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3479 ティーケーピー

東証G
1,429円
前日比
-41
-2.79%
PTS
1,440円
22:34 04/26
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
11.7 1.50 13.63
時価総額 605億円
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TKP Research Memo(7):2019年2月期も20%を超える増収を見込む


■業績見通し

2019年2月期の連結業績予想についてティーケーピー<3479>は、売上高を前期比20.4%増の34,550百万円、営業利益を同16.1%増の4,004百万円、経常利益を同16.5%増の3,729百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同2.4%増の2,120百万円と増収増益を見込んでいる。

売上高は、引き続き、高付加価値グレードを軸とする出店継続と顧客単価の向上、ホテル事業の拡大などが増収に寄与する想定である。2019年2月末の会議室数は24拠点の開設により2,124室(前期末比+266室/同14.3%増)を計画。また、注力するホテル事業についても、新たに4拠点※をオープンさせる予定である。

※アパホテル川崎(2018年6月オープン予定)、アパホテル仙台(2018年10月オープン予定)のほか、レクトーレ葉山(2018年4月オープン済)、ファーストキャビンとなっている。


一方、利益面では、増収による増益を見込んでいるものの、新規出店数の拡大やホテル開業にかかる費用等により営業利益率では若干低下する想定となっている。

弊社でも、1)新規出店計画(266室の純増)のうち、現時点(2018年4月)で既に220室を確保していること、2)コンテンツの拡充や営業体制の確立等により顧客単価の向上が期待できること、3)ホテル事業についても計画どおりに進展していることなどから、同社の業績予想の達成は可能であるとみている。また、新たな空間再生(商業ビルへの出店など)を含め、計画に織り込まれていない案件が業績の上振れ要因となる可能性にも注意が必要である。


■成長戦略
宿泊研修ブランドの確立のほか、新しい空間再生の形(商業ビルなど)にも取り組む
1. 中期経営計画
同社は、2018年2月期の連結業績が計画を大きく上振れたことから、2018年1月24日付で、これまでの中期経営計画を増額修正するとともに、新たに2021年2月期を最終年度とする中期経営計画を発表した。ただ、方向性に大きな変更はない。すなわち、「持たざる経営」、「積極的な出店の継続」、「宿泊を含めた周辺事業の取り込み・内製化」、「M&Aを含む新規事業分野の開発」、「既存スペースの更なる有効活用」、「高付加価値化と効率化」などに取り組む方針である。特に、業績の伸びをけん引するのは、既に開発案件が進んでいるホテル事業であり、宿泊研修市場の確立によって成長を加速する戦略を描いている。2021年2月期の目標として、売上高45,858百万円(3年間の平均成長率16.9%)、営業利益6,702百万円(利益率14.6%)を掲げている。

2. 成長戦略
同社は今後の成長戦略の柱として、1)貸会議室・宴会場運営事業の拡大、2)コンテンツ拡充と営業体制の確立による販売強化、3)新しい空間再生への取り組み、の3つを掲げている。

(1) 貸会議室・宴会場運営事業の拡大
好調な外部環境のもと、積極的な出店を継続する方針である。出店には仕入れが欠かせないが、国内の不動産市況を見ると、都心地区では築20年以上のオフィスビルの割合が61%と高く、老朽化によるオフィスの移転により、同社の仕入れ対象が今後も増加する可能性が高い。新築オフィスビルの着工も堅調であるが、オフィス移転による坪単価の上昇のため、企業は経費を削減する手段として会議室を減らす企業が増加する見込みであり、同社事業にとっては追い風となる。企業向け研修サービス市場規模は、2016年に5,080億円とも言われ、同社事業の拡大余地はまだ大きい。

また、「リアル」と「バーチャル」を交えた効率的な出店戦略も進める。すなわち、収益性の高い高付加価値グレードについては出店拡大を継続する一方、それ以外はボリューム確保と効率重視で取り組むとともに、新たに開始した「クラウドスペース」の活用により、更なる効率性の追求と裾野の拡大を目指す方針である。

