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【特集】千原靖弘【中国危機!日本株の行方】相場観特集_04 /上海市場の大幅調整、試行錯誤の株価対策

内藤証券中国部・情報統括課長 千原 靖弘氏

 上海総合指数は6月12日に年初来高値を付けてから、3カ月近くにわたって調整が続いている。8月に入ると中国の景況感悪化に加え、米国の利上げやギリシャ問題をめぐる警戒感も高まり、世界的に株式や商品価格が大きく調整。8月24日に上海総合指数は前日比で8.5%安となり、翌25日も7.6%安に沈んだ。

 中国政府による株価対策が注目されるが、舵取りが難航している。7月上旬までは少数の大型株を買い支えのターゲットとしていたが、投資家心理の改善に至らなかった。中国の証券会社では店頭に大きな電光掲示板が置かれ、上昇銘柄が赤色、下落銘柄が緑色で表示されるが、少数の大型株を買うだけでは、緑色ばかり目立ち、視覚的にマイナスだからだ。

 そこで7月9日は買い支えの対象が大多数の中小型株に変更され、大型株は放置された。大型株が下げたため、上海総合指数は大幅安で寄り付いたものの、大多数の中小型株が上昇したため、電光掲示板は真っ赤に染まり、投資家心理が改善。後場からは大型株も上げに転じ、前日比5.8%高で引けた。

 ただ、中小型株の買い支えも順風満帆ではなかった。上海総合指数の4000ポイント付近で戻り売りが出やすく、その背景には経験の浅い投資家を中心とした株離れ傾向がある。売買代金は8月に入ると1兆元を割る日が多く、6月上旬のピーク時に比べ2分の1から3分の1に落ち込んでいる。個人投資家の売買が8割以上という世界的に特異な市場なだけに、その対策も手探り状態であり、今後も試行錯誤が続くだろう。

 個人投資家を株式市場に呼び戻し、株価を本格的に回復させるには、大きな政策が必要だろう。例えば、投機的として禁じられていたデイトレードの復活が考えられる。そもそも中国本土の個人投資家が短期売買を好むのは、長期投資をリスクと見なしているからであり、株価の大きな変動が続く状況下では、より一層そうした考えが強まる。デイトレ復活は投機性への懸念もあるが、投資家に安心感を与えることにもつながろう。

 日本人投資家にとって気になる中国の景況感だが、8月のCFLP製造業PMIは6カ月ぶりに50を割り込み、3年ぶりの低水準となった。欧米や日本の株式市場は、中国悲観論の強まりや米国の利上げ見通しを背景に、一定の調整が予想される。一方、上海市場は景気対策期待や政府の買い支えを背景に、限定的な調整にとどまる可能性もあるが、不安定な相場が続くだろう。

<プロフィール>
中国株情報の発信に10年あまり携わる。大学院修了後、上海市の復旦大学に2年間留学。ニュース配信会社の駐在員として広東省広州市に1年間赴任。中国の現地事情や社会・文化にも詳しい。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)   【中国危機!日本株の行方】特集より

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