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2485 ティア

東証S
457円
前日比
-3
-0.65%
PTS
460円
20:23 05/10
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
14.8 1.32 4.38 339
時価総額 103億円
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決算発表予定日

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ティア Research Memo(5):2018年9月期も葬儀件数の拡大により、過去最高業績の更新が続く


■今後の見通し

1. 2018年9月期の業績見通し
ティア<2485>の2018年9月期の連結業績は、売上高が前期比8.1%増の12,270百万円、営業利益が同7.1%増の1,275百万円、経常利益が同6.3%増の1,260百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.9%増の840百万円と期初計画を据え置き、過去最高業績を連続更新する見通し。

業績予想の前提も期初計画から変更はなく、期末店舗数が前期末比12店舗増の106店舗、直営の葬儀件数は前期比8.1%増の9,903件、うち既存店ベースの葬儀件数は同3.4%増、葬儀単価は同0.7%増となり、売上高では同4.1%増を見込んでいる。既存店の葬儀件数については直近2年間の平均値に過去の趨勢を考慮して算出している。

新規出店に関しては下期に直営で3店舗(うち、1店舗はサロン)を予定しており、会館については名古屋市内に2店舗、サロンは東京都内で1店舗それぞれ出店する予定となっている。また、FC店舗については中部エリアで4店舗が既に見えており、残り2店舗についても出店できる可能性が高い。設備投資計画としては、新規会館の開設及び既存会館の改修(2店舗)、本社隣接地の活用等により917百万円を計画しており、前期比では82百万円減少する見込み。葬儀相談サロンについては賃貸物件で小型店舗となるため、投資額も15百万円程度とわずかな額となっている。

2018年9月期業績の増減要因を見ると、売上高は新店稼働で467百万円、既存店の増収で391百万円、FC事業の増収で65百万円となる。また、経常利益は増収効果で347百万円、売上原価低減で142百万円の増益要因、人件費の増加で263百万円、その他経費の増加で151百万円(うち、広告宣伝費の増加で87百万円)の減益要因となる。

売上原価率は前期比1.2ポイント低下の61.0%を見込んでいる。このうち、商品原価率については湯灌・納棺業務を行う愛共をグループ内に取り込んだ効果もあって、同1.1ポイント低下の34.2%となる。愛共で人員体制の増強を進めており、愛知県下における湯灌・納棺業務の内製化率をさらに高めていく計画で、約20百万円の増益要因となる。労務費率は愛共での人員増に加えて、葬儀の接客・警備業務にかかる人員採用も進めていることから、同0.6ポイント上昇の7.5%となり、逆に雑費率は同0.6ポイント低下の19.4%を見込んでいる。一方、販管費率は前期比1.3ポイント上昇の28.6%を見込んでいる。中長期的な出店を見据えた人財確保に伴う人件費の増加を見込んでいるほか、Webプロモーションや店舗でのイベント開催など積極的な販促施策による広告宣伝費の増加が主因となっている。

なお、葬儀単価については下期に100万円台の新商品プランを投入し、単価アップに取り組んでいく方針だが、第2四半期までの状況から判断すると、計画を若干下回る可能性が高い。ただ、葬儀件数が既存店、新店ともに想定より上回って推移しているため、売上高はほぼ計画どおりに推移するものと予想される。また、売上原価率は業務の内製化が順調に進んでいることから計画どおりの改善が見込まれる。販管費については、人件費が計画を下回る可能性が高い。第2四半期累計で計画を58百万円下回っていることに加え、2018年4月の新卒社員数が計画比よりも3人少ない17人にとどまったためだ。このため、売上高が会社計画通り推移すれば、営業利益は若干上振れする可能性がある。


継続的な出店とFC展開により、今後も安定的な収益成長が続く見通し
2. 中期経営計画
同社は中長期目標として、店舗数200店舗、売上高165億円を目標として掲げており、その実現を目指すべく中部エリアでの更なる基盤強化と、関東・関西エリアでの収益力強化並びに出店を加速していく方針を打ち出している。期初に発表した3ヶ年の中期経営計画では、経営数値目標として2020年9月期に売上高13,770百万円、経常利益1,390百万円、葬儀件数11,160件を掲げている。

売上計画の前提としては、既存店売上高を前期並みの水準とし、新店稼働による葬儀件数の増加分だけを増収要因として見込む保守的なものとなっている。同様に経費についても2年目以降の既存店を前期比横ばいとし、新店稼働に伴う経費の増加及び新卒の採用計画、広告宣伝費の増額等を積み上げた数字となっている。

同社は中期経営計画を達成していくための重要施策として、以下の4点を挙げている。

(1) 利益成長を持続させつつ継続的な出店とFC事業の業容拡大
出店戦略としては直営会館3店舗、葬儀相談サロン3店舗、FC5~6店舗の合計11~12店舗を毎年出店していく計画だ。このうち、地盤となる中部エリアでは直営、FC合わせて年間5~8店舗を計画しており、域内シェアを拡大していくことで経営基盤をさらに強化していく。また、直営では東京でのサロン展開を年間3店舗ペースで進めていく。定期的なイベント開催や勉強会など地域に密着した営業活動を継続していくことで会員数を増やし、オープンから2~3年で黒字化を目指していくことになる。

一方、FCについては中部エリアのほか、神奈川県及び茨城県でのFC店舗の早期収益化に取り組むとともに、太平洋ベルトラインを重点開発エリアとして、新規クライアントの獲得に向けた提案営業を推進していく予定となっている。ただ、国内景気が堅調に推移するなかで、クライアントが見つかりにくいのが現状で、既存クライアントによる出店拡大に期待がかかる。

