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【特集】猛暑の夏に電気代再上昇、ニーズ急増機運の「省エネ投資」厳選6銘柄 <株探トップ特集>

電気料金の上昇は家計だけでなく企業収益にもマイナスの影響をもたらす。サプライチェーン全体で脱炭素化を加速させようという機運が高まっており、省エネ投資が活発化しそうだ。

―コスト負担増で企業の対応急務、サステナ情報開示で中堅・中小も脱炭素化加速へ―

 電気料金に再び上昇圧力が掛かっている。2023年1月に導入された物価高対策としての電気・ガス代の補助事業が今年6月請求分までで終了となるほか、再生可能エネルギーの普及を目的に電気代に上乗せされる賦課金が増額されたためだ。こうしたなかで今年の夏は猛暑となると予想されている。電力単価と使用量の増加による企業収益のマイナスの影響が懸念される半面、電気料金の削減を促す製品・サービスの需要が拡大するとの見方もあって、省エネ投資関連銘柄に対する投資家の関心が集まりつつある状況だ。

●電力大手10社中8社で過去最高額

 気象庁が5月21日に発表した8月までの3カ月予報では、全国的に気温は高くなる見通しだという。観測史上で平均気温が最も高くなった前年のような猛暑が到来する可能性も指摘されている。冷房の使用を控えるのが難しい夏場が迫るなか、今年7月に請求される分の電気料金は、電力大手10社のうち、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]と中部電力 <9502> [東証P]以外の8社が、標準的なモデルで過去最高額となった。東電管内でも、標準的なモデルの料金は8930円と前月比で392円増え、過去最高額の水準に迫ることとなる。

 電気代の上昇の背景にあるのは、物価高を受けて政府が実施していた補助金が7月請求分から終了となることに加え、再エネ関連の賦課金が引き上げられたためだ。円安基調が続くなかでLNG(液化天然ガス)など海外から輸入する火力発電用の燃料の価格が高止まりしている点も、電気料金の下落を妨げる要因となっている。電気料金の再上昇と猛暑のダブルパンチは、6月からの定額減税による国内消費へのプラス効果を相殺する恐れがある。

 個人消費にとどまらず、小売やサービス業、国内に主要な製造拠点を構える企業にとって、電気代の上昇は収益を圧迫する負の要因となるのは言うまでもない。また、AIの普及に伴って半導体工場やデータセンターの新設が相次ぐとみられる状況下で、電力消費量は将来的に一段と増加すると想定されている。電力の需給状況がひっ迫するシナリオが横たわるなかで、社会全体での省エネ化が進まなければ、電力網に大きな負荷が掛かり続けたままとなる。

●サステナ情報開示で脱炭素化の取り組みが加速へ

 こうした状況のもと、企業の省エネ投資の促進に向けて一翼を担うと期待されているのが、上場企業に対するサステナビリティー情報の開示制度である。日本の「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が今年3月に公表した開示基準の草案では、自社の温暖化ガスの排出分だけでなく、サプライチェーン上の排出分の開示を求める方針が示された。時価総額の大きな一部の東証プライム上場企業には、早ければ27年3月期にも適用が義務付けられるとみられている。

 大企業が取引先の中堅・中小企業の省エネ対策を促さなければ、金融の世界から 脱炭素化に消極的な企業とみなされることとなり、ESG(環境・社会・ガバナンス)ファンドに組み入れられずに株価が劣後するという事態が、将来的に起こりうる話となるわけだ。他方、脱炭素化に貢献できない中堅・中小企業は、大手企業との取引が打ち切られるリスクが高まることとなる。

 電力業界で進む効率的な送配電網の構築に歩調を合わせて、企業サイドでは既存のビルや工場をエネルギー消費量の少ない「スマートビル」や「スマート工場」に置き換えようとする取り組みが進められてきた。上場企業に対するサステナ情報の開示義務化に向けた潮流や、エネルギーコストが高止まりする足もとの状況は、企業の省エネ投資を一段と加速させる公算が大きい。これらの観点のもと、業績拡大が期待できる関連銘柄をいくつかピックアップしていく。

●省エネ投資活発化で飛躍期待の6銘柄

◎アズビル <6845> [東証P]

