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6400 不二精機

東証S
312円
前日比
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-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
11.2 0.80 2.24 888
時価総額 28.3億円
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決算発表予定日

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不二精機 Research Memo(3):精密金型事業と射出成形事業の2事業を展開(2)


■会社概要

2. 事業内容
不二精機<6400>は、現在は射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業の2事業で事業展開している。射出成形用精密金型及び成形システム事業では高度な金型設計ノウハウと加工技術を有し、1)ハイサイクル、2)多数個取り、3)不良率・バラツキの極小化、4)長寿命を特徴として高付加価値な精密金型製造を行っている。具体的には精密・高品質が求められる透析装置であるダイアライザーや注射器、製品コストの削減も求められる食品用キャップ・容器等がある。また精密成形品その他事業では、精密金型の競争力を活用し、参入障壁の高い自動車関連部品分野に絞り事業展開している。

2022年12月期における売上構成比は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が38.6%、精密成形品その他事業が61.4%となっている。また営業利益構成比(セグメント間取引消去前)では射出成形用精密金型及び成形システム事業が54.4%、精密成形品その他事業が45.6%となっている。

(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、「精密プラスチック金型の不二精機」を前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、不良率・バラツキの極小化、長寿命な精密成形用金型を強みに事業を展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。CDは1979年にソニーグループ<6758>とRoyal Philips<PHG>が共同開発を進め、1982年に生産が開始された。同社は当初よりCDケース用精密金型の開発に携わり、1995年には量産タイプを開発し、周辺装置と組み合わせ成形システムとして輸出販売も開始して事業を拡大した。「ディスクケース」成形ではミクロン精度の金型が必要で、低コスト化の要求もあり、ハイサイクル、多数個取り技術、長寿命の金型が必須で、同社の精密金型システムの採用が広がった。しかし、CDケース用精密金型は、2000年12月に同社売上高の50%を占めていたが、iPod、スマートフォン、さらにはネット配信の普及により激減した。CDケースは今でも古い金型で製造されており、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の鎮静化でライブ配信に伴う新譜の増加で多少の需要は発生しているものの、情報関連向け精密金型市場は成熟市場で伸びない状況にある。

同社は、CDケース用で培った金型技術を生かし、1997年9月に現在の主力の1つである注射器用精密金型を開発した。その後、ダイアライザー、シャーレ、点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。2022年12月期において、医療用・食品容器用精密金型の売上高はダイアライザー向け等を中心に1,524百万円、セグメント売上高に対する構成比で50.4%となった。なお、同分野では収益性が高い医薬用が全体の90%弱を占めた。一方、2002年12月期に6割を占めた光学・家電関連は2022年12月期ではセグメント売上高に対する構成比で6%程度の水準となった。

(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したことに始まる。同年9月に中国上海、2002年3月には蘇州と、相次いで生産拠点を設けた。当初の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だったが、CDの衰退により蘇州工場を2014年に譲渡し全面撤退した。

一方で、非情報関連の長期的拡大を目指し、需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、本田技研工業<7267>系の日立Astemo(株)に2輪向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したのが始まりである。

2011年にはタイの大洪水で大損害を被ったが、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給し、日系自動車部品現地法人向け中心に、2輪向けに加え4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大した。現在は2輪向け49%、4輪向け44%、その他7 %となっている。製品内容はパワートレーン系が51%、ワイヤーハーネスのカバー等の非パワートレーン系が45%、そのほかが4 %となっている。

同事業の収益力が2019年12月期にかけて安定してきた背景には、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社(9月決算)の売上が順調に拡大したことが寄与している。なお、2020年12月期は、コロナ禍の影響により一時的に収益が落ち込んだが、2021年12月期は売上高1,252百万円となり、設立以来の最高額更新となった。ただし2022年12月期は売上高1,479百万円(前期比18.1%増)と円安効果で増収になったが、利益面では半導体不足による自動車生産台数の伸び悩み、労務関連法案改正の影響で従業員が316名(臨時職員合計比110名増)と大幅増なども影響し、経常利益は198百万円(前期比21.1%減)と停滞を余儀なくされた。

3. 同社事業を取り巻く環境
同社が属する金型製造業界は、経済産業省「令和3年経済センサス」によると2020年時点で業界全体の出荷額が1兆3,602億円※1である。同業界で最大の出荷規模を誇るのがプレス用金型で、同「工業統計調査」(2019年実績)では全体の1兆3,825億円に対し5,109億円※2(構成比37.6%)、同社が製造しているプラスチック用金型の出荷額は4,108億円※2(同30.2%)と、用途別では2番目に大きい。しかし金型業界全体の推移を見ると、バブル期の1991年の製造品出荷額1兆9,575億円をピークに徐々に業界全体が低迷した。リーマンショック後の2011年には1兆1,162億円まで落ち込み、現状は1991年の出荷額の78.9%水準となった。この間、金型製造事業所も減少を続けており、ピーク時は1990年13,115事業所あったのが、2020年には4,327事業所と33.0%の水準となった。この背景には主力産業の国内生産の低迷、またグローバル化による海外での金型生産並びに汎用製品での海外金型企業への調達増などが影響している。

※1 金型製造業界全体の出荷額は、1人以上の事業所から算出。
※2 プレス用金型、プラスチック用金型は4人以上の事業所の数値。


同社の射出成形用精密金型及び成形システム事業も、世界シェアが高いCDケース用射出成形用精密金型事業が縮小し、精密金型において医療機器の開発・製造・販売など、他社の参入が難しい分野に活路を見出している。また精密金型技術を生かした精密成形品その他事業では、金型のメンテナンスも含め東南アジア中心に拡大する自動車産業向けに、プラスチック精密成形品の展開に注力し事業拡大を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

《YI》

 提供:フィスコ

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