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【材料】【FISCOソーシャルレポーター】個人投資家加賀田浩子氏:配当狙いの銭失い


 


以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家加賀田浩子氏が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2016年3月13日に執筆

3月末が近づくと配当狙いという投資スタイルがもてはやされる。この投資スタイル、実は機関投資家はやらない。個人専門の投資スタイルである。本来、機動性に欠く機関投資家の裏道は収益の源泉である。しかし、この配当狙いだけは分が悪い。理由の1つが税制の問題である。例えば5%の配当利回りの株を前日引値で買ったとしよう。これで配当5%は確保できる。しかし、翌日何もなければ5%沈んで株価は寄る。当たり前だ。だから高配当を狙った投資はそもそも意味がない。更に、貰える5%は税引き前だから実質は4%、しかし配当落ちの株価は▲5%である。必ず1%負けるというのが配当狙いの投資戦略なのである。2つ目の理由は、配当落ち当日の寄り板にある。東証一部のど真ん中銘柄のように流動性の高い銘柄であれば、▲5%分の売り物を寄り板でガッチリ受け止めて寄る可能性が高い。しかし、中小型株はそうは行かない。指値の薄い状況からオーバーシュートし、想定以上の下落が、下落トレンドのスタ?ト地点となり得ることもある。かく言う私も何度か高配当銘柄をこの時期に投資したことがあるが、5%貰っても意地悪な市場は▲5%で許してはくれない。▲7%~▲10%沈むという有様が何回も続くと、もうやってられない。いつしかこの時期にポジションを持つのはやめた。我慢して保有していれば5%銘柄がその後で虎の子に変身したことがあるのも分かってはいるが、それがその後の相場から見てベストディールとは言えないことも分かっている(相対的なパフォーマンスで)。

そもそも何故、高配当銘柄への投資戦略などが存在するのだろうか?これは日本市場の特徴で、四半期決算毎に配当を出すような銘柄ばかりだったら、配当の魅力は1/4に低下する。更に、決算期がこれほど3月末に集中しなければこのような特別な戦略は存在しない。もし、全市場銘柄の1/12が1月~12月決算にバラけていたら、日経平均先物(6月限)が110円も安くはならないだろう。

そして、ここが一番の肝だが、この低金利時代に5%はかなり高金利だ。それにも拘らず配当利回り5%銘柄は先週末時点で15銘柄存在する(全市場)。何故これらの銘柄は放置されているのだろうか?それは、配当収入を上回るリスクがある(と思ってる)からに過ぎないと考える。理由としてまず第一に長期的にこの配当を維持できないだろう、次に短期的に見ても配当落ち株価の逆襲が怖いし、最後に5%を含んだ株価パフォーマンスがそれほど大きくないだろうといった思惑の集合体で株価が形成されているのだと考えられる。

また、初心者向けの謳い文句として好まれるということもあろう。じっと持ってれば5%が稼げますよ、安いところで買って高いところで売るなど専門的なスキルは不要ですよ(?)という間違ったフレーズが何十年も蔓延るのも如何なものかと思う(・・・と言っても来週くらいの経済誌には「高配当特集」が組まれるだろうけど)。リスクリターンを理解できないような初心者を大量生産するのは市場にとって悪害でしかない。「貯蓄から投資へ」。このフレーズも罪が重い。政府がこの言葉を採用したのは小泉政権時代。しかし、21世紀に入ってから出てきたものではなく、戦後投信販売が再開された時の証券業界が生み出したキャッチフレーズだ。そこから何十年経っても貯蓄から投資は進んでいるとは決して言えない。タコ配投信がベストファンド賞になるという年もあった。

さて、もう何日か経つと高配当銘柄に目が行く時期がやってくる。配当落ち分を即日吸収してくる銘柄も確かにある。しかし、いっそのこと配当や株主優待は度外視して市場と向き合いましょう。先週末のSQ(特別精算指数)で「上に抜けた」ことは間違いないのだから。優待が欲しければ、ふるさと納税に目を向けては如何ですか?その方がよっぽど公の為になりますし、米10kgくらいなら何もリスクを背負って株を買わなくてもいいんです。


以上

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執筆者名:加賀田浩子

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 提供:フィスコ

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