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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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8914 エリアリンク

東証S
2,127円
前日比
+61
+2.95%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
17.5 2.07 2.02 30.23
時価総額 551億円
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エリアリンク Research Memo(8):ストレージ運用を柱に、利益成長を重視した中期経営計画を推進(2)


■成長戦略

3. 重点施策
ストレージ市場の成長性や課題を踏まえて、エリアリンク<8914>は(1) 出店戦略、(2) 差別化戦略、(3) 海外戦略、(4) 人材育成を推進する。

(1) 出店戦略
同社は、早期に収益化できる小型物件を中心に出店する戦略を掲げている。同業他社は都心のみに立地し、鉄筋・鉄骨造りの100室以上の大型物件、有人運営が中心であり、出店当初数年は赤字となる場合が多い。これに対して同社は、全国(都心・地方)に立地し、木造・コンテナ建築の30~40室の小型物件、無人運営を中心とし、出店初年度から(半年弱で)黒字化が可能だ。例えるなら、同業他社は大型スーパーであるのに対し、同社はコンビニエンスストアと言える。出店計画について具体的には、従来からの主力である屋外型トランクルーム(コンテナ型)の出店拡大に加え、都市部(東京23区)を中心に屋内型トランクルーム(ビルイン型)を、郊外にはコンテナ型を中心に、住宅地にはストレージミニを中心に、それぞれの地域のニーズに合わせた商品を選択し出店を拡大する。

(2) 差別化戦略
a) 顧客情報のデータ化と蓄積
同社では、過去の解約分も含めて数十万件のデータを蓄積している。シンクタンクと提携して、契約、解約、キャンペーン、賃料設定、地域データ等の様々な視点から分析を実施し、各エリアに適した室数、タイプ、サイズ、価格で商品を提供する。これらの綿密なデータの裏付けによって、全国で高精度での新規出店を実現している。特に2021年以降に成果が明確に現れており、新規・既存共に高稼働を実現している。

これまでに集積したデータは、他社を圧倒的に上回る規模に達している。特に、日本全国の契約データを有するのは同社のみで、大きな強みである。今後も出店するに伴いデータが蓄積され精度も向上することから、顧客情報のデータ化と蓄積を推進し、これを活用して出店を加速する計画だ。2024年2月には、トランクルームの検索サイトを運営する(株)LIFULL SPACEを子会社化したが、これはLIFULL SPACEが蓄積したノウハウを同社が保有するデータに加えて活用することで、今後新規に出店するトランクルームの精度向上を図るという、重点戦略に沿った動きであると考えられる。

b) 顧客満足度向上の追求
サービス開発・現場改善をたゆまず実施することで、顧客満足度向上を追求する。具体的なサービス開発事例として、運搬サービス「ハロー宅配便」は自宅からトランクルームまでのすべてに対応しており、顧客はトランクルームにスムーズに収納できる。また、ラックを活用することで収納容量が増え、整理整頓が容易になることから、ラック付部屋の稼働が好調であることを踏まえ、ラック販売・組立サービスを東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・愛知で開始した。交通系ICカードのセキュリティ物件では、手持ちの交通系ICカードをトランクルームの鍵にすることで、カードキーの発行や管理の煩わしさを低減させた。複数名利用時のカードキーの追加発行は不要で、スマートフォンアプリでの開錠も可能だ。

さらに、整理収納アドバイザー派遣(オプションサービス)では、ライフスタイルや家族構成、性格を分析し、顧客にあった整理収納方法を提案する。また、Webでの契約申込とクレジットカードによる決済にも対応している。今後は、デジタル活用サービスを拡充し、さらに便利に利用してもらえるよう、AIツールの導入も検討している。

c) 新デザインのコンテナの導入
同社は、新しいデザインのコンテナを導入しており、今後10年ですべての物件を新デザインへ変更する予定だ。旧デザインは認知度を高めるために目立つことを優先していたが、新デザインはグレーとオレンジを基調に落ち着きと清潔感があり、周囲の住宅と調和する外観となっている。なお、ストレージミニでも2022年9月オープン物件から新デザインを導入している。シックで高級感のあるカラーリングで、内装も合わせて全体をコーディネートしている。

(3) 海外戦略
欧米・豪州などストレージ先進国の物件を購入し、現地の協会に入会することで海外の事情に精通する方針だ。現在は米国テキサス州と、欧州ドイツで物件を保有している。海外のストレージ事情を学び、日本にノウハウを取り入れてマーケティング戦略やサービス向上を図ることが主目的であるが、将来はストレージミニを世界展開することも考えているようだ。

(4) 人材育成
同社は人材育成にも注力している。整理収納のプロ集団化を目指し、多くの社員が整理収納アドバイザー2級を取得しているほか、毎年「収納コンテスト」を開催し、より便利で使いやすいサービスの提案につなげている。また、同社は10万室を突破した物件を80名の正社員で運営する「少人数経営」を実現しているが、「エリアリンクマスター」制度等の会社独自の仕組みで社員を育成している。このほかにも、会長の経験をまとめた10項目にわたる「エリアリンクメソッド」の活用により人材育成を推進することで、事業の効率化・成長を実現している。

このように、中期経営計画では非常に意欲的な経営目標を掲げているが、国内のストレージ市場は成長余地が見込まれることから、重点施策を推進することで十分に実現可能であると弊社では見ている。なお、同社は業界のリーディングカンパニーとして、利益追求と同時にESG経営も積極的に推進していることにも注目したい。具体的には、「環境への配慮」としては、ストレージの利用でモノを大切にする快適で豊かな社会の実現、「コンテナ・建物100年活用プロジェクト」の推進、オフィス内の紙の廃棄物削減(ペーパーレス化)などを実施する。「社会貢献」では、人材育成制度(エリアリンクメソッドの活用によるパーヘッド利益向上)、多様な働き方の支援、災害時のストレージ活用などを実施する。「ガバナンス」では、6名中2名の独立社外取締役及び4名の社外監査役の選任、コンプライアンスやリスク管理体制整備、配当性向30%を目標とした安定した株主還元などを実施する。近年、機関投資家を中心にESGに配慮した企業に投資する傾向が強まっていることからも、今後の取り組みに期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《AS》

 提供:フィスコ

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