貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
株価15分ディレイ → リアルタイムに変更

8927 明豊エンタープライズ

東証S
441円
前日比
+7
+1.61%
PTS
442円
23:15 12/10
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
6.7 1.41 2.95 11.25
時価総額 139億円
比較される銘柄
ランドネット,
プロパテクノ,
インテリクス
決算発表予定日

銘柄ニュース

戻る
 

【IR】垂直統合戦略で急成長を実現! 明豊エンタープライズ・矢吹満社長に聞く

タイトル

─5年間若手離職率はほぼゼロ! 好立地の投資用不動産販売で急成長─

 厳しいノルマの体育会的な体質を持つ業界。そんなイメージが付きまとう不動産業界にあって、平均年齢30歳強の若手社員が躍動し、業績が急拡大している企業がある。世田谷、渋谷、杉並など東京で最も高いステイタスを持つエリアを中心に、主に一棟売りの投資用不動産事業を展開する明豊エンタープライズ <8927> [東証S]だ。8年間で営業利益を10倍化するという中期事業計画を推進中の同社の矢吹満社長に、近年の事業成長の要因と今後の事業ビジョンを聞いた。(構成・「株探」編集部)

──2025年7月期決算は、売上高が前の期比44%増の297億円、営業利益も同44%増の33億円、経常利益は同41%増の26億円と、期初予想から大きく上方修正をした好決算となりました。株価も年初から大幅に上昇しています。

 2025年7月期は主力である不動産開発事業が当初、想定した以上の実績を上げることができ、投資家の皆さんにも高い評価をいただきました。私が会長に就任して5年が経ちますが、当時と比べて株価だけでなく売買代金も増えてきましたし、株式市場での注目度が確実に上がっていることを実感しています。

 業績が好調に推移している要因は、ひと言で言えば、ディベロッパーとして「良い物件を仕入れる」力が高まっていることに尽きると思います。他の産業でも共通することですが、良い商品を生み出すためには、良い材料を使わなければなりません。例えば飲食店なら、最高級の肉を仕入れることができれば、おいしい料理ができ上がります。不動産も同じで、良い物件、つまり好立地の土地を仕入れることができれば、良い商品を提供できる確率が高まるのです。今期、2026年7月期は新ブランドの「LOS ARCOS(ロスアルコス)」の販売も予定しており、投資家の皆さんの期待に応えられるよう、より積極的に事業を進めていきたいと考えています。

──矢吹社長が御社の経営トップに就任された2020年7月期から5年で、売上高3倍、営業利益6倍と大きく成長しています。なぜ、こうした急成長を実現できたのでしょうか。



 私が当社の大株主となり、代表取締役に就任し、経営を見るようになった頃は、コロナ禍もあり、不動産業界全体が不確実性の高い状況で、売上高99億円、営業利益5億円ぐらいの水準でした。まず取り組んだのは、幹部を含めた社員たちに徹底的にヒアリングをし、当社の強みや課題を把握することでした。

 事業面では、当社は東京の城南地区(港区、品川区、目黒区、大田区)や城西地区(新宿区、渋谷区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区)という、日本でも最もステイタスの高いエリアを拠点にしていて、物件情報にも精通しています。このエリアの特徴は、人気であるために賃貸の需要が高く、不動産オーナーにとっては安定したインカムゲインを得ることができるとともに、地価上昇によるキャピタルゲインも見込めることです。

 さらに当社は2010年代から、投資用不動産の一棟販売に事業の主軸を移行していたことも大きな特徴でした。それ以前は他のディベロッパー同様、分譲マンションなども手がけていたのですが、一棟売りの投資用不動産は、分譲事業と比べて資金の回転が速く、リスクを抑えることができます。特に安定した賃料収入が見込める好立地の物件なら、投資家にとっては安心して長期保有をすることができる魅力的な商品となります。私が意識したのは、こうした当社ならではの強みを、より生かしていこうということでした。

