デリカフHD Research Memo(8):長期売上目標1,000億円の達成に向け新たな成長戦略を始動(2)
■今後の見通し
(3) 事業戦略
a) 各種ポートフォリオの変革
デリカフーズホールディングス<3392>は前中期経営計画において事業ポートフォリオの変革を推進したが、今中期経営計画においても各種ポートフォリオ(事業・顧客・商品)の見直しを進め、経営基盤の拡充と収益性の向上に取り組んでいく。事業ポーフォリオについては、物流事業やBtoC事業の経営強化を進め、青果物事業のみに依存しない体制の構築を進めていく。物流事業では「2024年問題」により物流費が上昇するなかで、受託物流サービスを拡大する好機になると同社は見ている。BtoC事業においては、新設した食品事業部において付加価値型商品の開発販売を強化し、販路の拡大も進めていくことで育成する方針だ。物流事業とBtoC事業を合わせた売上構成比を2024年3月期の12%から2027年3月期に15%まで引き上げることを目標とする。
顧客ポートフォリオについては、将来性や収益性を基に取引口座数の適正化を進めていくほか、市場環境の変化に影響を受け難いポートフォリオへの変革を進める方針だ。業界別売上構成比では、外食以外の比率を2024年3月期の約25%から2027年3月期は約28%に引き上げていく。
商品ポートフォリオについては、従来のホール野菜やカット野菜に加えて、加熱野菜や冷凍野菜、加工野菜、ミールキットやスープ・調味液も含めた「加工度の高い商品」を育成し収益性向上を図るほか、これら付加価値商品を海外やBtoC市場など新規市場拡販にも取り組んでいく。
b) 青果物サプライチェーンの構造変革
従来のサプライチェーンを抜本的に見直し、持続可能且つ機能的な青果物流通インフラへの変革を推進していく。主には、輸入比率の高い野菜について国内での調達比率を引き上げていくほか、安定供給体制をさらに強化すべく、長期保存技術を確立するとともに貯蔵集出荷拠点の設置計画を進める方針だ。輸入品の国産化によって仕入コストは上昇することになるが、顧客と売価交渉を進め粗利益に影響を与えない範囲で、徐々に転換していくことにしている。
また、業務提携先との協業体制の確立により、栽培・流通・加工におけるサプライチェーン全体の合理化を進め持続可能な農業と流通体制の構築を進めていく。同社は2023年2月にエア・ウォーター及び青果物の卸販売大手であるベジテックと3社業務提携を発表し、2024年3月には新たに精米卸販売の最大手である神明ホールディングスも加わり、4社による協業体制を構築しており、現在、各社が構築しているサプライチェーンの再構築に取り組んでいる。各社のリソースを共有化することによる合理化効果は大きいと見られ、収益性向上に寄与する取り組みとして注目される。
c) 研究部門・開発部門への投資拡大
既存事業の継続的な改善、事業領域の拡大に向け、各種研究・開発部門の強化を図り、将来の成長エンジンへとつなげる。開発テーマとしては、青果物の長期保存技術の確立や付加価値の高い商品開発、青果物を基軸とした新規事業の開発などを推進していく。
(4) 財務戦略
財務戦略としては、キャッシュ・フローの配分適正化を進めていくほか、大型投資が一巡したことによる株主還元の強化(後述)や資本コストを意識した経営に取り組んでいく。キャッシュアロケーションとしては、今後3年間で獲得する営業キャッシュ・フロー約60億円を企業価値拡大につながる成長戦略投資や設備の維持・更新投資(30~40億円)、株主還元(8~10億円)などに充当する方針で、営業キャッシュ・フローを超える資金需要が発生した場合には借入金等で調達していくことになる。また、ここ最近はM&A案件も多く持ち込まれるようになってきており、シナジーが見込める案件であれば前向きに検討していく。
資本コストを意識した取り組みについては、中長期的な企業価値向上に対する役職員のコミットメント強化(役員・幹部社員を対象としたインセンティブの付与、従業員持株会加の促進)を図るとともに、IR活動の強化を通じて適切な情報開示を図るとともに認知度を広げ、また期待収益率を踏まえたKPIの達成に取り組むことで企業価値の向上につなげていく考えだ。なお、想定する株主資本コストについては5~10%の水準を想定しており、ROEは10%以上の水準を目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