Jストリーム Research Memo(9):スポット的利用が伸び悩むも、長期プラットフォーム案件は伸長
■Jストリーム<4308>の業績動向
2. 市場別の売上動向
2024年3月期の市場別(同社個別、旧基準)の売上動向は、医薬領域が4,011百万円(前期比11.7%減)、EVC領域が2,740百万円(同7.6%減)、OTT領域が2,592百万円(同9.3%増)となった。主力の医薬領域では、大口顧客の販促活動縮小の影響を受け、減少となった。また、新型コロナウイルス感染症の5類移行によるリアル回帰の影響を受け、EVC領域で減収となったが、コロナ禍の巣ごもり消費でネット視聴の習慣が定着したこと、放送局のDX推進を背景にOTTが着実に売上を増やした。また、リアル回帰によりスポット的利用は減少したが、契約期間が3ヶ月以上のストック性が強い長期プラットフォーム案件が引き続き伸長したほか、各領域で2025年3月期に向けた動きを加速した。
医薬領域においては、薬価改定への対応や日本市場の相対的な地位低下などを背景に、コロナ禍に比べてWeb講演会用途のライブ配信やイベント実施に伴う集客・諸手配といった領域で、注力の度合いが低下した状況が続いた。同社の主要顧客も、薬剤の上市や特許切れなどのタイミングに違いはあるものの、予算制限に伴うライブイベント実施件数を絞り込む一方、マーケティング効果を高める広告・集客を重視する傾向が強まった。このため同社は、付加価値の高いWeb講演会関連のデータ分析ツール「WebinarAnalytics」の提案を強化している。2024年3月期下期には未受注の大手企業や中堅企業を中心にWeb講演会ニーズの発掘に努めたが、ライブ配信や関連するWeb制作、映像制作などを含めた全体の売上高が減少した。製薬企業を主要顧客とする連結子会社2社についても、同様の環境下で低調な実績となった。
EVC領域においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行がリアル回帰を後押しし、販売促進のためのWebセミナーなどのスポット的利用については、前期需要の反動減が顕著となった。一方、コロナ禍をきっかけに定着が進んだ社内外情報共有や広報・採用用途での利用については、比較的堅調に推移した。こうしたなか同社は、動画配信から得られる効果について情報提供を進めつつ、情報共有や教育など各社のニーズに合ったサービスの提供を強化している。2024年3月期下期には、「J-Stream Equipmedia」の専任営業チーム新設による新規顧客獲得や、上期に構築した代理店販売戦略に沿ったパートナー販売の拡大を図った。また、2023年10月から本格的に代理販売を開始したVideoStepは、主要サービスとの連携を図りつつ、既存顧客の新たな需要発掘や新規顧客の獲得に向けて販売を進めた。さらに、企業の動画制作の内製化を支援する「内製化支援サービス」の提供も開始しており、引き合いのある企業を皮切りに案件の獲得を進めるとともに、既存顧客にも新たなサービスとして提供することを検討している。これらの結果、「J-Stream Equipmedia」や「J-Stream CDNext」の定常的な利用に関しては堅調に推移した。
OTT領域においては、放送局のネット配信サービス拡充に伴うシステム開発や、サイト運用及び関連するWeb制作、前期に大口のコンテンツ配信システム開発を納品した専門チャンネル事業者に対する運用サービスの提供などにより、売上高は継続的に伸長した。コロナ禍の巣ごもり消費で根付いたネット視聴習慣や、視聴端末、動画配信サービスの普及を背景に、OTT領域における高度なノウハウを必要とするWebサイト運用やサービス開発には引き続き高い需要があると同社では考え、2024年3月期下期に入って、放送局などのDX推進とエンターテイメント市場向けソリューションサービスを強化した。放送局などのDX推進では、既存放送局の旺盛な開発ニーズに応えるべく、運用案件新技術・新サービスの提案によって継続的な長期売上の積み上げを図るとともに、各種スポーツイベントや時節もの・入札案件の獲得にも注力した。エンターテイメント市場向けソリューションサービスでは、既存顧客事例の横展開による顧客層の拡大に加え、マルチアングルやマストバイキャンペーンなどの提案を継続した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《HH》
提供:フィスコ