【植木靖男の相場展望】 ─次の上昇相場に備える局面か
「次の上昇相場に備える局面か」
●12年ぶり異常事態の背景に海外勢の不安
日経平均株価は円安にもかかわらず10月8日から23日まで11日営業日連続で陰線となった。24日は久々に陽線を示現したが、翌25日は再び陰線に転じている。この間、4連騰も演じているが、上昇した日のローソク足すら陰線という異常な状況にある。かつて民主党政権下で記録した2012年の13日間連続以来、12年ぶりの長さだ。
これを需給でみると、売り手は海外の短期投資筋で、一方、買い手は個人の信用買い、NISA(少額投資非課税制度)、自社株買いのようだ。
チャートでは、15日高値の4万0257円から窓を空けて下落した16日と、その翌日17日の下げで下方への流れが決定的となった。強力な下値支持線とみられた75日移動平均線も抵抗感なく下回ってしまった。
この“異常な状況”の背景だが、やはり衆議院選を巡る不透明感が大きいようだ。「与党が過半数を割る?」との連日の報道が、海外筋の不安を煽っているようにみえる。
では、選挙後の株価はどうなるのか。「選挙は水もの」という。仮に報道通りに与党が過半数を割れば、株価にネガティブな材料となるが、すでに相当程度下げているだけに逆に悪材料出尽くしとなり反発するかもしれない。また、与党が過半数を維持すれば、想定外となり急騰することも考えられる。
一方、与党が敗れたとき、株価はさらに一段安に沈むというシナリオもあり得る。その時は8月5日安値の3万1156円が意識されてくるが、国内要因でそこまで一気に下げることは想定しづらい。仮に8月安値を試す展開が生じるとすれば、その要因は11月5日の米国大統領選挙の行方ではないか。
大統領選後の米国株価の先行きを予想するのは困難だ。共和党、民主党どちらが勝つにしても、最大の問題は財政である。この課題がクローズアップされてくるのは、新大統領就任後の2025年2月頃か。逆にいえば、その頃よりこの10年間で米国に渡った数百兆円が日本に環流してくるのかが注目される。わが国の株価にとって最大の材料となり得るだけに、資金の方向を見極めたい。米国株の先行きにどこまで上昇力があるのか、目を凝らすことが肝要だ。
●東京地下鉄、防衛関連などを柱に
さて、当面の物色の対象はどう変わっていくのだろうか。目下、決算発表の時期に入っている。結論からいえば当たり前であるが、内需、ハイテクにかかわらず好決算銘柄に目が向くのは当然である。
そうしたなか、まず注目されるのは、10月23日に新規上場した東京地下鉄 <9023> [東証P]だ。なんといっても国策会社である。株価が下がると困るのは都も国も同じだ。つまり、安全銘柄だ。加えて、予想営業利益率は21%と私鉄大手の2倍以上だ。中長期的な株価上昇が期待される銘柄である。
そして、やはり目が離せないのが防衛関連株だ。IMF(国際通貨基金)の予想によると、年末には世界の公的債務総額は100兆ドル(約1.5京円)を超すという。この背景には各国の防衛予算拡大も一因としてある。
わが国の防衛関連の代表格は三菱重工業 <7011> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]などだ。防衛省のビジネスは利益率がそれなりに高いという。
このほか関連銘柄として日本製鋼所 <5631> [東証P]、島津製作所 <7701> [東証P]、東京計器 <7721> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]なども要注目だ。
好決算といえばキヤノン電子 <7739> [東証P]なども目が離せない。コニカミノルタ <4902> [東証P]も収益改善がみられる。
ハイテクの雄・アドバンテスト <6857> [東証P]や日立製作所 <6501> [東証P]なども株価は高値圏にあるが、一段の活躍が期待される。
中長期的にバブル景気が到来するとみれば、 不動産株もいずれ台頭することになろう。人口減少で不動産株を忌避する投資家も少なからずいるが、ではなぜ地価は上昇しているのかを考えたい。
2024年10月25日 記
株探ニュース