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3914 JIG-SAW

東証G
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10.06 2.30
時価総額 259億円

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ジグソー Research Memo(5):IoT分野の本格的な取り組み内容が具体化、業績に大きく寄与する可能性


■業績動向

(1)過去の業績動向

ジグソー<3914>の過去の業績は2010年12月期からの業績が開示されているが、2013年12月期が売上高、経常利益ともに当面の業績の谷で、その前後で業績が大きく変動しているように見える。これは、同社が2012年12月までは、新規の受託開発を受注していたためだ。しかし、2013年12月以降は新規の受託開発の受注を中止したことで、月額課金案件の積み上げモデルであるシステムマネジメント事業の業績が純粋に反映されるようになったほか、「puzzle」を投入した効果が拡大要因として働いたことにより、業績は2014年12月期以降、拡大トレンドへ突入している。

(2)2015年12月期の業績概況と取り組みの状況

2015年12月期業績は、売上高657百万円(前期比29.9%増)、営業利益156百万円(同152.1%増)、当期純利益95百万円(同20.2%増)となり、売上高、営業利益とも過去最高を記録した。一方、会社計画(売上高688百万円、営業利益153百万円)対比では、おおむね計画どおりで着地した。

増収・増益の要因は、IoTデータコントロールサービス「IoT-A&A Service」の提供開始(2015年6月)や、「コンポーネント型自動チェックロボット:ABR」をリリース(同年7月)など、新しいサービスの提供を開始したことにより、既存案件が順調に積み上がったことに加えて、新規受注が拡大したことが要因。受注拡大による売上高の増加がダイレクトに利益増加につながるストック型のビジネスモデルであるため、営業利益は大幅に増加し、結果として営業利益率は前期の12.3%から23.8%へ大幅に上昇することとなった。

四半期別の動向を見ても、上場関連費用が圧迫要因として働いた第2四半期(4月?6月)を除き、IoTデータコントロールチェーンに対応した新たな機能やサービスのリリースに合わせ、第3四半期(7月?9月)から第4四半期(10月?12月)にかけて売上高、営業利益が拡大しており、同社のサービスが高度に自動化されたストック型のビジネスモデルであることを裏付ける結果となった。

2015年に入ってからの同社のIoT分野に関するリリースをまとめると、IoTデータコントロールチェーンに対応した新しい機能やサービスの提供を開始すると同時に、8月にはビジネスコンソーシアム「JIG-SAW Sales Alliance Program for D.U※」を組成し、IoTデータの自動データマネジメントの提供のための共同研究、業務提携などの動きを積極化させているほか、IoT?MVNO事業参入、IoT-LTEチップなど、収益に直結するミドルレイヤーの立上げにも注力している。

※Digital Universeの略。

○「JIG-SAW Sales Alliance Program for D.U」
同社が2015年8月にインターネット・インフラ・システム開発、モバイルデータ通信、ビッグデータ解析、セキュリティなど特定の領域に強みを持つ約50社の企業と連携し、各社の強みによるシナジーを生み、来るべきデジタルユニバース・IoT時代に対する多様なサービスとソリューションの提供を実現して、共同の取り組みにより迅速に大きなマーケットを獲得することを狙い、組成された。

同社が保有する自動運用サービスやIoT A&A ServiceなどのIoT分野のオリジナル技術によるソリューションサービス及びコンポーネントと、パートナー各社が保有するデータストア機能、インターネットインフラ機能、アプリケーション開発機能、モバイル回線機能、セキュリティ機能、集積データ分析・解析機能といった全領域でコネクトすることで、より広大な範囲の顧客ニーズをカバーすることが可能となり、各社とサービス連携、プロモーション連携等を通じ、共同で付加価値の高いサービスを提供していく計画に取り組む。

昨年末には参画企業数は100社を超え、同社のサービス提供範囲は一段と拡大。通信からデバイスそのものに至るまでのIoT全領域にわたる自動化と超軽量化をスタートさせている。さらに、従来のセールス連携の枠を越え、特定のプラットフォーム等にまったく依存しない個々のユーザニーズに対応する国内500社以上の企業との連携を、2016年12月期は目指す計画だ。

○(株)ispaceとの共同研究
2015年1月より、日本初の民間月面探査プロジェクト「HAKUTO」※を運営するispaceとの共同研究による技術開発をスタートさせている。同社は、「HAKUTO」のIoTデータマネジメント・パートナーで、1)IoT領域におけるローパーやドローン等の自動運転分野及びロボット・人工知能分野における共同研究、2)月面探査等に関わるIoTビッグデータマネジメント及び札幌コントロールセンターによるミッションサポート、3)月面探査等に関わるIoTビッグデータアナライズサポート、の3項目についてispaceとパートナー契約を締結している。

※HAKUTO:Google Inc.がスポンサーとなり、XPRIZE財団によって運営される、民間組織による月面無人探査コンテスト「Google Lunar XPRIZE」(GLXP)に、日本から唯一参加している民間チーム(世界各国から18チームが参加:賞金総額3,000万ドル)。GLXPミッションは、月面に純民間開発の無人探査機を着陸させ、着陸地点から500m以上走行し、指定された高解像度の動画や静止画データを地球に送信すること。

