【植木靖男の相場展望】 ─円高・ドル安は株高を誘う?!
「円高・ドル安は株高を誘う?!」
●9月の米利下げが変化のタイミングか
日経平均株価は8月5日の底入れから反発し、8月23日高値の3万8424円まで23%も上昇した。かつての1987年ブラックマンデーや1993年ITバブル後の初動の反発を率で大きく上回っている。
だが、その後はこの水準を大きく上放れることなく(30日には3万8669円まで上昇)、といって大きく崩れることもなく高値圏でもみ合っている。3万8000円処を上回っていることからすれば、先行き大きく下げる不安も乏しいとみてとれる。ただ、チャート上は75日移動平均線が位置する3万8600円処での上値の壁は厚いようだ。
高値を抜け切れない最大の要因は円高である。目下、ジリジリと円高・ドル安が進行している。円高というよりドルそのものの弱さが目立つ。これはドルインデックスを見れば明らかだ。このドル安・円高の流れが日本株売りにつながっている。
だが、本当に円高は株安材料なのか。目下の日本経済は内需主導型である。昔は輸出主導型であったから、円安は経済にとってプラスであった。いまは逆である。理屈からすれば、円高は輸入物価を下げ、つれて消費者物価が下がり、国民の暮らしは楽になるはず。
加えて、円高・ドル安が進めば、海外にばらまかれたマネーが国内に環流してくる。マネーの流入が増えれば地価は上昇し、株価は上昇する。
国民はこのことにいつ気づくのであろうか。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げをすれば、案外そのあたりから円高が進んでも株価は大きく下げることはないのかもしれない。筆者は、10月以降に株価は上昇に転じることになるとみている。実際、ブラックマンデーの時も、1993年のITバブルの時も、半年後には高値を更新している。
●10月頃までは波乱含みの展開も
今後の課題は物色の変化だ。過日、米半導体大手のエヌビディア<NVDA>の決算発表があった。結果は期待通りの大幅増収増益であった。だが、株価は逆に下がってしまった。これをみて多くの投資家はテック株人気が終わりつつあることを感じたと思う。とはいえ、これまでのマーケットの体質は容易には変わらない。その成長性を信じてしばしば再騰に期待をかけることになろう。その場合、主力株を避けて部品株などが物色されることになろう。
しかし、全体的には小売り、運輸、電力、非鉄、化学、それに不動産などに取っ替え引っ替え、手を出すことになりそうだ。
当面、注目されるのは誰が買い手となるかだ。市場は年金の買いに期待を寄せている。株価急落で買い余地が出てきたからだ。
ただ、注意したいのは10月頃まで波乱含みの展開も予想されることだ。過去の暴落時でも、常に底値圏での波乱が観測されている。よって、ここからは危機対応を考えて投資することが肝要だ。つまり、逃げる時には損を出しても早く市場から手を引くことが望まれる。
上記の観点から、今回は次のような銘柄に注目したい。まずは防衛関連の三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、東京計器 <7721> [東証P]、日本製鋼所 <5631> [東証P]。 非鉄市況が上向くことでSWCC <5805> [東証P]、また出かかって叩かれた日本空港ビルデング <9706> [東証P]、大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]。ハイテク株からは三菱電機 <6503> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、NEC <6701> [東証P]、太陽誘電 <6976> [東証P]。また、意外性のあるのが電力・ガスだ。東京ガス <9531> [東証P]、関西電力 <9503> [東証P]などに妙味がありそうだ。
2024年8月30日 記
株探ニュース