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4596 窪田製薬HD

東証G
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窪田製薬HD Research Memo(4):「Kubota Glass」は提携戦略を推進。販売拡大を目指す(2)


■主要開発パイプラインの概要と進捗状況

(4) 販売状況と今後の販売・開発方針について
「Kubota Glass」の販売については、2022年6月に米国でソフトローンチによる販売を開始※したのに続き、日本でも同年8月よりAR機器として販売を開始した(販売価格は税込で77万円)。また、台湾では2022年7月に販売代理店契約を締結した大手眼科機器販売会社のEverLight Instrument Companyが販売時期の検討を進めている状況にある。

※眼科研究所及び眼科病院を運営するManhattan Vision Associates(MVA)で販売を開始したが(価格5,200米ドル)、現在は日本での供給を優先するため、米国での新規購入受付は一旦停止している。


2023年第2四半期までで約25百万円の販売実績となっており、数十台が販売されたものと見られる。発売から1年を経過して窪田製薬ホールディングス<4596>がまとめたデータによると、利用者は大人と子どもで半々の比率となっており、大人では40~60歳までのビジネスマンの購入者が比較的多かったようだ。近視抑制への関心度が高くなっていることが要因と考えられる。また、自身でまず使用して効果を確認したのちに、子どもに追加で購入するといったケースもあった。購入者からのアンケートも収集しており、「すぐに効果が出ない」といったマイナス評価が一部であったものの、ポジティブな評価も多く「近視の進行が止まった感じがする」といった声や、「目が楽になった」といった感想も複数あった。マイクロLEDにより一定時間光を網膜に照射することで網膜周辺部の血流が良くなり、目の疲れをとる効果につながっている可能性がある。

販売チャネルとしては直営店1店舗と自社ECサイトでの販売、並びに一部の眼科医院や眼鏡小売店を通じて販売しており、問い合わせや来店する顧客のうち約4割は外国籍の顧客となっているのも特徴である。国別では、中国、台湾、シンガポールなどアジア地域が多いが、欧米や中近東、アフリカなど幅広い地域から問い合わせが入っており、同社も商品案内パンフレットや商品紹介動画の英語版や中国語版を制作してこれらのニーズに対応した。

当初は半導体不足の問題もあり、注文から納品まで2~3ヶ月かかっていたが、直近では半導体不足も解消され注文から1カ月程度で納品できるまでになった。また、直営店では来店客への商品説明をしっかり行うことが重要との考えで、2023年8月より完全予約制とし、直近の来店客数は1日1人のペースとなっているもようだ(従前は4~5名/日程度)。

同社では今後の販売戦略として、アライアンス戦略によって販売チャネルを広げて売上を拡大していく戦略を打ち出している。2023年4月より、「メガネストアー」を関東中心に167店舗展開している(株)アイ・トピアと販売代理店契約を締結し、「メガネストアー」12店舗で販売を開始しており、既に受注実績も出始めている。また、同年8月には中国系の大手旅行代理店である(株)天旅と販売代理店契約を締結し、日本に観光で訪れる中国の富裕者層向けに「Kubota Glass」の商品案内を開始した。天旅では利用客(年間7~8千人程度)に対して日本の優れた商品を案内しており、その1つとして「Kubota Glass」も取り扱う。同社ではそのほかにも新規代理店の開拓を進めていくほか、インターネット広告等も強化し認知度を高めながら、販売数量の拡大につなげる考えだ。

また、同年8月には中国福建省三明市との日本経済貿易協力商談会において、「Kubota Glass」の販売に関連した基本合意書を締結したことを発表した。三明市は人口約280万人の都市で、福建省の医療健康モデル都市にも指定されており、2012年から医療改革を実施し、医療施設の充実や人材育成、医療保険制度の改善に取り組むなど中国の医療分野において先進的な取り組みを進めている都市の1つである。具体的にどういったことを三明市で進めていくのかについては、今後協議して決めることになるが、中国政府は2018年に各自治体の近視削減目標を定めた国家計画を策定しており、2030年に高校生までの近視発症割合を70%以下に抑えることを目標に掲げている。三明市において「Kubota Glass」を近視抑制施策にどのように活用していくのか、今後の動向が注目される。