○英Kudan Limited との共同研究
2015年2月より、英国の携帯向けAR技術のリーディングカンパニーであるKudanとパートナー契約を締結し、共同研究を開始している。その内容は、1)ウェアラブルを対象とした、医療分野におけるオペサポート、工場や各種センターにおけるワークサポート分野における共同研究、2)自動操縦・自動運転分野及びロボット・人工知能分野における共同研究、3)ARを通じて取得するビッグデータのIoTデータマネジメント及び札幌コントロールセンターによるサポート及びARテクノロジーの導入、となっている。

さらに、今年1月には、クルマやドローン、ロボット、ファクトリーオートメーション全般に搭載可能なカメラ画像データのAR自動認識(センシング)と同社オリジナル人工知能Z14βとの自動接続による画像データ認識及びデータフィードバックによる自動制御・画像補正の実用化研究「JKART※」を開始している。

※JKART:JIG-SAW-Kudan Augmented Reality Transcendence。

(3)財務状態

連結決算は、連結子会社の見なし取得日を連結会計年度末日とし、貸借対照表のみを作成している。2015年12月末における総資産は、1,049百万円となり、前期末(単独)に比べ712百万円増加した。内訳を見ると、流動資産は、現金及び預金の増加565百万円、売掛金の増加27百万円などにより594百万円増加した。一方、固定資産は前期末比117百万円増加した。これは、無形固定資産の増加75百万円(のれんの増加67百万円)、投資その他の資産の増加39百万円が主要因。

負債に関しては320百万円と前期末に比べて、98百万円増加した。主な増加要因は、未払法人税の増加51百万円、未払金の増加18百万円、買掛金の増加7百万円などにより、流動負債が105百万円増加したことによる。また、純資産は、前期末比613百万円増加し729百万円へ拡大。株式上場に伴い、資本金、資本剰余金がそれぞれ261百万円増加したことと、当期純利益計上により利益剰余金が91百万円増加したことが主要因だ。

2015年12月期末の現金同等物の残高は前期末比500百万円増加し686百万円。営業キャッシュ・フローは、税引前当期純利益147百万円等により、122百万円の収入となった。一方、投資キャッシュ・フローは、子会社株式の取得50百万円、投資有価証券の取得30百万円等から、84百万円の支出に。財務活動によるキャッシュ・フローは上場に伴う株式発行による資金調達522百万円により462百万円の収入となった。

株式公開による資金調達により安全性を表す流動比率、自己資本比率は大幅に上昇した。一方、収益性を表す自己資本利益率(ROE)、使用総資本経常利益率(ROA)や営業利益率は収益拡大により一般的なシステム運用会社を大きく上回る高い水準を確保する格好となっており、財務面における問題点は見られない。

(4)2016年12月期会社予想と中長期的な経営戦略

2016年12月期は、新しい課金モデルが現時点では業績見通しを立てる上で具体的な条件設定が難しい広がりであること、また、今後の中期的な市場規模拡大のスピードを予測することが困難であると判断し、業績予想を敢えて未定として発表した。ただ、中長期の成長のための、布石や基盤については前期に取り組んだことから、2016年12月期は急激な成長を目指すとしている。

一方、中期的には、2016年をIoT時代の本格的な幕開けと位置付け、今後爆発的に拡大すると予想されるIoTマーケットに対して、大きな成長を実現する事業基盤を構築することを今後の重要な経営戦略としている。モビコムの子会社化とAltair Semiconductorとの間の包括技術ライセンス契約の締結で、End-to-Endサービスの提供を行える体制を他社に先駆けて構築したことにより、提供できるサービスの対象領域は大きく拡大した。併せて、ビジネスコンソーシアムのパートナー企業との連携強化を推進することで、拡大するIoTマーケットにスピード感を持って対応し、IoTデータ・コントロールの領域における次の技術を意識した次世代データ・コントロールのフロントランナーとしてポジションを確立、維持して行く計画。この戦略展開により、時価総額5,000億円を通過点とし、全世界のIoT市場規模365兆円の1%を獲得することを目標として掲げ、デジタルユニバースを支えるNo.1企業になることを目指している。

2016年12月期業績については、前期の四半期決算動向と既存事業がストック型のモデルであることを考慮すると、既存事業は順調に拡大すると予想される。ただ、四半期決算については、5月に本社移転を予定していることから、新たなサービスの具体的な進展がないと仮定した場合には第2四半期(4月?6月)決算では利益の伸びが鈍化する可能性がある。

一方、IoTデータ・コントロール関連では、IoT-MVNO事業やIoT-LTEチップなど、サービスの内容が具体化し、収益に大きな影響を与える可能性のあるものが見られるようになっている。なかでも、Altair SemiconductorのIoT-LTE通信チップは2016年より日本を含む世界各国において採用が見込まれており、実質的な世界標準IoT-LTEチップセットであることを考慮すると、案件が具体化、進展する可能性が高いと考えられる。このため、2016年12月期は急激な成長を目指すという同社の目標を占う手掛かりとして、特にAltair SemiconductorのIoT-LTE通信チップの動向、及び同社のIoTチップレイヤーにおける取り組みに注目している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)

《HN》

 提供:フィスコ

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