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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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8739 スパークス・グループ

東証P
1,427円
前日比
+53
+3.86%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
1.80 27.19
時価総額 598億円
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デリバティブを奏でる男たち【77】 英老舗の上場投信運用会社AVI(前編)


 前回は、自称「エンゲージメント(建設的な目的を持った対話を行う)株主」として、東京株式市場での動きが目立っている香港を拠点とするオアシス・マネジメントを取り上げました。

 オアシスは、前回に紹介した案件以外にもいくつかの日本株を手掛けています。例えば、2024年3月に上場廃止となったいすゞ <7202> 子会社の部品メーカーIJTTの株式を、上場廃止前に17%以上も買い集めました。IJTTはスパークス・グループ <8739> 傘下のファンドが実施するTOB(株式公開買い付け)の成立によって完全子会社となることが決まります。こうしたケースの場合は、買い集められなかった株式に対して、TOBの買付者がTOB価格にて強制的に買い取るスクイーズアウトが考えられます。ただし、その買い取り価格に対してTOBに応じなかった株主は異議申し立てが可能です。2023年3月現在で1株純資産額が1700円以上あり、それに対しTOB価格が850円であったことから、今後の動向が注目されます。

▼セス・フィッシャーのオアシス(前編)―デリバティブを奏でる男たち【76】―
https://fu.minkabu.jp/column/2292
▼セス・フィッシャーのオアシス(後編)―デリバティブを奏でる男たち【76】―
https://fu.minkabu.jp/column/2299

 そのオアシスが手掛けている案件のひとつとして、フジテック <6406>を前回に紹介しました。今回は同様にフジテックに対してアクティビスト・キャンペーンを展開している英国の老舗上場投信運用会社、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)を取り上げます。

 フジテックに対するオアシスの関与については前回に触れた通りですが、AVIもフジテックに対して「AVI、フジテックの社外取締役に大きな懸念 株主の利益のために最善の行動をとっているかどうか疑問」と題するリリースを2022年6月に公表します。そして、フジテックが「東京証券取引所、政府、金融庁によるコーポレート・ガバナンス強化の取り組みに逆行しています」と指摘したのです。

◆135年の歴史

 AVIが運営しているAVIグローバル・トラストは、英国の株価指数FTSE250に採用されている上場投資信託です。元々はトランスヴァール・モーゲージ・ローン・アンド・ファイナンス・カンパニーとして1889年に英国で設立された、南アフリカにおける不動産投資と住宅ローンの会社でした。同社の初代会長であるウィリアム・トンプソンは、トランスヴァール・ランズ・カンパニーという1760年創業のファミリー企業でお茶と商品の仲介業を営んでいました。トランスヴァールは現在、南アフリカ共和国の一部になっていますが、1852年に建国の独立した共和国として1902年まで存在していました。そのトランスヴァールで1886年に金の鉱脈が発見され、ゴールド・ラッシュが始まります。このゴールド・ラッシュにあやかる投資会社としてトランスヴァール・モーゲージが設立されました。しかし、設立の2年後に「女王陛下の銀行」と謳われた英国王室御用達の由緒ある金融機関、ベアリングスが、投資先のアルゼンチンで革命が起きたことにより危機的な状況に追い込まれます。このときの社会的な影響は、1995年に起きた同社の破綻など比べ物にならないほど大きかったといわれています。1995年のベアリングスの破綻につきましては以下をご参照ください。

▼1995年 ベアリングス(前編)―デリバティブ投資手法の進化―破壊と創造の歴史【4】
https://fu.minkabu.jp/column/648

 この影響に加え、当時はアフリカ全土で牛の伝染病が大流行したほか、トランスヴァールでは第2次ボーア戦争(この戦争でトランスヴァール共和国は英国に敗北し、オレンジ自由国と併合されて南アフリカ連邦となります。)が起こり、トランスヴァール・モーゲージも多額の評価損を抱えるといった厳しい状況になりました。何とか破綻せずに済んだものの、投資地域を限定するリスクを解消するため、1906年には社名をブリティッシュ・エンパイア・ランド・モーゲージ・アンド・ローン・カンパニーに変更し、トランスヴァールだけでなく、全世界の英国植民地へ投資を行えるようにします。

 第1次世界大戦を経て、1924年には投資先でダイヤモンドが発見されて一時的に潤うものの、ブリティッシュ・エンパイアは1929年の世界恐慌に巻き込まれて再び厳しい状況に追い込まれました。1936年にブリティッシュ・エンパイアは、別の投資会社であるウィンザー・トラストが保有していた3万ポンドの投資ポートフォリオと、10万ポンド相当の自社株式などと交換し、事実上ほぼ底値で買収されます。

◆次々と変わる親会社

 第2次世界大戦以降、同社は安定的な拡大期に入りますが、株式や債券も投資対象にするために、1964年に社名をブリティッシュ・エンパイア・セキュリティーズ・アンド・ゼネラル・トラストに変更しました。1980年代にカナダのローレンシャン・グループ(1993年にデジャルダン・グループと合併)傘下だったインペリアル生命保険(現在のデジャルダン・ファイナンシャル・セキュリティ)が同社株を取得し、1984年に同社は資産運用をインペリアルに委託します。

 このときインペリアルで投資マネージャーをしていたジョン・ウォルトンが、割安に放置されていたブリティッシュ・エンパイアを見つけて2割以上も買い占めた経緯から、彼がブリティッシュ・エンパイアの運用責任者となりました。本質的価値が高く、それが広く市場に認識されていない可能性のある資産を保有する、という彼の投資戦略は、現在も同社の主要戦略になっています。

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◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):
証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。



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