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【経済】原油安は日本経済にとって最高の恩恵


サウジアラビアを中心とした石油輸出国機構(OPEC)が原油の減産を見送ったことから原油安がさらに加速し、原油価格(WTI)は1バレル35ドル台まで下落した。
 この原油価格の下落を受けて世界の金融市場にリスクオフムードが広がり、日本の株式市場も大きく下落している。産油国や資源国の通貨等を売却するのは自然な流れだが、原油と関係ない株式まで売られるのは、原油等の商品市場で損失が出たファンドなどがその損失を埋めるために利益の乗っている株式を売却するなどしているためだ。また、米国のシェール開発会社等の資源開発関連の企業が発行するハイイールド債の価格が大きく下落するなどの連鎖行動が生じている。
 しかし、日本は世界で最も原油安の恩恵を受ける国である。日本は化石燃料のほぼ100%を輸入に頼っており、原油への支払いは日本国民全員に課されている「原油税」のようなものだ。そして、1バレル110ドル以上もしていた原油価格が35ドルになるということは原油税が約7割も安くなるということである。産油国への支払いが7割も安くなると、原油安による日本経済へのプラス効果は年間10兆円レベルに達するとみられる(内閣府は50ドル台の時に7兆円と試算)。
 これは現在議論されている消費税の軽減税率の適用範囲をどうこうするというようなちっぽけな話ではない(そもそも軽減税率の制度自体が国民・経済に寄与しない天下の愚策と思われる)。
 これほど劇的に原油が安くなったのは、リーマン・ショック時を除くと、1985~1986年しかない。この時の原因も奇しくもサウジアラビアの増産だった。そして、この時の原油安は日本の景気に大きな恩恵を与え、その後のバブル景気を作り出す要因の一つとなった。
 原油安は各種の石油製品等の価格に反映されるまでタイムラグがあるが、日本経済を確実に押し上げる効果がある。日本は再来年に再度の消費税引き上げが予定されているが、原油安の効果はそのマイナス効果を大きく上回る。2度にわたる消費増税によって日本経済は完全に失速する可能性もあったが、原油安はまさに神風と言ってよい。
 原油安は産油国や資源開発会社にとっては逆風だが、米国を含む先進国の消費の底上げにもなるため、世界経済全体にとってもマイナスとはいえない。原油安の本質は産油国・資源国から原油消費国への富の移転だ。
 金融市場も一時的には混乱するかもしれないが、上述の無関係な市場における連鎖的なリスクオフは要するに需給の問題で、ファンダメンタルズに基づくものではない。
 原油安がもたらす日本経済への恩恵をよく考慮に入れるべきだ。日本企業にとっても、円安、原油安、自由市場(TPP・ETF等)、法人税減税、規制緩和、安定的な電力供給等々と好条件が整い、「日本企業の6重苦」と言われてきた問題も全て解消しつつある。
《YU》

 提供:フィスコ

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