 もうひとつ、私が特に重点を置いたのは、「若手社員を育てよう」ということでした。私はそれまでも、不動産会社を始めとしたいくつかの企業の経営に携わってきた経験があって、その経験から「若手が力を出せる組織は強い」ということを実感していたからです。当社は設立して57年という長い歴史を持つ会社です。ですが、多くの不動産会社同様、リーマン・ショックの後遺症もあって、2010年代は事業に疲弊感がありました。新卒採用もしばらく行っていなかったのですが、現在は毎年、積極的に行うようにしています。

矢吹満氏(明豊エンタープライズ 代表取締役会長兼社長)

──御社の広報動画を見ると、女性を始めとした若手社員が本当に生き生きと働いていることが伝わってきます。

 往々にして不動産業界では、若手社員の離職率が高い傾向があります。なぜなら、一部の実績のあるベテラン社員が力を持ち、情報や仕事のノウハウが若手社員に共有されることがないからです。賃金制度も年功序列で、若手社員たちは、なかなか自由に仕事ができる環境が与えられていません。業界の旧弊かもしれませんが、こうした空気を払しょくしたかったのです。

 今の当社では、新卒社員が数億円単位の物件を仕入れていますが、こんなことは他の不動産会社では考えられません。なぜ、それができるかというと、社内にある仕事のノウハウを、すべての社員が共有できるような体制になっているからです。ではベテラン社員はどうすればいいのかというと、若手がのびのびと働ける環境をつくり、若手に寄り添って彼らを育てる立場に徹すればいい。つまりマネジメントです。従来の不動産業界の属人的な仕事の進め方から、チームで仕事を進めるように変えていったわけです。

 今では入社数年の若手社員たちが、自発的に仕事の課題解決にも取り組み、例えばユーチューブ(YouTube)を活用した広報動画なども彼らの力で発信しています。マネジメントも、上司から部下、新入社員へと仕事のノウハウが継承される仕組みが整っていて、その結果として、いまでは、営業・開発部門では若手社員の離職率がほぼゼロという結果になっています。この5年間の業績拡大の最も大きな要因は、この部分に尽きると考えています。



──それにしても「営業ノルマが厳しい」というイメージがある不動産業界にあって、若手の離職率がゼロに近いというのは驚くべきことです。

 一般的に不動産業界と言えば、まず営業のイメージがあると思います。ですが実は、不動産ビジネスで最も重要なのは営業ではなく開発、つまり土地の仕入れなのです。「営業が厳しい」ということは、品質の悪い商品を強引に売っているからそうなってしまうのです。

 当社で言えば、他社よりも利回りが高く、資産価値も高い投資用不動産を開発することができれば、自然に購入者は現れます。いまの当社の営業部門は、土地の仕入れが7割、物件の販売が3割くらいの構成になっていて、仕入れに関しては、社内にあるノウハウが若手社員にもすべて共有されているので、やる気さえあれば、新卒の社員でも十分に成果を上げることができる仕組みになっているのです。



──では次に、現在の事業についてお聞きします。城南・城西地区を中心とした一棟売りの投資用不動産の開発・販売を主力としていますが、なぜ、このビジネスモデルにフォーカスしたのでしょうか。

 当社が一棟売りの投資用不動産を事業の主力とするようになったのは、2014年に「MIJAS(ミハス)」ブランドの1号物件を東京・大田区で開発・販売したことがきっかけになっています。実はこの物件は“旗竿地(はたざおち)”といって、道路に接する面積が小さく、奥に広がる面積が大きいという土地で、従来の不動産の感覚では非常に開発が難しいと言われていた物件だったのです。

 そこで当社は、スペイン南部・アンダルシア地方の観光地、ミハスの街並みをモチーフにした建築デザインを施し、長屋形式の鉄骨アパートメントとして1棟販売したところ、高利回りの不動産商品として売却することに成功したのです。大手の不動産会社なら決して手を出さないような“旗竿地”の特性を生かして設計されたのが「ミハス」だったわけです。

