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6310 井関農機

東証P
1,035円
前日比
+10
+0.98%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
58.5 0.34 2.90 8.28
時価総額 238億円
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決算発表予定日

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井関農 Research Memo(5):2025年に創立100年を迎える農業機械総合専業メーカー


■会社概要

3. 井関農機<6310>の強み
1926年の創立以来、同社の長いビジネスの歴史のなかで培われてきた強みは3つに大別することができる。以下、それぞれの強みに関して詳述していくが、重要な点は、それぞれの強みが作用しあい補強しあうという好循環を生んでいる点にあると弊社は考えている。

(1) 技術力
まず同社の強みとして挙げることができるのは、1926年の創立以来「業界初」や「世界初」といった製品を市場に多く投入してきた高い技術力だ。1926年の全自動籾すり機を皮切りに、1966年には世界初の自脱型コンバイン、1988年には同社初の乗用芝刈機、2009年には業界最速の自脱型コンバイン(7条刈り)など機能面で業界をリードする製品を数多く開発してきた。また、開発した技術を競争優位として維持するために、同社は知的財産戦略の一貫として特許の取得を積極的に行っている。特許の分野別公開数・登録数(2000年から2006年までは「農水産」、2007年からは「その他特殊機械」)は2000年以降、常に上位を獲得している(2000~2017年・2019年は1位、2018年・2020~2023年は2位)ほか、特許査定率でも2022年は全産業中3位となったものの、2004年以降全産業中2位以上を長期にわたって維持してきた(特許査定率は一貫して90%超。2021年は97.2%と非常に高い結果を残している)。

これらの高い技術力を実現することができるのは、同社の研究開発拠点、社内制度、営業体制が要因であると弊社は考えている。愛媛県にある研究開発拠点、茨城県の「夢ある農業総合研究所」で日々最新の研究を行っているのはもちろんのこと、市場ニーズに即して開発部署の社員がアイデアの発出を行う「発明提案活動」、ベテランの技術者から若手技術者への発明創造ノウハウの伝承を目的とした「発明創造活動」、研究開発の成果や発明情報を共有する「技術研究発表会」を積極的に行っている。これらにより、若手社員から斬新なアイデアが出てくると同時に暗黙知化しやすいノウハウを社内技術者間でしっかりと共有し、全体としてのイノベーション創出力の底上げにつなげている。特に暗黙知を社内で共有する「発明創造活動」の実施や社風は一朝一夕に競合他社が模倣できるものではなく、強力な競争優位になっていると弊社は考える。このような活動の成果として、近年では田植えと同時にリアルタイムセンシングを行い自動で施肥量を調節する可変施肥田植機や高度な直進・旋回アシスト機能を搭載した「さなえPRJ」シリーズを開発、市場に投入している。

また、農家のニーズに沿った技術開発を可能にしているのが、全国に張り巡らされた販売網だ。販売店の営業員が密に農家とコミュニケーションをとり現場のニーズを的確に把握、その情報を開発部門にしっかりと上げることにより、顧客に訴求力のある技術の開発が可能になっている。また、開発部門も直接市場調査を行い、現場のニーズを把握する努力をしていることも特徴として挙げることができる。

今後はICT関連の技術開発を積極的に行っていく考えだ。2025年に発明提案に占める先端技術関連の割合を60%に高めるべく(2021年度は39%、2022年度は56%)、社内での研修を実施するとともに、外部専門人材の採用も積極的に行っている。

(2) 営農提案・サポート力
同社は、長年にわたって農業に携わってきた経験を活かし、儲かる農業を実現する手助けを積極的に行っている。具体的には、「夢ある農業応援団」による低コスト農業に関する情報発信及び提案業務、JGAP認証取得のサポート、ホームページでの営農情報の発信などソフト面から農家の経営を支援している。また、2015年に設立した「夢ある農業総合研究所」では、先端営農技術とロボット技術やICTを活用したスマート農業の研究・実証・普及活動を実施しており、その成果を営農ソリューションポータルサイト「Amoni」にて情報発信している。

高い提案力・サポート力を実現している要因の1つも、全国に張り巡らされた販売網にあると弊社は考えている。地域に根ざした販売網が多いことで、顧客とのコミュニケーションを頻繁に取ることが可能になり、迅速なサポートや農業効率化のための提案を行うことが可能になっている。ハードの販売に加えて、ソフト面に注力することは非常に重要である。顧客との接点を拡大できるうえ、親身に農業経営を支援する姿勢は同社に対するファンを増やすことにつながるからだ。

(3) 連携によるイノベーション力
自社の研究開発拠点で新技術の開発に取り組むことはもちろんだが、それに加えて同社は行政・研究機関・大学・企業など外部のステークホルダーと連携し、研究開発活動を積極的に展開している。これにより、研究開発活動のスピードが高まるほか、自社になかった視点が加わり、画期的なイノベーションを生むことが可能になると弊社では考えている(一般的にオープンイノベーションの有効性は広く知られるところである)。

実際、同社は愛媛大学との連携を積極的に行っており、2010年には同学内に寄付講座である「植物工場設計工学」を開設した。その成果として2015年には業界初の「植物生育診断装置 PD6C」の商品化に成功している。今後もICT、AIなど最先端技術の分野で愛媛大学との連携を深めることを計画している。

また、近年は環境保全型スマート農業の実現という新たな目標を掲げ、外部との連携を積極的に推進している。2022年6月には、水稲用自動抑草ロボット「アイガモロボ」の開発・販売で業務提携しているスタートアップ企業、有機米デザイン(株)への出資を実施した。今後はベンチャー企業の持つノウハウを取り入れながら、イノベーション創出力をさらに高めていく考えであり、2023年6月にはベンチャー企業を対象にした10億円の出資枠の設定、同年7月には出資に関する迅速な意思決定を可能にするために審議機関として出資管理委員会を設置している。

同社の強みを考えるうえで重要なことはこれら3つの強みが互いに影響し、補強しあっていることだ。連携によるイノベーションにより、技術力が向上することは分かりやすいが、技術力が高くともニーズに沿った開発を行うことができなければ宝の持ち腐れである。営農提案・サポート活動を行うなかで的確に現場のニーズを吸い上げ、開発部門に情報をあげることにより、高い技術力をニーズに沿った形で活用することが可能になっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

《AS》

 提供:フィスコ

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