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4718 早稲田アカデミー

東証P
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業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
16.7 2.04 2.73 2.65
時価総額 278億円
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決算発表予定日

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早稲アカ Research Memo(7):新中期経営計画を発表、大学受験部と個別指導部門を強化し収益成長を目指す


■今後の見通し

2. 中期経営計画
早稲田アカデミー<4718>は2024年3月期からスタートする3ヶ年の新中期経営計画を発表した。業績目標として2026年3月期に売上高353.4億円、経常利益30.0億円を掲げ、増収増益の継続と利益率の向上を目指す。1校舎当たりの生徒数増加と費用統制に取り組むことで、経常利益率は2023年3月期の7.9%から2026年3月期に8.5%に引き上げ、ROEについても12%台を維持していく。

2024年3月期以降の2年間の年平均成長率で見ると、売上高は3.1%、経常利益は5.6%の安定成長を計画している。前述したとおり、直近3年間はコロナ禍で私国立中学への受験熱が高まったことが追い風となり小学部がけん引して、塾生数も年率6%の勢いで伸びてきたが、今後は巡航速度に落ち着き、景気の先行き不透明感が強いこともあって塾生数は年率2~3%増と堅実な伸びを前提とした。

企業目標として、「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを掲げ、成績向上や志望校合格といった本来の価値である「成績向上と志望校合格」と、本質的な価値となる「ワセ価値」を提供することで他社との差別化を図り、持続的な成長を実現していく考えだ。「ワセ価値」とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上や志望校への合格を実現するだけでなく、前向きな思考やチャレンジ精神、問題を発見し解決する力や困難を乗り越える力を育み、その後の豊かな人生を送る礎となる姿勢と能力を身に付けることにある。

市場環境の前提として、全国で深刻化している少子化の影響についてはほとんど受けないものと見ている。同社が展開している首都圏エリアにおける人口構造をみると、6歳から17歳まで人口が同水準となっているためだ。また、私国立中学への受験熱についても首都圏では今後も変わらないと見ており、難関校受験におけるシェア拡大により、今後も塾生数は安定して増加するものと見ている。

2023年3月期における早稲田アカデミー単体の売上構成比率を見ると、標準校舎(中高受験集団指導型)が86.6%と大半を占めており、大学受験部が3.0%、個別指導が8.4%とそれぞれ小さい。このため、同社は大学受験部と個別指導に伸びしろがあると見ており、今回の中期経営計画では標準校舎の着実な成長に加えて、両校舎の取り組みを強化することで収益基盤を拡大していく戦略となっている。中期経営計画における主な取り組みは以下のとおり。

a) 標準校舎の着実な成長
標準校舎については年間1校程度の新規開校ペースにとどめ、既存校の内部充実に取り組むことで1校当たりの塾生数増加を図っていく。このため、開校から長期間経過している校舎については積極的に移転リニューアルし、学習環境面での改善を進めていく。また、講師・事務スタッフの育成強化により授業サービスの品質向上に取り組むほか、ICTを活用した付加価値の高いサービスを拡充していくことで顧客満足度の向上を図り、塾生数の増加につなげていく。

b) 大学受験部の新領域開拓
大学受験部では2025年3月期より新サービスを開始することで、塾生数並びに売上高の一段の増加を目指している。新サービスの具体的な内容は年内には明らかとなる見通しだが、大学受験志望学生の対象を広げていくことで塾生数の拡大を図っていくものと思われる。今までは東大や早慶大など難関大学志望の学生をターゲットにしていたため、大学受験部の塾生数は2千人弱、売上高で9億円弱にとどまっていたが、1学年に1万人以上いる「卒塾生」へアプローチすることで塾生数を拡大していく余地はあると見ている。同社では2027年3月期で塾生数約4千人、売上高で約18億円と2倍に拡大していくことを目指している。

c) 個別指導部門の展開加速
個別指導部門では2023年3月現在、FC校も含めて66校を展開しているが、2027年3月期に100校体制まで拡大し、首都圏における難関校受験対策の個別指導としてNo.1の地位確立を目指す。今後はFC展開も含めて年間8~9校のペースで校舎を開設していくことになる。校舎も標準校舎の近隣に開設することで、従来からほかの個別指導塾と掛け持ちで通塾していた生徒を個別進学館で取り込み、シナジーを高めていく戦略だ。売上高は前期実績の約25億円から2027年3月期に約35億円と1.4倍増を目指す。

成長戦略は従来と変わりないが、大学受験部と個別指導部門については伸びしろがあると見て強化していく。大学受験部は2025年3月期より新たな授業サービスを開始し、2027年3月期売上高は2023年3月期に対して約2倍増を目指す。また、個別指導部門では個別進学館を2023年3月期末の66校(FC含む)から2027年3月期に100校体制に拡大し、首都圏における難関校受験対策トップの個別指導塾としての地位確立を目指す。また、教務力の向上に加えてICTを活用したサービスを拡充していくことで他社との差別化を図り、塾生数増加による持続的な収益成長を実現していく考えだ。

d) DX戦略で他社と圧倒的な差別化を図る
同社はコロナ禍以降、双方向Web授業や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで、顧客から高い評価を得て塾生数の拡大につなげてきた。このため、今回の中期経営計画においてもDX戦略を継続して推進していく。

具体的には、個々の塾生の成績データとほかの塾生や卒塾生のデータを比較分析することによって、これまで以上に的確な面談や進路指導を行えるように成績管理システムの高度化を図っていくほか、ICTの活用により運営業務や管理業務のさらなる効率化を図ることで、サービス品質向上や成績向上、志望校合格に向けて経営資源を投下できる環境を整備していく。また、同社が独自開発してきた各種システム(ERPシステム、プラットフォーム、成績管理システム等)について、将来的には外部へ提供することも視野に入れている。

e) 人材育成の強化
成長の源泉となる人材育成の具体的施策としては、内部リクルートの強化(非常勤職員から正社員への登用、卒塾生の非常勤職員としての採用等)、採用手法の改善(募集広告の効率向上、本社と校舎が一体となった採用手順の強化)に加えて、職員のエンゲージメント向上への取り組み(経営方針への理解促進、参画意識の向上、成長を実感できる人事制度設計)や多様な人材の採用と適正な配置、女性の活躍推進などに取り組んでいく方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SI》

 提供:フィスコ

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