はてな Research Memo(4):2024年7月期業績は期初計画を据え置く。エンジニアの増強が順調に進む
■今後の見通し
1. 2024年7月期の業績見通し
はてな<3930>の2024年7月期の業績見通しは、売上高が前期比9.6%増の3,452百万円、営業利益が同72.3%減の48百万円、経常利益が同73.6%減の48百万円、当期純利益が同66.7%減の33百万円と期初計画を据え置いた。売上高はコンテンツプラットフォームサービスの減収が続くものの、テクノロジーソリューションサービスの増収でカバーする見通しだ。利益面では、成長基盤の構築に向けた積極的な採用継続による人件費の増加や、DC利用料の増加が主な減益要因となるが、第2四半期までは概ね計画通りに進捗しており、会社計画は達成可能な水準と弊社では見ている。
(1) サービス別売上見通し
a) テクノロジーソリューションサービス
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比15.7%増の2,350百万円と2ケタ成長が続く見通し。このうち「Mackerel」については前期比微増を見込んでいたものの、既存顧客の売上が減少したことや2024年後半には「次世代Mackerelアーキテクチャー」の正式版をリリースする予定となっていることもあり、通期でも微減収となる可能性がある。一方で、受託サービスは「GigaViewer」を中心に好調を維持する見通しだ。大型案件として開発を進めてきた集英社の「少年ジャンプ+※1」向け「GigaViewer for Apps」の提供を2024年3月29日付で開始したことを発表しており、今後レベニューシェア型サービスの大幅な売上貢献が期待されるほか、既存導入メディアでの運用料やレベニューシェア型サービスの伸長が見込まれる。また、2024年3月13日付でリリースしたKADOKAWA<9468>との共同開発サービスである「カクヨムネクスト※2」についてもレベニューシェア拡大に向けた読者数拡大施策などに取り組みながら収益貢献を目指す。
※1 「少年ジャンプ+」は集英社の「少年ジャンプ+編集部」が運営するマンガサービスで、ブラウザ版とアプリ版を展開しており、アプリ版の累計ダウンロード数は2,700万を超える。集英社向けには「少年ジャンプ+」ブラウザ版、「となりのヤングジャンプ」ブラウザ版に続く、3件目の導入実績となる。
※2 無料でWeb小説を読める「カクヨム」(月間利用者数約570万ユーザー)のサブスクリプション型サービス版。KADOKAWAを代表する人気レーベルやカクヨム人気作家の書籍化前の最新作を有料で読める(月額980円)。
b) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前期比3.1%増の719百万円と若干ながら増収を見込む。上期は微減収となったものの、下期はオンラインセミナーを通じたリード獲得による新規顧客の獲得、並びに広告運用や動画を含めたコンテンツ制作などのアップセルに注力することで増収を目指す。運用件数は前期末比12件増加の154件を見込んでいたが、新規獲得ペースが鈍いことから計画をやや下回る可能性がある。
c) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比9.3%減の382百万円と減収傾向が続く見通しだ。インターネット広告市場のトレンドを踏まえ、アドネットワーク広告の単価下落が下期も続くことを想定し、広告売上の減少を見込んでいる。今後も有料記事販売サービス機能の拡充や生成AI技術を活用したサポート機能を充実させることで、「はてなブログ」の書き手を増やしていくことで、広告収入の落ち込みをカバーする考えだ。
(2) 事業費用計画
事業費用は前期比14.3%増の3,404百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同16.3%増の1,844百万円、DC利用料で同18.6%増の713百万円、その他費用で同7.0%増の845百万円を見込んでいる。人材投資についてはエンジニアを中心に積極採用を継続し、前期末比で19名増の212名を予定している。一方、DC利用料は「GigaViewer」の導入件数拡大や為替の円安影響が増加要因となる。ただ、通期計画に対する第2四半期までの進捗率は、人件費が46.1%、DC利用料が47.5%とやや低くなっており、保守的な計画になっていると見られる。なお、DC利用料については為替の円安進行による負担が重くなってきていることから、今後「GigaViewer」や「Mackerel」等のBtoBサービスにおいて、一部価格転嫁していくことを検討しているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《EY》
提供:フィスコ