(2) コンテンツ拡充と営業体制の確立による販売強化
同社は、貸会議室を起点として、料飲・ケータリング、コールセンター(BPO)、ホテル&リゾート(宿泊研修)、イベント運営・制作などコンテンツの拡充を図ってきた。特に、ホテル事業と一体となって進めてきた宿泊研修市場の確立は今後の成長のカギを握ると考えられる。米国などではリゾート施設などで行う「オフサイト・ミーティング」が定着しているが、日本でも生産性の向上や連帯感の醸成、創造性の発揮などを目的として、拡大の余地があるとみられている。同社においても、会議室利用の法人からの要望に対応する形で、郊外型宿泊研修施設(石のや・レクトーレ)を展開しており、研修による法人利用が増加する傾向にある。同社の場合、年間利用企業約24,000社がターゲットになるとともに、年間延べ利用企業数は約95,000社に及ぶため、10回に1回の泊り込み研修でも展開余地は大きい。また、宿泊研修の1名当たりの売上単価は平均15,000円以上となっており、会議室のみでの利用に比べ、1名当たりの売上単価を大幅にアップすることが可能となる。稼働率についても、平日の法人利用と土日の個人利用の組み合わせにより高い水準を確保する戦略であり、平日の稼働率向上が課題となっているホテル業界においては、顧客基盤を有する同社にしかできない事業モデルと言える。

また、コンテンツの拡充を顧客単価の向上に結び付けていくために営業体制の確立にも注力する。具体的には、これまで2部体制でやってきた営業部隊をまずは6部体制(約100人体制)へと再編し、受注営業から攻める営業へと変革する。特に、上位1500~2000社(ヘビーユーザー及びその予備軍)との関係をより深掘りすることにより、効率的に顧客単価の向上を図っていく戦略である。また、顧客データベース化により潜在需要の発掘にも取り組む。

(3) 新しい空間再生への取り組み
大塚家具とのアライアンスを契機として、新たな空間活用にも取り組む。具体的には、商業ビルなどの余剰となった店舗スペースの有効活用(イベントスペース、貸会議室、コワーキングスペース等)により、ビル全体の最適化(テナント店舗への送客効果など)を図るものであり、空間再生を通じて双方(同社及びテナント店舗)の事業活性化を実現するところがポイントとなっている※。これまでオフィスビル中心だった同社にとっては、新たに駅前の好立地な商業ビルへの出店が可能となり成長の軸が増えることになる。特に、家電量販店や百貨店、大型書店などが入居している商業ビルにおいては、店舗のショールーム化(店舗はモノを買う場所から体験を得る場所へと変化)の影響などにより余剰スペースが発生しやすい状況がみられるため、潜在的な需要は大きいと考えられる。また、空間再生を通じた事業再生や新規事業開発により事業領域を拡充する方向性も描いているようだ。

※例えば、一般的な商業ビルにとって平日は土日に比べて集客力が落ちる傾向があるが、同社が出店することにより平日でも会議室の利用者による集客効果が期待できる。一方、同社にとっても、稼働率が低下する土日は、商業ビルの集客効果を生かしたイベントや催事場として利用することが可能となる。


2018年3月30日には、駐車場シェアサービス「軒先パーキング」やスペースシェアサービス「軒先ビジネス」などを運営する軒先(株)(本社:東京都千代田区)の第三者割当増資を一部引き受けるとともに、業務提携を締結した。まずは全国TKPの貸会議室や宿泊施設に付帯する駐車場及び月極駐車場の空き区画を「軒先パーキング」への登録を進めるとともに、駐車場が必要なTKPの利用者に向けてもサービスの提供を推進する。さらには、「軒先ビジネス」の仕組みを利用し、小売店舗の売場、ビルや空きスペースなど、短期催事やプロモーションの場所として新たに活用する仕組みを進めていく予定である。特に、「軒先ビジネス」については商業ビルにおける店舗スペースの有効活用との親和性が高く、同社にとっては新たな空間再生の切り札の1つとなる可能性が高い。

弊社でも、貸会議室・宴会場運営事業が順調に拡大していること、ホテル事業も計画どおり進捗していることから、同社の中期経営計画は十分に達成可能であるとみている。むしろ、1)営業体制の増強やコンテンツの拡充(宿泊研修を含む)により顧客単価の向上余地が十分にあること、2)東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてホテル事業の稼働率や宿泊料金の上昇が期待できること、3)計画に織り込まれていない新たな空間再生が本格的に事業化してくることになどより、計画を上振れる可能性が高いと捉えている。特に、宿泊研修市場の確立や新たな空間再生については、さらにその先の成長イメージを探るうえでも重要なカギを握ると考えられるため、その動向に注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《MW》

 提供:フィスコ

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