 その後、2019年からは“旗竿地”ではない土地向けに、同じくスペイン風のデザインを施した「ELFARO(エルファーロ)」を発売しています。「エルファーロ」とはスペイン語で灯台を意味する言葉で、鉄筋コンクリート建ての賃貸マンションです。この両ブランドに共通するのは、洗練されたデザインが単身者や若年層の支持を受け、平均入居率も97%と業界水準と比べて圧倒的に高く、安定した利回りを見込める投資用不動産だということです。



──投資用不動産では競合企業も少なくないと思いますが、その中での御社の優位性はどこにあるのでしょうか。

 現在、当社の物件は3%台の後半から5%程度と、他社と比較して高い利回りを実現しています。高い利回りの商品がつくれる理由を挙げるなら、ひと言で言えば、低コストで高品質の商品をつくる体制が整っているからです。なぜなら、当社ではグループ内で、土地の仕入れから商品企画、建物の施工、物件の売却、さらに売却したあと、オーナーに代わって入居者を募る賃貸管理や修繕まで、投資用不動産ビジネスの最初から最後までを一気通貫で展開することができるのです。

 例えば、他社では仕入れようとする土地があったとしても、設計は外部に発注しなければならず、商品企画にある程度の時間を要します。その点、当社ではグループ内に建築会社があるので、大幅に時間を短縮できます。好立地の土地を取得するためには、このスピードがモノを言います。建物を建てるときにも、施工期間が短くて済みますし、品質管理も容易です。

 販売も基本的には自社で行っているので、仲介手数料などのコストを抑えることができます。さらに売却する際には、グループ内に賃貸管理会社を持っていることが優位に働きます。当社ではグループ会社の明豊プロパティーズが、建物を建てる段階で賃料の査定なども行い、あらかじめ賃料を設定し、入居者をほぼ募った状態で売却することができるのです。投資用不動産にありがちな空室リスクのない状態で、物件を引き渡せるわけです。

 当社ではこれらを「垂直統合戦略」と呼んでいますが、このように物件の開発から売却、その後の管理まで、投資用不動産で必要なサービスすべてをワンストップで提供できる体制を整えているところが、低コストで高品質の商品を生み出し続ける理由なのです。



──グループ内の建築会社では、2022年8月に買収した協栄組と、同年10月に設立した明豊エンジニアリングの2社がありますが、それぞれどのような事業分担をしているのでしょうか。

 当社と明豊プロパティーズの建築部門を分社化した明豊エンジニアリングは「ミハス」や「エルファーロ」のような低層建築を得意としているのに対し、協栄組は70年の歴史があって、10階建て以上の高層建築に強みを持っています。3つ目のブランド、「ロスアルコス」はよりハイクラスな高層マンションになるので、協栄組の持つ施工力が生きてくるはずです。

 「ミハス」や「エルファーロ」は主に個人投資家が購入者でしたが、「ロスアルコス」の販売価格は10億円以上になるので、購入対象がファンドや機関投資家にまで広がっていきます。協栄組の子会社化は、商品ブランドのラインアップ拡充を狙ったものでもあるのです。

矢吹満氏(明豊エンタープライズ 代表取締役会長兼社長)

──販売面では昨年(2024年)12月に台湾に現地法人を開設するなど、海外展開にも力を入れているようですね。

 当社では現在、2025年9月11日に発表した中期経営計画を推進中で、2028年7月期の目標、売上高450億円、営業利益52億円という目標を掲げています。これまでの5年間では、垂直統合のビジネスモデルを確立し、高品質、高収益の体制を実現してきましたが、これからの3年間は、垂直統合モデルを水平展開していく段階だと考えています。その一つが、販路を海外に拡大することなのです。