 計測・制御機器大手で、ビルや工場向けに省エネ化につながる製品やサービスを展開。25年3月期の売上高と営業利益は過去最高だった前期の水準を上回る見込みだ。ビル向けの事業環境が引き続き堅調に推移するほか、工場向けでは下期以降、生成AIの普及に伴う半導体製造装置分野での需要回復を予想する。米MSCI指数銘柄からの除外が5月に発表され、パッシブ系ファンドによる売り圧力が強まって株価は水準を切り下げたものの、省エネ対策需要の高まりが同社の業績にとってフォローの風となっているのには変わりがなく、押し目買いの好機として捉えたい。

◎グリムス <3150> [東証P]

 企業の電力使用量を削減するためのコンサルティング事業を展開する。25年3月期の最終利益予想は前期比22.0%増の43億2000万円と、連続最高益更新を計画するなど業況は絶好調で成長路線をまい進している。同社は自家消費型の 太陽光発電の需要については今後、大幅に拡大すると予想。蓄電池や省エネ設備などの販売も増加が十分期待できる状況にある。株価は5月末以降、急速に切り返し、今月に入り年初来高値を更新したものの、21年の高値3205円からはまだ距離がある。2400円前後で推移する同社株の水準修正の余地は広いと言えるだろう。

◎遠藤照明 <6932> [東証S]

 商業用LED照明を展開する。トップラインを順調に伸ばしており、25年3月期の売上高予想は従来の中期経営計画で示した水準を上回る前期比2.5%増の530億円に設定。営業利益率は10%を見込む。細かく照明を制御して省エネを実現する無線コントロール照明システム「Smart LEDZ」の販売が大きく伸びており、引き続き成長に向けたエンジン役となりそうだ。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っていることもあって、資本効率の向上策にも期待が膨らむ。

◎正興電機製作所 <6653> [東証P]

 受変電設備などが主力。九州電力 <9508> [東証P]との関係が深く、熊本県での巨大な半導体工場の新設に伴う業績面でのプラス効果がかねてから期待されてきたが、4月には24年12月期第2四半期累計(1~6月)の連結業績予想を見直し、従来の経常減益予想から一転して前年同期比25.4%増の11億9000万円に見直した。太陽光発電関連製品の販売が好調に推移しているが、工場やオフィスなどに向けたこれまでの設備納入実績から、省エネ化に向けたニーズの高まりが今後の業績の更なる押し上げに寄与する可能性が高い。通期ベースでも24年12月期は過去最高益を予想しており、21年の上場来高値2615円の奪還シナリオが横たわった状況だ。

◎朝日工業社 <1975> [東証P]

 オフィスや工場などの空調・給排水設備の設計・施工・管理などを展開。25年3月期の最終利益予想は資材価格の高騰などの影響を織り込み、前期比16.5%減の31億円と過去最高益だった前期と比べ減益を見込む。ただ同社はゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の実現に向けた研究開発に注力しており、室内の熱除去に向けた液冷空調システムなどの技術について今後、オフィス以外に工場やデータセンター向けに適用が進むか注視される。太陽光や風力など自然エネルギーを活用した冷暖房システムに関する技術も、産業界全体で脱炭素化に向けた取り組みが求められるなかにあって、中期的に収益貢献が見込めそうだ。配当利回りは4.4%台と高水準。PBRは0.9倍にとどまっている。

◎ポート <7047> [東証G]

 人材支援サービスとともに、電力・ガス事業者に向けた販促支援サービスを手掛け、25年3月期の最終利益予想は前期比27.0%増の18億5000万円と前期に続き連続最高益の見通し。売上高予想は同26.9%増の211億円と事業規模は急拡大している。エネルギー領域での成約単価は上昇が継続すると想定。シェア拡大に向けた投資の実行により、成約件数の更なる拡大へ攻めの姿勢を鮮明とする。電気代やガス代の見直しを考える家庭や個人事業主の増加が見込まれるなか、新電力を含めた事業者のプランを提案し契約の手続きまで担う「エネチョイス」の引き合いが一段と増えそうだ。

 このほか、省エネ投資の関連銘柄として、ビルや工場向けの設備工事を担う三機工業 <1961> [東証P]や業務用空調機の木村工機 <6231> [東証S]、木質バイオマス発電とともに省エネ支援サービスを手掛けるエフオン <9514> [東証S]などもマークしたい。

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