そのほか、エンターテイメント分野など新たな市場での展開の可能性についても、検証を開始している。具体的には、2023年8月に「Kubota Glass」とマイクロソフト<MSFT>が販売する「HoloLens2」※1を組み合わせたビジネス検証について、(株)ロケットスタジオ※2と共同で実施していくことを発表した。「Kubota Glass」を着用したまま「HoloLens2」の装着が可能であり、両デバイスを組み合わせて新たなゲームコンテンツ等を開発することで、新規市場開拓の可能性を検証していく。

※1 現実世界と仮想世界を融合させた新しい体験を提供するMR(Mixed Reality)デバイスで2019年に発売された。
※2 家庭用ゲームソフトの開発を中心にパソコンや携帯機器を利用したゲームソフトやシステム開発業務を行っている。また、「HoloLens2」を活用した3Dコンテンツを開発し、様々な大学病院と医療現場の課題解決に向けた共同開発を実施している。


一方、海外での販売については医療機器としての認可を2022年に取得している米国や台湾については、状況が整い次第販売を行う予定だが、現状では日本での販売に集中するため販売開始時期は未定となっている。そのほかの国については当該国の規制なども考慮しつつ、早期販売が可能と考えられる日本での販売モデル(AR機器として販売)で展開することも検討している。地域的には、三明市との基本合意書を締結した中国での販売がいち早く進む可能性が高いと弊社では見ている。

開発面では、眼軸長や屈折率の変化等でさらに高い効果が得られるかどうか、被験者の属性などによって違いがあるのかなど様々な条件下で継続して小規模な臨床試験を行い、エビデンスを積み重ねていくほか、既存製品の改良も継続して取り組んでいる。日本では鹿児島園田眼科・形成外科にて2023年2月より7歳以上の小児を対象に「Kubota Glass」の使用感を評価する臨床試験を実施している。米国で実施された小児対象の評価試験では、ヒストリカルコントロール群との比較において、近視の進行及び眼軸長の伸展を抑制することが確認されており、日本人でも継続的に使用可能で同様の効果が得られるのか検証する。また、2023年9月には台湾の中国医薬大学新竹附設医院と前向き介入試験のための共同研究契約を締結した。近視の小児を対象に、低濃度アトロビン点眼薬0.01%投与群とクボタメガネ着用群のそれぞれの有効性と、併用療法との相乗効果の可能性を評価する。試験担当医のインシャン・チェン博士は近視の研究と治療における世界的なリーダーであり、今後医療機器としての販売を目指すうえで有効なエビデンスが得られるかどうか注目される。

製品改良としては、ユーザー評価も取り入れ、より消費者に受け入れられる製品に仕上げるべく、適宜改良を進めている。また、製造コストについても設計や部材、サプライチェーンの見直し(一部工程を欧州から東南アジアに移管等)、半導体のまとめ発注を行うことなどで低減に取り組んでいる。「Kubota Glass」発売後の四半期ベースの売上原価率を見ると、2022年3月期第3四半期の91.7%から2023年12月期第2四半期は34.0%と順調に低下しており、コスト改善効果が出ているものと考えられる。同社では今後、売上規模が大きく変わらない限り、売上原価率は30%台で推移すると見ているようだ。なお、将来的にはコンタクトレンズでの商品化も視野に入れており、知財戦略として関連特許も取得している※ 。

※2022年8月に米国で、「近視抑制のための電子コンタクトレンズの光学設計」「ソフトコンタクトレンズ内にフレキシブルプリント配線板を封入するための支持ピラー」の2件に関する特許を取得したことを発表した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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