 昨年、台湾に現地法人を設立しましたが、顧客は台湾だけではなく、香港や上海、深セン、シンガポール、さらに中東と無限に存在しています。前期(25年7月期)の時点ですでに、当社の売り上げの20%が海外の投資家向けとなっていますが、当社の物件は好立地、高品質で利回りの高い不動産ばかりなので、彼らにとっても魅力的な投資対象となっているのです。



──中期経営計画について、今後は具体的にどのような施策を考えられているのでしょうか。さらにその先の事業ビジョンについてもご説明ください。

 中計については、開発、設計、販売など各部門のボトムアップで目標予算を設定していますから、淡々と実行していけば自ずと達成することができると考えています。中計が完了する2028年は創業60周年の節目の年を迎えますが、目標の数字を達成すれば、日本一競争が激しいと言われる城南・城西地区で、名実ともにナンバーワンの不動産会社になっているはずです。

 いま、不動産業界では人口減が大きな課題となり、いわゆる「空き家問題」も喧伝されています。ですが、実は首都圏では人口流入が続いていて、特に最も人気がある城南・城西地区は、人口減の兆候などは全くありません。地方ではなかなか借り手が見つからないから空き家になってしまうのですが、このエリアでは、もし空き家が出ればすぐに借り手が付くという状況です。

 よく聞かれるのは、他のエリアに進出しないのかということなのですが、それは基本的には考えていません。城南・城西地区は人気エリアであるがゆえに、土地の価格も高く、住民には高齢者が多いため、今後、売り物件が増加することが確実視されています。当社では物件を開発する際、ドミナント戦略を徹底していますが、このエリアを深化していけばいくほど、必然的に事業拡大の余地は高まっていくのです。

──では最後に御社に投資を検討する投資家に向けて、伝えきれていないことがあれば自由にお話しください。

 お陰さまで当社の株価は今年に入って上昇基調にあります。とは言え、それでもPER(株価収益率)は8倍前後と、他業種の企業に比べて低い水準にあります。これは不動産業界自体が、成長性の低いセクターであると認識されていることも影響していると思いますが、当社の中長期的な成長ポテンシャルや収益基盤の強さを踏まえれば、さらなる評価余地があるのではないかと考えています。

 そのためにも、まずは中計目標の営業利益をしっかりと達成し、城南・城西地区でトップの地位を盤石にすることが第一歩だと考えています。そのうえで、販路の海外への拡大を含めて、業界に対する固定認識を打ち破るようなビジネスモデルを提示し、当社の高いポテンシャルを投資家や株主の皆さんに感じていただけるよう、全力で取り組んでいきたいと考えています。

矢吹満氏(明豊エンタープライズ 代表取締役会長兼社長)

◇矢吹満(やぶき・みつる)
株式会社明豊エンタープライズ代表取締役会長兼社長 1969年9月生まれ。2000年8月、麻布ビルディング代表取締役に就任後、複数の企業の経営に従事。2020年9月に明豊エンタープライズ代表取締役会長に就任。

◇明豊エンタープライズ
1968年9月に長栄不動産として創業、1977年11月に現社名に変更。東京・城南地区(港区、品川区、目黒区、大田区)と城西地区(新宿区、渋谷区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区)を拠点に不動産事業を展開。2004年6月に株式店頭公開、同年12月にジャスダック上場を経て、22年4月から東京スタンダード市場に移行。現在は、2014年2月に第1号物件が竣工した賃貸アパートメント「ミハス」、2019年6月に第1号物件が竣工した賃貸住宅「エルファーロ」、2025年8月に発表されたハイクラス賃貸住宅「ロスアルコス」の3つのブランドを中心に、一棟売りの投資用不動産事業を主力展開。グループ会社を通して、用地開発から企画、施工、販売、賃貸管理、修繕まで一気通貫の不動産サービスを手掛けることに強みがある。

【企業HP】https://meiho-est.com/

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均