明日の株式相場に向けて=クラッシャー石破、株価復元へ遠き地平
週明け30日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1910円安の3万7919円と急反落。きょうで名実ともに波乱の9月相場が幕を閉じ、あすから10月相場、つまり25年3月期の下期相場入りとなる。8月ほどではないが、9月も前半に大きく下値を探る展開を強いられ、その後は売られた分をすべて取り戻すという上下にボラティリティの高い相場が演出された。しかし、月末になって想定外の激震に見舞われる格好となった。
海外株市場の動向をみる限り株式市場はグローバルではリスクオンである。直近にきて中国上海総合指数と香港ハンセン指数は、ロケット打ち上げを思わせるような俗に言う“火柱高”をみせている。これは特異な例としても、欧州株市場ではドイツの主要株価指数であるDAXが史上最高値圏を更新するなど強気優勢の地合いに陰りはなく、米国株市場でも前週末27日にNYダウが最高値街道に復帰している。
だが、東京市場は“石破ショック”の様相を呈し別世界に迷い込んだ。これは海外株高によるリスクオンの流れを完全に遮断するインパクトがあった。石破新総裁誕生はサプライズだったがそれだけではない。その後の組閣人事も含め、まさに解消したはずの派閥の力学がフルに反映された自民党総裁選の結果であった。市場では「永田町が“政治屋”の集まりであることが今回のイベントで浮き彫りになり、それが株式市場でアナフィラキシー反応的な売りにつながった面もある」(ネット証券ストラテジスト)と表現する。このショック安で、ネット証券では足もと想定外のタイミングで追い証が発生しているという。
今回、13人が初入閣とはいえ刷新されたイメージには程遠く、論功行賞という言葉があまりにも当てはまる組閣人事であった。安倍政権時代の官房長官をあれだけ長く務めた女房役の菅義偉前首相が、アベノミクス批判の急先鋒だった石破政権で副総裁を務めるという違和感。これに、本来は党員支持の多い方に投票するはずの旧岸田派の逆モーションも加わった。一方、キングメーカーの座を追われた麻生太郎副総裁を党最高顧問としての肩書で棚に押し上げ、麻生氏が推した河野太郎デジタル相のほか、上川陽子外相の名前も見られない。上川氏は決選投票で石破氏に票を投じたことを公言したが、今回の出馬に際し、推薦人を麻生派に頼り駆け込みで確保した経緯がある。今回も結局「派閥もどき」の総裁選となり、皮肉にも唯一の派閥を維持している麻生派が、結果的に逆目を引く格好となった。
麻生派では鈴木俊一前財務大臣が総務会長に選出されたが、これは高市早苗経済安全保障担当相に打診して断られたポストがあてがわれた。石破新総裁は2012年の総裁選の際に安倍元首相に決選投票で逆転負けを喫したが、組閣では幹事長に起用された経緯がある。その伏線があることは当然承知のうえ、今回、高市氏が幹事長ポストではなく総務会長が提示された時点で固辞したのは、突っぱねるよりなかったというのが本当のところかと思われる。また、総務大臣に村上誠一郎元行政改革担当相を起用したことも強烈な印象を与えた。反アベノミクスを旗幟鮮明とすることで、「水面下では清和会と宏池会の最終決戦の様相を呈してきた」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する声も聞かれる。
問題は株式市場が早晩立ち直れるのかどうかという点。石破新総裁は10月27日の解散総選挙を前に、経済を映す鏡である株式市場に無頓着というわけにはいかない。金融所得課税の強化は当面眼中にはないと明言し、賃金上昇や物価高抑制などを政策面で支援する構えをリップサービスであっても明示してくるはず。となれば、先物を絡めて売りを仕掛けるような動きも封印されそうだが、かといって3万8000円近辺が買い場という確信は持てない。市場では「近々発表される世論調査の結果をみるまでは方向感がつかめず、見切り発車で買い出動するのはリスクも大きい」(前出のアナリスト)とする。
あすのスケジュールでは、8月の有効求人倍率、8月の失業率、9月の日銀全国企業短期経済観測調査(日銀短観)、日銀金融政策決定会合の主な意見(9月19~20日開催分)、9月の新車販売台数、9月の軽自動車販売台数など。この日は東証スタンダード市場にシマダヤ<250A>が新規上場する。海外では8月の豪小売売上高、9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、9月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、8月の米建設支出、8月の米雇用動態調査(JOLTS)、クックFRB理事の講演など。なお、中国、香港、韓国市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
