貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6920 レーザーテック

東証P
16,585円
前日比
-340
-2.01%
PTS
16,660円
23:55 11/28
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
20.2 10.39 1.74 21.41
時価総額 15,637億円
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デリバティブを奏でる男たち【82】 スコーピオンのキル・カロン(前編)


 今回は、昨今の東京株式市場において投資家の人気が非常に高い半導体検査装置メーカー、レーザーテック <6920> [東証P]を標的としている、アクティビスト(物言う株主)であり、ショートセラー(空売り投資家)でもあるスコーピオン・キャピタルを取り上げます。

 スコーピオンが2024年6月5日に公表したレーザーテックの不正会計を疑うレポートの冒頭には、「カチカチと秒読みをはじめた時限爆弾。場所は日本。厖大な詐欺を働いている企業がある。株式市場で売買代金首位の銘柄だ」などといった辛辣な言葉が並んでいました。このようなレポートを作成するスコーピオンの創業者とは、どのような人物なのでしょうか。

◆創業者の生い立ち

 スコーピオンを創業したグルキラット・カロン(Gurkirat Kahlon、通称キル・カロン)は、1970年にインドで生まれました。7歳の時に米カリフォルニア州のサンフランシスコに引っ越しています。インド人の両親は息子が医者になることを願っていました。彼は高校生のとき、スピーチやディベート(異なる立場に分かれて特定の議題を議論すること)に専念するようになり、法学にも興味を持ちます。そのため、将来は大学に進学して医者か、弁護士になると思っていたそうです。

 しかし、1992年にカリフォルニア大学バークレー校を最優秀の成績で卒業した後、彼は自分が何をしたいのか分からなくなってしまいます。医学部や法科大学院に進学することなく、報酬の高さもあって、1993年に世界3大コンサルティング会社のひとつであるベイン・アンド・カンパニー(あとの2社はマッキンゼー・アンド・カンパニーとボストン・コンサルティング・グループ)に就職します。このベインでの3年間で、カロンは貴重な洞察や調査能力、分析能力を身に付けました。

 ベインでは彼の母国であるインドでしばらく働いていたそうです。当時のインド株式市場は非常に非効率的であり、「インサイダー情報がないのに、なぜ株式投資をするのか」などと言われるほど、適正な資本市場からかけ離れた状況だったようです。このような市場には、詐欺の告発レポートが書ける企業が数多く存在していた、といいます。

 1996年にベインを退職すると、カロンはハーバード・ビジネス・スクールで経営学を学びます。1998年にMBA(Master of Business Administration、経営学修士)を取得した後は、シリコンバレーで6年間、仕事をしました。この頃はITバブルの形成と、その崩壊が起きています。彼はハイテク業界の知見を得ると同時に、同業界の危険なほど宣伝的な体質と、それが人々の思考を狂わす可能性があることを目の当たりにしたのです。

◆乗っ取り屋からタイガーカブへ

 2004年にはグリーンメイラーとか、乗っ取り屋とも言われた著名なアクティビスト、カール・セリアン・アイカーン(Carl Celian Icahn、通称カール・アイカーン)に師事するようになりました。グリーンメイラーとは、投資対象の企業や経営陣に保有株を高値で買い取らせる敵対的買収者のことです。米ドル紙幣(Greenback)と脅迫状(Blackmail)を組み合わせた造語とされます。アイカーンは一時、オマハの賢人と称されるバークシャー・ハサウェイ<BRK.B>のウォーレン・バフェットより稼いだといわれています。そのアイカーンのユニークな思考プロセスと複雑な状況を分析する能力を身近で目撃できたことは魅力的で貴重な体験だった、とカロンは語っています。

 しかし、彼との仕事は非常に厳しく、怒鳴られることは日常茶飯事だったそうです。そのため、長く仕事をするところではないと見切り、次の職場として第20回で取り上げたチャールズ・ペイソン・コールマン3世(通称チェイス・コールマン)率いるタイガー・グローバルに移籍しました。

 コールマンは、第2回で取り上げたジュリアン・ロバートソン(1932-2022)のヘッジファンド、タイガー・マネジメントでテクノロジー・アナリストを担当していたタイガーカブ(子トラ)です。後に創設したタイガー・グローバルは、ハイテク分野で急成長している上場企業への投資を目的とし、ロングショート戦略が中心でした。ここでカロンは同戦略の手法を身に付けます。コールマンやロバートソンに関しては以下をご参照ください。

▼タイガー・グローバルのチェイス・コールマン(前編)―デリバティブを奏でる男たち【20】―
https://fu.minkabu.jp/column/1304

▼タイガー・マネジメントのジュリアン・ロバートソン(前編)―デリバティブを奏でる男たち【2】
https://fu.minkabu.jp/column/945

 カロンは2009年にはオーストラリアの保険会社、ステッドファスト・グループに転籍し、そこで株式のロングショートを中心とした運用を担当します。2013年から不正会計などの詐欺や過大宣伝の特定に重点を置いて、空売りに特化した投資対象の発掘と調査活動を始めました。そして、2015年に金融アドバイザリー会社としてスコーピオン・キャピタルを創設しています。

(※続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック

◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):
証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。


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