巴川紙 Research Memo(4):2024年3月期上期連結業績はトナー事業等が大幅減収も利益は上振れ着地
■業績動向
1. 2024年3月期上期の連結業績概要
巴川製紙所<3878>の2024年3月期上期の連結業績は売上高16,497百万円(期初計画比1,003百万円未達、前年同期比5.9%減)も、営業利益は795百万円(同195百万円超過、同34.0%減)、経常利益996百万円(同396百万円超過、同26.8%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益431百万円(同231百万円超過、同65.6%減)と売上が未達成となるも利益では超過着地となった。売上面ではトナー事業が大幅減収となり、円安ながら在庫調整・価格競争激化などもあって減収となり、利益も原燃料高から大幅悪化した。一方で収益性の高い半導体・ディスプレイ関連事業において光学フィルムで一時的な受注を獲得、前期好調だった半導体実装用テープが計画比上振れとなるも前年同期比で減少したが、全体では増収を確保、利益面では増収効果に加え塗工機稼働率アップで増益に。機能性シート事業は機能性不織布が中国経済減速のため受注が伸び悩むも、新規案件獲得・価格改定などから増収を確保、利益面でもコスト上昇分の価格転嫁・コストダウン効果もあり営業黒字化。セキュリティメディア事業は宣伝印刷物の増加などで増収となった。
営業利益の増減要因分析では、最大売上部門であるトナー事業の減収影響、また材料高、研究開発費増(前年同期比344百万円増の659百万円)などを価格転嫁や為替の円安効果などで補うも、補いきれずに減益となったが、光学フィルムの増額などもあり、会社計画に対し上振れした形となった。
2. セグメント別業績
(1) トナー事業
トナー事業は、売上高5,583百万円(前年同期比23.7%減)、営業利益371百万円(同67.8%減)と大幅収益低迷となった。これは2023年3月期第4四半期から続く大手顧客向けを中心とした一部製品の在庫調整による受注減と2024年3月期第2四半期において競合との価格競争が激化した等の影響があったもので、円安で売上が嵩上げとなっても大幅減収、大幅減益となった。特に中国の落ち込みが大きく売上高1,602百万円(同32.8%減)、また北米は、2020年9月の北米工場撤退に伴い、米国での販売ルートが変更したことにより296百万円(同59.7%減)と低迷するなど影響があった。
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、売上高3,399百万円(前年同期比15.3%増)、営業利益302百万円(同49.2%増)となった。半導体実装用テープは計画を大きく上回ったものの前上期比で減収となったが、光学フィルムが2024年3月期第2四半期において想定していなかった大型受注の獲得があり、全体で増収を確保した。地域別では国内が1,959百万円(同14.8%増)、中国(香港含む)以外のアジアが1,266百万円(同21.0%増)となっており、光学フィルムは特定ユーザー向けに伸びたと見られ、構成比が2割程度から3割程度に拡大した。利益面では損益分岐点を超えた光学フィルムの増収で利益率が大きく改善、利益は大幅増益となった。
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、売上高5,272百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益56百万円(同185百万円改善し黒字転換)となった。売上面では既存事業が縮小するなかで、機能性不織布が中国経済の減速で受注が伸び悩んだものの、新規案件獲得や価格改定効果で増収を確保した。利益面では製紙事業の大型抄紙機設備停機や、原燃料高によるコスト上昇分の価格改定効果もあり、営業利益で黒字転換を果たした。
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、売上高2,103百万円(前年同期比10.3%増)、営業利益261百万円(同89.4%増)となった。売上面では通帳類等が増加、カード関連などが減少するも、宣伝印刷物の増加で収益拡大となった。
(5) 新規開発事業
新規開発事業は、売上高25百万円(前年同期比10.2%減)、営業損失263百万円(同27百万円悪化)となった。なお同事業の売上は主にiCas関連の試作・テスト販売を進め、量産化の後は各事業の売上高・利益に含まれることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《AS》
提供:フィスコ