冨士ダイス Research Memo(6):業務効率化、成長分野の新製品開発、グローバル展開を推進(1)
■中長期の成長戦略
1. 筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築
冨士ダイス<6167>は2021年6月に中期経営計画(2021-2023年度)としてフェーズ1で2024年3月期に売上高17,000百万円、営業利益1,490百万円を目指すとした。またフェーズ2で2027年3月期に売上高20,000百万円、営業利益2,500百万円を目標として掲げた。この実現に向け、フェーズ1では基本コンセプトとして筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築を行い、フェーズ2では売上高の拡大、収益率の向上により、営業利益率12.5%以上を目指す。
現状までの推移では、2022年3月期、2023年3月期は売上高、営業利益ともに計画を上回って推移した。一方、2024年3月期の売上高は計画を上回るものの、営業利益は当初計画に対し320百万円未達の予想となっている。この要因として、原材料価格や電力料金の想定以上の上昇、設備投資によるコスト増が挙げられる。ただし、2024年3月期下期からの収益回復を前提にフェーズ2の2027年3月期予想は変更せず、今後の生産性向上、業務効率改善などで収益性の向上を図り、2027年3月期予想の達成を目指す。
2. 次世代自動車への対応・拡販
同社の業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、マグネット関連に注力する。
二次電池ケース成形用金型では、円筒型を中心に、角形も手掛け、大手日系リチウムイオン電池メーカー向けに需要が拡大、専用ラインを構築し量産体制を整備している。今後、新工場やライン増設が本格化するなかで、今後も拡大が見込める。
モーターコア用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに売上が拡大している。同市場では国内外に多くの競合が存在している。現在、用途としてはハイブリッド向けが多いが、今後EV向けの急拡大を見据え、新材種VG48を投入した。EVではモーターの高出力化への要望のため積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2~0.3mmからさらなる薄板化が要求されているが、同社では市場動向を見越した新材種の開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメによるダボ積層から接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応するなどの動きがある。また、大口径化なども進み、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。同社が今回開発したVG48は破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、今後メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充することで、ユーザーの選択肢を増加させ、シェア拡大を図る。
マグネットについては、車載用を中心にEVの本格拡大でネオジウム磁石需要の拡大が続く見通しである。同社は粉末成形用金型、さらには海外向けに金型及び金型素材の供給を行っており、EVの拡大とともに需要拡大が見込まれる。全体を通じ、2020年3月期第1四半期の売上実績を100として直近の2024年3月期第1四半期は125の水準にあるが、年率20%以上の成長が見込まれ、EV普及加速とともに2025年3月期以降はさらに売上拡大が加速することが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《SI》
提供:フィスコ