萩原電気HD Research Memo(1):トヨタグループを主要顧客とする半導体商社
■要約
萩原電気ホールディングス<7467>は名古屋を基盤とする半導体、電子部品、電子機器の商社及び自社製品の開発・製造・販売メーカーである。売上高の約89%が自動車関連企業向けで、トヨタ自動車<7203>、デンソー<6902>をはじめとしたトヨタグループを主要顧客に持つ。近年はソリューション事業に注力している。
1. 2024年3月期連結業績(実績)
2024年3月期の連結業績は、売上高が225,150百万円(前期比21.0%増)、営業利益が7,711百万円(同14.7%増)、経常利益が7,221百万円(同12.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,421百万円(同10.0%減)となり、売上高・営業利益・経常利益ともに過去最高を更新した。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、前期に負ののれん発生益670百万円を特別利益として計上したことの反動減による。主要顧客である自動車関連企業の生産が順調に回復したこと、採用車種が拡大したこと、以前から取り組んできた新規案件が立ち上がったこと、円安等により大幅増収となった。一方で、売上総利益率は製品構成の変化や在庫の評価損計上などにより同0.9ポイント低下し8.9%となったが、増収により売上総利益は20,003百万円(同9.8%増)となった。販管費は同7.0%増に留まったことから営業利益、経常利益は増益となり3期連続で過去最高を更新した。好業績を反映して、年間の配当を185円(前期は155円)へ増配した。
2. 2025年3月期連結業績(予想)
2025年3月期の連結業績は、売上高で269,000百万円(前期比19.5%増)、営業利益で7,900百万円(同2.4%増)、経常利益で7,100百万円(同1.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益で4,600百万円(同4.0%増)と予想されている。セグメント別の予想は開示されていないが、デバイス事業、ソリューション事業ともに増収増益を見込んでいる。売上高の伸びの割に営業利益の増加が少ない予想になっているが、会社は「デバイス事業の売上高比率が高くなる見込みであることに加えて、新中期経営計画(詳細後述)の初年度に投資を先行させるため」と述べている。ただし、利益については控え目な予想と思われ、売上高が予想を達成できれば、営業利益は予想を上回る可能性が高いと弊社では見ている。また年間配当については、2025年3月期から配当性向30~40%を目安としていることから、現時点では185円(中間期90円、期末95円)を予定しているが、今後の業績によっては増配の可能性もありそうだ。
3. 新中期経営計画:2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円を目指す
同社は新たに、2027年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画「Make New Value 2026(「MNV2026」)」を発表した。外部環境変化を考慮した成長ステージに向けた構造変革・事業基盤の確立を目的とし、重点方針として「企業価値向上~稼ぐ力の向上~」を掲げている。これを達成するために3つの構造改革(事業構造、資本生産性、人的資本)と6つの重点戦略(デバイス事業戦略、ソリューション事業戦略、ビジネスイノベーション戦略、経営管理高度化戦略、人材戦略、ESG推進)を遂行していく方針だ。また計数目標として、2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円、ROE11%以上、配当性向30~40%を目指す。同社がこの計画に沿って今後どのように変わっていくか注目したい。
■Key Points
・自動車関連企業向けが売上高の約89%を占める半導体商社。ADAS(先進運転支援システム)やIoT関連にも展開
・2024年3月期は前期比14.7%の営業増益、2025年3月期も同2.4%の営業増益と過去最高益を目指す
・新中期経営計画の目標は2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円、ROE11%以上
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》
提供:フィスコ