高の下方修正の主因は、1)来期業績を見据え、流動化物件の販売時期を一部先送りした、2)戸建分譲の販売を保守的に見積もったことによる。

販管費(その他収益、その他費用を含む)の予想は73.7億円(同46.9%増)と期初予想から0.4億円増額修正された。前期比で大幅増を見込むのは、1)物件販売経費の増加、2)業容拡大に向けた人員増(2015年11月期末301人→2016年5月末349人)やベースアップによる人件費増。

修正会社業績予想に対する上期の進捗率は、売上高57.2%、営業利益85.3%、税引前利益90.2%、親会社の所有者に帰属する当期利益90.1%。売上高に比べ利益予想の進捗率が非常に高いのは、下期にトーセイ・リートへの物件売却を100億円程度見込んでいるが、ブリッジ案件のため利益率が低いことによる。

下期も積極仕入れを継続する方針で、仕入高の目標700億円(想定売上高ベース)は達成可能だろう。なお、700億円の内訳は、開発用地180億円、流動化物件520億円。

日銀のマイナス金利導入を受け、物件取得競争は一段と熾烈だが、同社が主に取り扱う10億円前後の物件は流動性が高く、入手情報量は月約1,000件と豊富で取得機会は充分にある。競合の少ない低稼働物件の取得や、ノウハウが蓄積されてきたM&Aの手法の活用により比較的安い価格での取得を引続き目指す。

以下、主要セグメントの見通しについて説明する。

a)不動産流動化事業
セグメント業績予想は、売上高293億円(前期比12.8%増)、営業利益40.5億円(同2.9%減)。期初予想から売上高は物件売却の一部先送りにより28.3億円下方修正されたが、物件売却価格が想定を上回って推移しているため、営業利益は5.8億円上方修正された。

売上総利益率の予想は期初予想の14.6%から18.0%(前期比2.0pt減)に上方修正された。ただし、上期の28.1%から下期は6.8%に急低下見込み。これは下期の売上高予想138億円のうち100億円程度をトーセイ・リートへのブリッジ案件と想定しているため。そのうちの1物件として、「西台NCビル」(板橋区)を6月に売買契約を締結しており、8月末に引渡予定。売却予定価格は14.8億円、売却キャップレートは6.0%。

b)不動産開発事業
セグメント業績予想は、売上高134億円(前期比2.0倍)、営業利益36.1億円(同6.8倍)。期初予想から売上高は6.8億円、営業利益は6.5億円、それぞれ上方修正された。下期は1棟ものの売却予定はなく、戸建分譲の販売のみとなる。戸建分譲は期初では123戸の引渡しを計画していたが、下振れしそうな状況。しかし、アーバンホームの新規連結が期初予想には織り込まれていなかったため、売上高は小幅上方修正された。営業利益が上方修正された主因は、先述のとおり「T'S BRIGHTIA南青山」にかかる費用が想定を下回ったこと。

c)不動産賃貸事業
セグメント業績予想は、売上高52.9億円(前期比24.3%増)、営業利益24.7億円(同37.5%増)。期初予想から売上高、営業利益ともに、それぞれ1.4億円上方修正された。物件の仕入れや、バリューアップによるNOI改善が順調に進捗していることによる。

d)不動産ファンド・コンサルティング事業
セグメント業績予想は、売上高20.5億円(前期比15.9%減)、営業利益7.1億円(同51.2%減)。前期のファンドへのマイナー出資にかかる売却配当7.2億円のはく落により大幅減益見込み。ただし、期初予想からは売上高は4.8億円、営業利益は2.1億円の上方修正。上期にAUMが想定以上に積み上がったことによるAMフィーの上振れや、上期に少なかった物件売却が下期には進展するとみられるのに対し期初予想ではディスポジションフィー、仲介手数料を保守的にみていたことによる。

(7) 2017年11月期業績の見通し

2016年11月期業績は不動産開発事業がけん引することになる見込みだが、2017年11月期業績は不動産流動化事業がけん引することになろう。バリューアップが進み、含み益のある流動化物件の棚卸資産は潤沢であり、不動産投資市場は引続き活況のため、営業利益100億円は難しくないだろう。不動産開発事業では「T'S BRIGHTIA南青山」のような大型高採算の1棟ものの開発案件の竣工予定はない。ただし、2015年11月期には分譲マンションの販売がなかったが、現在、世田谷区下馬で89戸の物件の開発を計画中であり、期末に一部引渡しになる可能性があろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 堀部 吉胤)

《HN》

 提供:フィスコ

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