貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6501 日立製作所

東証P
14,165円
前日比
-30
-0.21%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
21.9 2.30 4.48
時価総額 131,333億円
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デリバティブを奏でる男たち【62】 ヴァレンベリ家のEQT(後編)


◆華麗なる一族とのつながり

 今回は北欧最大のプライベート・エクイティ(PE)ファンド、EQTを紹介しています。2023年6月末現在で運用資産2240億ユーロ(1ユーロ=1.0908ドル換算で約2243億ドル)を誇る同社は、スウェーデンの産業界や外交に圧倒的な影響力を持っているヴァレンベリ家の財団資産管理会社FAM ABが出資するインベストールABによって1994年に創設されました。

 EQT創設の際、米投資会社AEAインベスターズも出資している点は前回に触れた通りです。このAEAインベスターズは、アメリカのミドルマーケット、つまり中小企業を対象とするPE投資会社であり、製造、サービス、流通、特殊化学品、消費者向け製品およびビジネスサービスといった業種を主なターゲットとして、LBO(Leveraged Buyout、多額の借金つまりレバレッジを利用した企業買収)、成長資本、劣後債や優先株といったメザニン資本などへの投資に焦点を当てています。
 
 こちらもヴァレンベリ家と同様に、日本ではあまり馴染みのない会社ですが、元は世界最大の米財閥ロックフェラー家の上級ファイナンシャル・アドバイザーであったジョセフ・リチャードソン・ディルワース(1916-1997)の発案により、ロックフェラー家、米メロン家、米ハリマン家と英投資銀行S.G.ウォーバーグ(1995年にスイス銀行に買収され、現在はUBSグループ<UBS>の一部)が設立したアメリカン・ヨーロピアン・アソシエイツという投資会社でした。かような華麗なる一族とのつながりによって創設されたのがEQTです。
 
◆EQTの歩み

 EQTは現在、AEAインベスターズと同じくベンチャー、ミドルマーケット、株式を含む成長資本への投資に加え、社会インフラや不動産を含む実物資産を主なターゲットとしています。1995年に最初のファンドが立ち上げられた際は、スウェーデンとその近隣諸国の企業を投資対象としていました。しかし、2019年にナスダック・ストックホルムに上場して以降、2021年にはアメリカ・フィラデルフィアを拠点とするエクセター・プロパティー・グループを買収し、子会社EQTエクセターとしました。また、2022年にはアジアにおける同業大手のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアも買収。BPEA EQT Asiaとして投資対象地域を拡大させています。日本法人のEQTパートナーズジャパンは、2021年1月に設立されており、開設とともに投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)との連携を発表しました。JIPは本コラムの第61回において、KKR:コールバーグ・クラビス・ロバーツ<KKR>が日立製作所 <6501> [東証P]から買収した日立国際電気(2017年に上場廃止)の売却先として紹介しています。

▼コールバーグのKKR(前編)―デリバティブを奏でる男たち【61】
https://fu.minkabu.jp/column/2038

▼コールバーグのKKR(後編)―デリバティブを奏でる男たち【61】
https://fu.minkabu.jp/column/2046

 このEQT では2017年以降、クリスチャン・シンディングがCEO(最高経営責任者)を務めています。1972年ノルウェーのオスロで生まれたシンディングは、1994年に米バージニア大学で商学士号を取得しました。大学卒業後はミドルマーケットの米大手投資会社ボウルズ・ホロウェル・コナー(ファースト・ユニオンが1998年に合併。ファースト・ユニオンはワコビアと合併した後、2008年にウェルズ・ファーゴ<WFC>が救済合併)に就職し、財務アナリストを担当します。1996年にAEAインベスターズへ転職。1998年からEQTで働いています。

 シンディングは、その成功と少年のような容姿により、ライバルたちから「童顔の暗殺者」というレッテルを貼られている、などと報じられていますが、必ずしも成功案件ばかりではありません。例えば、投資先の米ガス貯蔵会社ペレグリン・ミッドストリームは2016年、石油とガスの価格下落が原因で経営破綻に至りました。また、スカンジナビア最大の玩具メーカーでトイザらスのフランチャイズを運営していたトップ・トイも投資先でしたが、2018年に破産を宣告しています。

◆EQTの強みと課題

 EQTの強みは何と言っても、ヴァレンベリ家をバックグラウンドとする広範なネットワークでしょう。PE投資会社ですから、最終的には買収した企業を上場させたり、他社に売却することになりますが、その前に買収した企業の価値を高める必要があります。

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◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):
証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。




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