オーバル Research Memo(3):2024年3月期は各部門が伸長し、営業利益・経常利益は過去最高を記録
■オーバル<7727>の業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、世界的な金融引き締め政策による景気の冷え込みに加え中国経済の景気減速など、先行き不透明な状況が続いた。わが国では、インバウンド需要やサービス消費は増加傾向にあるものの為替が円安基調で推移し、中小企業を中心に物価上昇に賃金増加が追い付かない状況が続き、個人消費の弱さが経済を下押しするなど、先行きは予断を許さない状況であった。
このような経済環境下、同社グループでは「中期経営計画『Imagination 2025』」を着々と推進した。その結果、2024年3月期の連結業績は、受注高14,985百万円(前期比8.4%増)、売上高14,347百万円(同7.8%増)、営業利益1,475百万円(同33.5%増)、経常利益1,572百万円(同28.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,102百万円(同69.8%増)の増収増益決算であった。期初予想比では売上高は4.7%、営業利益は31.7%、経常利益は29.9%、親会社株主に帰属する当期純利益は36.0%、それぞれ上回って着地し、特に営業利益と経常利益は過去最高を記録した。その結果、各段階の利益率(売上比)は、いずれも上昇している。
売上高の増収は、好調なセンサ部門をはじめ、各部門が伸長したことによる。また、営業利益の増益は、増収に伴って、工場で製作に関わる人件費などの固定費比率が低下したことによるものだ。また、Anton Paarとのライセンス契約に伴う一時金も、受注高・売上高・営業利益に大きく寄与した。なお、親会社株主に帰属する当期純利益の前期比増加率が高いのは、前期に計上したAnton Paarの買収提案を判断する際に要したアドバイザリー費用など、特別損失が大きく減少したことによる。最終的には、Anton Paarとは業務提携をすることで合意している。中期経営計画の2年目であったが、すべての項目について最終年度(2025年3月期)の数値目標を1年前倒しで達成しており、極めて順調な決算であったと評価できる。
事業部門別の業績を見ると、主力のセンサ部門では、受注高は10,305百万円(前期比5.5%増)であった。これは、国内は半導体関連業界向けが足元で一服している影響で前期より減少しているが、化学関連業界向けが素材市場などを中心に堅調だったことによる。また、海外も中国・韓国の子会社で、電気自動車など電池関連業界向け販売などが好調を維持した。売上高も9,937百万円(同7.6%増)であった。これは、受注高と同様に、国内では化学関連業界向けが堅調だったこと、半導体関連業界向けについては第3四半期までの受注分を出荷したことによる。すなわち、半導体業界の活況に伴う部材不足に伴って、先行して受注した分を順調に消化したものだ。また、海外も中国・韓国で電気自動車用の電池関連業界向けが好調だった。なお、海外ではオーストリアAnton Paarとのライセンス契約に基づき、知的財産のライセンスの対価である契約一時金収受に伴う受注高・売上高の計上が第2四半期累計期間にあり、収益確保に寄与している。なお、センサ部門の売上高が、2021年3月期に大きく落ち込んだのは、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)での先行き不透明感による設備投資先送りの影響を大きく受けたものだ。
システム部門では、受注高は1,986百万円(前期比25.2%増)と大幅に増加した。これは、海外は低迷した一方、国内では国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産業技術総合研究所)への「石油流量標準設備 更新・点検整備・改修作業」や、食品関連業界向け及び防衛省向けの大口案件受注があったことによる。特に産業技術総合研究所からの受注については、同社がJCSS事業者で、国家標準による校正・試験サービスを安定かつ継続的に行う技術力が高く評価された結果と同社は考えている。一方、売上高は1,724百万円(同8.9%増)であった。これは、海外については前期の受注減などから低迷しているが、国内大口案件で工事進行基準適用による一部の売上計上があったことによる。
サービス部門では、受注高は2,694百万円(前期比8.9%増)、売上高は2,685百万円(同7.8%増)であった。これは、主要顧客の石油関連業界では、業界再編、脱炭素社会に向けたエネルギー置換など厳しい市場環境が続くなか、保全計画サポートサービスなど地道できめ細かいメンテナンス活動を継続していることによる。また、他商品のメンテナンス事業や校正事業の強化の一環として、2023年1月に京浜計測(株)の全株式を取得し、第1四半期より損益計算書を連結したことも増収に寄与した。なお、サービス部門の売上高が2021年3月期に若干落ち込んだのは、センサ部門同様にコロナ禍によるものだが、影響は小さく、サービス部門はセンサ部門やシステム部門に比べて安定した売上高を計上しており、景気に大きく左右されない部門である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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提供:フィスコ