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6390 加藤製作所

東証P
1,310円
前日比
+31
+2.42%
PTS
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業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
0.30 38.90
時価総額 154億円
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加藤製作所 Research Memo(1):創業以来130年近い歴史を持つ大手建設機械メーカー


■要約

加藤製作所<6390>は1895年の創業(個人事業)以来、130年近い歴史を持つ大手建設機械メーカーである。経営理念に「優秀な製品による社会への貢献」を掲げ、社会インフラ構築に欠かせない建設機械メーカーのパイオニアとして、現在は建設用クレーンや油圧ショベルを主力として事業展開している。顧客の要望に応えて「頑丈」「力強い」「操作しやすい」といった顧客視点の製品づくりを特徴としており、顧客から高い信頼を得ている。

1. 建設用クレーンと油圧ショベルが主力
建設用クレーンの主要製品はラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーン、油圧ショベル等の主要製品は油圧ショベル、ミニショベル、クローラキャリア、そのほかの主要製品は路面清掃車、万能吸引車、スノースイーパなどである。品目別の売上高構成比はおおむね建設用クレーンが6割、油圧ショベル等が4割弱、全体の海外向け売上比率はおおむね3割前後で推移している。同社の市場におけるポジションとしては、建設用クレーンでは大手、油圧ショベルでは中堅という位置付けである。新製品開発では2023年3月に世界初の「ハイブリッドラフター(ラフテレーンクレーン)」製品化計画を発表した。中期経営計画で掲げているSDGs、環境配慮型機種の第1弾として、本製品の製造・販売により環境保全の一翼を担うことを目指す。なお中国事業については厳しい事業環境が継続しているため、中国2拠点の合理化を前提とした根本的な事業の見直しを行う方針とした。

2. 2024年3月期は前回予想を上回る大幅増益で収益回復基調
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.1%減の57,498百万円、営業利益が同31.4%増の1,654百万円、経常利益が同38.1%増の2,575百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同76.3%増の4,235百万円だった。収益性重視戦略が奏功して前回予想(2024年2月13日付修正値)を上回る大幅増益で着地し、収益回復基調が鮮明となった。売上面は、一部の建設用クレーンの主要部品供給制約が継続したことに加え、中国における厳しい販売環境の影響もあり、全体として横ばいにとどまったが、営業利益は収益性重視戦略による売価・原価・製品構成改善効果、アフター部品の拡販効果、為替の円安効果などにより、販管費の増加を吸収して大幅増益だった。なお特別利益ではKATO WORKS (THAILAND) CO.,LTD.の解散・清算に伴い固定資産売却益1,417百万円を計上、特別損失では加藤(中国)工程机械有限公司の生産一時停止に伴う減損損失764百万円、及び事業構造改善費用121百万円を計上した。また繰延税金資産の回収可能性を見直して法人税等調整額を1,386百万円減(利益)計上した。

3. 2025年3月期は大幅増収・大幅営業増益予想、当期純利益予想は未定
2025年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比21.7%増の70,000百万円、営業利益が同27.0%増の2,100百万円、経常利益が同41.8%減の1,500百万円と、大幅増収・大幅営業増益予想としている。売上面では2024年4月に販売を開始した60t吊り新型ラフテレーンクレーン「SL-600RfIII」をはじめ、最新の排出ガス規制に適合したエンジンの採用により、部品供給制約の影響が解消するため、国内の生産・販売台数の増加がけん引する形で全体として大幅増収を見込んでいる。利益面では増収効果に加え、収益性重視戦略による売価・原価改善効果が進展することも寄与する見込みだ。経常利益については為替影響が不透明であることを考慮して為替差益などを見込まず減益予想としている。親会社株主に帰属する当期純利益及び配当については未定としている。中国事業の根本的な見直し(生産一時停止、合弁解消)及びインドにおける新事業など、海外事業ポートフォリオ見直しの影響を精査中のため判明次第公表するとしている。新製品効果で拡販の加速が期待されること、収益性重視戦略による売価・原価改善効果が一段と進展することなどを勘案すれば、会社予想(営業利益、経常利益)に上振れの可能性があるだろうと弊社では考えている。

4. 中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の進捗は順調
同社は中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)を策定し、収益性重視戦略を推進した結果、計画1年目の2023年3月期は営業黒字転換を達成、計画2年目の2024年3月期は売上原価率の改善が進展して大幅営業増益を達成した。そして計画最終年度となる2025年3月期の営業利益は当初計画値に届かないものの、主要部品供給制約の解消や売上原価率改善の進展により大幅営業増益の見込みとしている。新製品投入によって拡販が加速すること、収益性重視戦略による売価・原価改善効果が一段と進展することに加え、中国に代わる新たな主要市場としてインド及びその周辺国を含めた商圏の拡大を推進する方針を打ち出したことなどを勘案すれば、中期経営計画の進捗はおおむね順調と弊社では考えている。なお、2023年3月31日時点でプライム市場の上場維持基準のうち「流通株式時価総額」が基準に適合していなかったが、中期経営計画で掲げた戦略の着実な遂行によって業績が回復基調となったことに加え、株主還元の充実やIRの強化を含めた各種取組を推進し、2024年3月31日時点においてプライム市場の上場維持基準のすべてに適合した。また2024年5月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」をリリースし、資本効率の改善を重要な経営課題の1つに据え、今後策定を予定している2026年3月期を初年度とする次期中期経営計画において、関連指標に係る具体的な中期目標を開示し、計画達成に向けた各種施策を推進するとした。

5. 業績の急回復を評価、次期中期経営計画に注目
同社は現在の中期経営計画の期間(2023年3月期~2025年3月期)を、徹底した収益性改善施策の推進によって利益を回復する期間と位置付けて、売上高よりも利益を優先した販売戦略を推進している。そして2023年3月期に営業黒字転換、2024年3月期に大幅営業増益を達成し、2025年3月期も大幅営業増益予想としている。主要部品の供給制約や中国市場の事業環境悪化など、同社にとって事業環境は決して順調ではなかった状況でも、収益性重視戦略によって売上原価率を着実に改善し、業績が急回復した点を弊社では高く評価している。今後は、新製品によって主要部品供給制約が解消されるとともに拡販が加速すること、事業環境の厳しい中国事業の見直しとインドを中心とする新たなグローバル展開を開始する見込みであること、収益性重視戦略によってさらなる利益率改善が期待されること、株主還元を強化する方針であることなどが注目点となり、次期中期経営計画に注目したいと弊社では考えている。

■Key Points
・130年近い歴史を持つ大手建設機械メーカーで、建設用クレーンや油圧ショベルが主力
・2024年3月期は前回予想を上回る大幅増益で収益回復基調
・2025年3月期は大幅営業増収・大幅営業増益予想、当期純利益予想は未定
・中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の進捗は順調
・業績の急回復を評価、次期中期経営計画に注目

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《AS》

 提供:フィスコ

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