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【特集】アキテクツSJ Research Memo(4):「主体的直接関与」により持続的成長を目指す

アーキテクツ <日足> 「株探」多機能チャートより

■経営戦略

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>の売上高は、2016年3月期に2期連続減少し、営業損失に転落した。ASJアカデミー会員数は、コンスタントに新規会員を獲得することで増加の一途をたどっている。問題の原因は、スタジオのパワー不足にある。加盟建設会社は、公共工事の需要が増加すると、経営資源をそちらに振り向け、同社が関わる注文住宅の取り扱いがおろそかになる。アカデミー会員のフォローが不十分になり、プランニングコースや設計契約、工事請負契約へ進展させる歩留まりが低下する。また、会員に対するスタジオの営業による積極的な働きかけがないと、プランニングコースから設計契約までの期間が長期化してしまう。

同社は、従来の「間接関与」に加え、「主体的直接関与」の仕組みを確立するアクションを取った。従来は、フィールド内でプレーする加盟建設会社と建築家を側面支援するスーパーバイザーにとどまった。市場環境の変化に俊敏に対応し、成果を上げるための直接的な活動ができないことが、予算の管理・実行を困難にしていた。

その一環として、Web入会による新規会員を対象に営業本部を立ち上げた。ハウスメーカー出身などの本部営業員が、同社の積算ソフトなどのリソースを駆使して営業を行う。競合先の競争要因の知見を得て、分析することで、適切な対応策を取ることが可能になった。今年度に入って、Web会員の月間新規入会数は4月が59名、5月が151名、6月は200名に達しそうなペースで増加している。従来の方式は、スタジオ主催によるイベントを開催して、新規会員を獲得する手法をとっている。仮に、Web会員の入会者が、年間3,000人に増加するようであれば、約300回のイベントを打ったに等しい結果になる。入会者に対して、コールセンターからコンタクトし、フォローアップを行う。

(1)契約工務店に対する2つの制度

加盟建設会社・工務店に対し、従来からの「ASJスタジオ運営契約」とは別に、「ASJ登録工務店契約」という制度を設けた。加盟建設会社・工務店は一般に施工能力に優れるが、営業が得意ではない。従来の間接関与方式は、スタジオ主催のイベントにより会員を獲得し、スタジオ主導でプランニングコース、設計契約、工事請負契約への流れをつくる。一方同社が主体的に直接関与する方式は、Web会員の獲得からプランニングコースを経て、設計契約まで営業を行う。工事請負契約は、施主と同社が選定する登録建設会社とで締結する。

「ASJスタジオ運営契約」と「ASJ登録工務店契約」は、月額ロイヤリティ会費がいずれも10万円である。同社がWeb会員等を紹介する「ASJ登録工務店」は、イベント開催などの営業活動は不要で、スタジオを設ける必要もない。これは自前のスタジオや営業員を抱えるキャパシティのない工務店に向いている。従来のASJスタジオ運営契約の工務店が負担する契約金300万円も不要になる。ただし、本部が営業を行うため、登録工務店にとって営業費やスタジオ運営費が不要な分、本部に支払う受注ロイヤリティがスタジオ運営契約の3%に比べ高くなる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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