なお、設備投資については年間800~1,000百万円と営業キャッシュ・フローの範囲内で実施する計画となっている。このため財務基盤も、大きなM&A案件が出てこない限りは強化されていくものと予想される。

(2) 業界環境の変化に対応した営業施策とブランド力の向上
核家族化の進展などにより葬儀に対する価値観も多様化し、葬儀スタイルも家族葬などの小規模葬や、葬儀そのものを行わない直葬といった需要が都市部を中心に年々拡大している。こうした業界環境の変化に対応するため、同社においてもニーズに合わせた様々な葬儀プランを開発すると同時に、コンタクトセンターにおけるユーザビリティ向上、小規模葬に対応するための既存会館の改装(中部エリアで年間2~3店舗)などを進めていく計画となっている。さらには、差別化戦略として創意工夫を凝らした葬儀の提案力にも磨きをかけていく。

ブランド戦略に関しては、社長のメディアでの発信力に加えて、地域でのイベント開催などによるPR強化やIR活動の継続(個人投資家向け説明会を年間20回以上)などにより、全国レベルでの認知度向上に取り組んでいく。

(3) 戦略的な商品開発とM&A
商品戦略では2012年10月に葬儀付帯品を各会館へ配送するための物流センター(ティア・ロジスティック・センター:TLC)を稼働したのに加え、商品調達手法や取扱商品の見直しを行うことで商品原価率の低減を推進してきた。今後もTLCの機能拡大(直接仕入先の開拓、FC店舗向けの配送拡大等)や、葬儀関連の一部業務の内製化等により原価低減を推進していく方針となっている。業務の内製化については霊柩業務や湯灌・納棺業務に続き、接客(セレモニーアテンダント)業務や警備業務の内製化に取り組み始めている。出店数が年々拡大していくなかで、安定的な店舗運営を進めていくためには、これら業務を内製化することが効率的と考えられる。また、その他の業務では生花業の内製化に取り組む可能性がある。

M&Aに関しては多くの中小零細の葬儀事業者において経営者の高齢化が進んでおり、事業承継問題が深刻化するなかで、M&A案件が増加していくことが予想される。こうした状況をチャンスと捉え、M&Aを第3の成長エンジンとできるよう社内に専門組織を設置し、専任スタッフによりM&A案件の検討を進めている段階にある。ただ、直近では同社の条件にかなう案件がほとんどなく(有利子負債が大きい、永代供養している等)、具体的に動きが出始めるまでにはしばらく時間を要しそうだ。

(4) 中長期を見据えた人財の確保、育成
葬儀サービスは究極のサービス業であり、今後の持続的な成長を図っていくためには、人財の採用・確保だけでなく育成が重要と同社では捉えている。同社では独自の人財教育機関「ティアアカデミー」において、新卒社員については6ヶ月の研修期間を設け、葬儀サービスが究極のサービス業であることの理解力をより深め、現場配属後の戦力化と離職率の低減につなげていきたい考えだ。

今後の新卒採用計画については、2017年春の実績11名に対して2018年は17名、2019年以降は40名ペースでの採用を計画しており、店舗数の拡大に備えて人員体制の拡充を進めていく方針となっている。新卒採用については従来、名古屋を中心に行ってきたが、2018年4月には東京で初めて4名を採用した。リクルート活動も2017年12月からインターンシップを導入したほか、就職説明会での社長の講演やワークショップの開催など学生との関係構築を今まで以上に強化していくことで、新卒採用数を増やしていく考えだ。


葬儀市場は長期的に安定成長見通し、シェア拡大による収益成長ポテンシャルは大きい
3. 市場規模と成長ポテンシャル
国内の葬儀市場は年間約1.8兆円の規模でここ数年緩やかな成長が続いており、直近1年間の葬儀件数の伸び率も前年比で約2.5%増と堅調に推移している。長期的に見ても、死亡人口が今後緩やかに増加していくことから、葬儀の潜在的な需要は、2040年に現在の約1.3倍の水準まで増加することが予測されている。また、最近では葬儀業界にも新たな潮流が生まれつつある。具体的には、葬儀だけにとどまらずセカンド・ライフサポートや終活関連情報産業としてのサービスが求められるようになってきており、同社でもこうしたニーズ(葬儀の事前・事後のサービス)にも取り組んでいく方針となっている。

葬儀業界では全国各地にある冠婚葬祭互助会が依然、高いブランド力を背景に高シェアを占めているが(互助会及び関連企業の合計売上高で年間約7,400億円)、同社は「徹底した人財教育による質の高いサービス」と「葬儀費用の完全開示や適正費用による提案力」などが顧客から高い評価を受けており、着実にブランド力及び業界シェアが上昇している。名古屋市内ではJA系専業事業者からの業務委託も受けているほどだ。「ティアの会」会員数が年間2万人を超えるペースで伸び続けていることから見ても、シェアの拡大は今後も進むものと予想される。

名古屋市内では1998年に1号店をオープンして以降、16年目でシェア20%を獲得した実績があることから、ほかのエリアにおいても20%を獲得する可能性はあると考えられる。実際、関西エリアや埼玉県などでは着実にシェアを拡大している。葬儀件数全体に占める同社グループのシェアはまだ約1%程度で、今後のシェア拡大による収益成長ポテンシャルは大きいと弊社では見ている。

事業リスクとしては、葬儀単価の下落傾向が続く可能性ある点が挙げられる。核家族化や少子化の進展により葬儀も家族葬など小規模に済ませるケースが増加傾向にあるためだ。前述したように同社の中でも50万円以下の葬儀プランの売上比率が19.9%まで上昇しており、平均葬儀単価の低下によって件数が伸びても売上高が伸び悩む可能性がある。こうした市場環境下において、最大市場である東京都内で固定費負担の少ないサロン形式で出店戦略を推進していることは理にかなっていると思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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