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イグニス Research Memo(2):無料ネイティブアプリでダウンロード数とMAUを拡大させる


■事業概要

イグニス<3689>は、スマートフォン向けネイティブアプリの企画・開発・運営・販売を手掛けており、広告収入を収益源とする「無料ネイティブアプリ」を中核とする。「次のあたりまえを創る。何度でも」をビジョンに掲げ、日常的に利用する様々なアプリを高品質で提供し、ダウンロード数やMAUの拡大を図ってきたことが同社の成長をけん引してきた。今期からは、これまでの小規模アプリ中心からコミュニケーション領域などのライフタイムの長い中・大規模アプリの開発にも注力することで収益構造改革に取り組んでいる。累計ダウンロード数は9,000万DL(ダウンロード)を超え、MAU(海外を含む)も700万規模の高い水準を誇っている。

ネイティブアプリは、App Store及びGoogle Play等のプラットフォームを通じてスマートフォンユーザーに提供されているが、同社はスマートフォンアプリ事業を収益モデル別に、「無料ネイティブアプリ」(広告収入モデル)、「全巻無料型ハイブリッドアプリ」(広告収入モデル+課金収入モデル)、「ネイティブソーシャルゲーム」(課金収入モデル)の3つのジャンルに分類している。

2014年9月期においては、主力の「無料ネイティブアプリ」が売上高の約70%を占めており、安定収益源として同社の収益基盤を支えてきた。ただ、足元では、「ぼくとドラゴン」が好調な「ネイティブソーシャルゲーム」が伸びる一方、「無料ネイティブアプリ」は、収益貢献までに時間のかかる中・大規模アプリ(更新型)に注力していることから構成比に変化がみられるが、これは収益構造改革を進めるに当たっての一時的な現象と見るのが妥当であろう。

各事業の特徴は以下のとおりである。

(1)無料ネイティブアプリ(広告収入モデル)

このモデルは無料で提供するアプリ内に広告を掲載することで、広告主からの広告収入を収益源とする。したがって、ダウンロード数及びMAUを増やすことが広告収入の拡大に結び付く。スマートフォンの使い勝手及び日常生活の利便性を高めるツール系アプリのほか、エンターテインメント系アプリ、カジュアルゲーム系アプリなど、様々なジャンルのアプリを展開している。無料ながら有料アプリと同等の品質を保証していることに加え、利便性の追求、パンダのオリジナル人気キャラクター「だーぱん」の活用などがユーザーからの評価を高め、ダウンロード数及びMAUの拡大に貢献してきた。特に同社の得意分野であるツール系アプリは、基本的に収益貢献が3ヶ月程度であるカジュアルゲーム系と違って、長期使用を前提としたユーザー積み上げ型であり、同社の事業基盤を支えている。今期からは、コミュニケーション領域などの中・大規模アプリの開発にも注力しており、更なるユーザー数の積み上げとライフタイムの長期化に取り組んでいる。

(2)全巻無料型ハイブリッドアプリ(広告収入+課金収入モデル)

このモデルはコンテンツの公開期間中、毎日一定量の漫画コンテンツを無料でお試しできるところに特徴がある。継続して漫画コンテンツを読みたいユーザーは課金購入することで続きを楽しむことができ、広告収入と課金収入を合わせた収益モデルとなっているため、ハイブリッドアプリと呼称している。2014年9月期の第4四半期からは複数作品を1アプリにまとめたストア型アプリを開始した。ユーザーにとっては1回のダウンロードで複数の漫画コンテンツを同時に読むことができる一方、同社にとっても1ユーザー当たりの収益の最大化を図ることが可能となる。ただ、有力作品の配信許諾を多数獲得するなど、当該事業モデルにおいては優位性を維持しているものの、無料コミックアプリの一般化に伴う利用者の嗜好変化及び競争激化に直面している。そのため、事業モデルの転換及び少年漫画以外のジャンルへの横展開のほか、韓国などアジア市場の開拓※などで立て直しを図る方針を掲げているが、まだ有効な打開策や明確な方向性が打ち出されておらず、しばらくは試行錯誤の状況が続くものとみられる。
※同社は2015年6月15日に、コミックス全巻無料型ハイブリッドアプリを韓国市場にて提供開始したことを発表。第1弾として、DCW,inc.の許諾のもと、子会社(株)イグニッションがデジタル配信している「DEATH NOTE」「テニスの王子様」などの作品の韓国語版を収録している。

(3)ネイティブソーシャルゲーム

このモデルはアイテム課金を基本とするネイティブソーシャルゲームを提供している。ソーシャルゲームは他のユーザーとコミュニケーションを取りながらプレイするオンラインゲームである。開発本数を一定数に絞り込むことで品質の高いゲームを提供するという方針のもと、今期2作品目となる「ぼくとドラゴン」の配信を開始(Android版が2月20日、iOS版が3月12日)。同作品は、8月9日時点において累計180万ダウンロードを突破するとともに、Android版では5月29日以降、売上トップランキング50位以内を継続しているなど順調な立ち上がりを見せている。「ぼくとドラゴン」については、来期以降の収益源としてめどが立ったとみられるが、更に3作品目の開発にも着手する予定、リリースの時期を含めて今後の動向が注目される。

同社グループは、2015年6月末現在、連結子会社8社及び関連会社1社で構成される。連結子会社には、無料ネイティブアプリの企画・開発・運営・売却を行う(株)アイビー、スワッグアップ(株)、IGNIS AMERICA,INC.(米国子会社)のほか、全巻無料型ハイブリッドアプリの企画・開発・運営・売却を行う(株)イグニッション、ネイティブソーシャルゲームの企画・開発・運営・売却を行う(株)スタジオキング、新しい視点でSNSを展開するALTR THINK(株)(2014年10月に買収)などがある。

同社は各連結子会社を通じて、ゲーム及び非ゲームの領域で、広告収入及び課金収入の両方の収益モデルを手掛けており、専業への特化及び単一の収益モデルに依存しがちな同業他社と比較すると、IT上場企業では特殊なポジショニングをとっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《RT》

 提供:フィスコ

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