海外株市場の動向をみる限り株式市場はグローバルではリスクオンである。直近にきて中国上海総合指数と香港ハンセン指数は、ロケット打ち上げを思わせるような俗に言う“火柱高”をみせている。これは特異な例としても、欧州株市場ではドイツの主要株価指数であるDAXが史上最高値圏を更新するなど強気優勢の地合いに陰りはなく、米国株市場でも前週末27日にNYダウが最高値街道に復帰している。
だが、東京市場は“石破ショック”の様相を呈し別世界に迷い込んだ。これは海外株高によるリスクオンの流れを完全に遮断するインパクトがあった。石破新総裁誕生はサプライズだったがそれだけではない。その後の組閣人事も含め、まさに解消したはずの派閥の力学がフルに反映された自民党総裁選の結果であった。市場では「永田町が“政治屋”の集まりであることが今回のイベントで浮き彫りになり、それが株式市場でアナフィラキシー反応的な売りにつながった面もある」(ネット証券ストラテジスト)と表現する。このショック安で、ネット証券では足もと想定外のタイミングで追い証が発生しているという。
今回、13人が初入閣とはいえ刷新されたイメージには程遠く、論功行賞という言葉があまりにも当てはまる組閣人事であった。安倍政権時代の官房長官をあれだけ長く務めた女房役の菅義偉前首相が、アベノミクス批判の急先鋒だった石破政権で副総裁を務めるという違和感。これに、本来は党員支持の多い方に投票するはずの旧岸田派の逆モーションも加わった。一方、キングメーカーの座を追われた麻生太郎副総裁を党最高顧問としての肩書で棚に押し上げ、麻生氏が推した河野太郎デジタル相のほか、上川陽子外相の名前も見られない。上川氏は決選投票で石破氏に票を投じたことを公言したが、今回の出馬に際し、推薦人を麻生派に頼り駆け込みで確保した経緯がある。今回も結局「派閥もどき」の総裁選となり、皮肉にも唯一の派閥を維持している麻生派が、結果的に逆目を引く格好となった。
麻生派では鈴木俊一前財務大臣が総務会長に選出されたが、これは高市早苗経済安全保障担当相に打診して断られたポストがあてがわれた。石破新総裁は2012年の総裁選の際に安倍元首相に決選投票で逆転負けを喫したが、組閣では幹事長に起用された経緯がある。その伏線があることは当然承知のうえ、今回、高市氏が幹事長ポストではなく総務会長が提示された時点で固辞したのは、突っぱねるよりなかったというのが本当のところかと思われる。また、総務大臣に村上誠一郎元行政改革担当相を起用したことも強烈な印象を与えた。反アベノミクスを旗幟鮮明とすることで、「水面下では清和会と宏池会の最終決戦の様相を呈してきた」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する声も聞かれる。
問題は株式市場が早晩立ち直れるのかどうかという点。石破新総裁は10月27日の解散総選挙を前に、経済を映す鏡である株式市場に無頓着というわけにはいかない。金融所得課税の強化は当面眼中にはないと明言し、賃金上昇や物価高抑制などを政策面で支援する構えをリップサービスであっても明示してくるはず。となれば、先物を絡めて売りを仕掛けるような動きも封印されそうだが、かといって3万8000円近辺が買い場という確信は持てない。市場では「近々発表される世論調査の結果をみるまでは方向感がつかめず、見切り発車で買い出動するのはリスクも大きい」(前出のアナリスト)とする。
あすのスケジュールでは、8月の有効求人倍率、8月の失業率、9月の日銀全国企業短期経済観測調査(日銀短観)、日銀金融政策決定会合の主な意見(9月19~20日開催分)、9月の新車販売台数、9月の軽自動車販売台数など。この日は東証スタンダード市場にシマダヤ<250A>が新規上場する。海外では8月の豪小売売上高、9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、9月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、8月の米建設支出、8月の米雇用動態調査(JOLTS)、クックFRB理事の講演など。なお、中国、香港、韓国市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS