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【市況】明日の株式相場に向けて=「エネルギー関連」に怒涛の資金流入

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(4日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比321円高の3万9773円と反発。3月下旬に4万円台固めに入ったと思いきや突風に煽られてバランスを崩し、3万9000円近辺まで急降下、その後は再び真空地帯を駆け上がる荒い値動きが続いている。きょうは先物主導で切り返したが、取引終盤にブレーキがかかった。日経平均は一体どこに向かっているのか。一連の値動きが高値波乱とすれば、きょうの戻り足を素直に信用してはいけないことになる。しかし、ここで日々の上げ下げに気を揉んでも仕方がない。「何事も行き着くところに落ち着くものである」とは『ガルガンチュア物語』の著者として名を馳せたラブレーの言葉。敢えて鈍感になることも大切。また、森全体がどんなにざわめいても強い株は買われる。今のプライム市場はそれが当てはまる地合いだ。

 きょうはソシオネクスト<6526>が咆哮した。ストップ高に張り付き、大引け買い物を残す急騰パフォーマンスを演じ市場関係者の耳目を驚かせた。SoC(システム・オン・チップ)をファブレス形態で供給、半導体設計大手として国内ではほぼ無双状態。個別のチップを組み合わせて一つの半導体チップを完成させるという「チップレット集積」は半導体の高性能化における必須技術とみられ、これが同社に独占的な活躍の舞台を提供する可能性がある。もっとも、きょうは半導体関連全般が有卦に入った状態ではなかった。「足もとで物色の流れに変化が生じている。目先は世界的なインフレ気配でエネルギー周辺株に投資マネーの視線が移った」(ネット証券アナリスト)と指摘する声も出ていた。

 ここにきて、ひと際コモディティ価格の高騰が目立つ。原油市況や金価格の高騰はもとより銀や銅、アルミ価格も揃って急上昇しており、言うに及ばずインフレの匂いが強烈に漂う。特に原油市況については、イスラエルとイランの対立が先鋭化するなか地政学リスクが強く意識され、「資源・エネルギー」という範疇で投資マネーを誘引している。直近の電力株高は政治的な背景、いわゆる岸田政権の原子力政策に対する思惑が大きいのだが、今の相場の地合いにマッチしているからこそ人気化しているともいえる。

 そして次に来るワードとして「水素」に着目。水素はクリーンエネルギーの代表で燃焼時にCO2を排出しない特性を有することで、脱炭素戦略では重要なポジションを担う。製造はもちろんのこと貯蔵や運搬にも多くの企業が携わる。更に自動車業界や鉄鋼業界向けなどをはじめ利用する側の産業エリアも広範にわたり、ひとつの経済圏としてみた場合、想像以上に裾野が広いテーマである。 原子力と並び水素を前面に押し出した政府のエネルギー政策は、株式市場でもインパクトのある投資テーマとして中期的に脚光を浴びやすい。 

 そうしたなか、直近では、政府が原子力を活用した水素製造の実証を2028年にも始めるとの報道がなされた。水素を次世代原子炉で製造する技術にメドがついたということを意味しており、関連企業はにわかに色めき立つことになる。きょうは産業用ガスの専門商社で水素事業への注力姿勢を明示している岩谷産業<8088>がマドを開けて買われ上場来高値を更新した。また、株価低位のユニチカ<3103>も急騰、50円高はストップ高となる218円でカイ気配に張り付いたが、これも水素絡み。ハイエントロピー合金を合成する技術を開発したことを発表し材料視されたものだが、同技術は水素利用を促進する高性能な水素生成電極や燃料電池用電極触媒への応用で注目されている。

 そして、ここで目を向けてみたいのが三菱商事系の総合エンジニアリング企業である千代田化工建設<6366>だ。水素ビジネスで先行し、とりわけ同社独自の貯蔵・運搬技術に注目度が高い。また、トヨタ自動車<7203>とは水素電解システムの開発で協業体制にあり、今後折に触れて話題となりそうだ。業績も23年3月期を境に急回復トレンドに突入している。このほか、水素ステーション向け圧力計測器をほぼ独占供給し、トヨタの燃料電池車ミライ向けに圧力センサー納入実績を持つ長野計器<7715>も要マークといえる。

 あすのスケジュールでは、2月の家計調査、3月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券入札が予定されている。午後取引時間中には2月の景気動向指数(速報値)が発表される。海外では、2月の豪貿易収支、2月のユーロ圏小売売上高のほか、3月の米雇用統計にマーケットの関心が高い。このほか米国では2月の消費者信用残高も開示される。なお、台湾、中国市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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